現代の産科医療は、産科医、助産師、新生児科医、麻酔医が協力して行うチーム医療が主体となっています。分娩経過中に何か異常が発生した場合には、チームで協力して適切に医療介入する必要があります。
低リスク妊婦の健診や正常分娩の介助では、助産師の果たす役割が非常に大きく、彼女達の貴重なパワーを地域で有効に活用することが重要だと思います。
産科医の激務を緩和するために、今後、助産師業務を拡大していこうという動きもあります。
****** 信濃毎日新聞、2007年9月28日
妊婦 満足いくお産に 助産師外来で「バースプラン」 (飯田市)
(略)
25年前、飯田下伊那地方では13病院が分娩を扱っていた。しかし、産科医の高齢化や後継者不足で05年には6病院に。現在は同地方最大の総合病院の市立病院と市内の個人医院をあわせて3病院だけとなった。
分娩を休止する病院が相次ぐ中、市立病院の06年の分娩数は前年比で倍の1000件近くに急増。増えた分はこれまで個人医院で扱ってきた、比較的安全な「ローリスク」の分娩だった。
市立病院の河野純事務局長は「市立病院は、これまでハイリスクの分娩が中心で『母子とも無事ならいい』という感覚があった。そのため妊婦が産み方を選び、納得してお産をするための態勢づくりが遅れてきた面がある」と省みる。満足感を求めるローリスクの分娩の扱いが増える中、産婦人科の設備や人員の充実とともに、助産師外来を中核とするソフト面での改革が始まった。
産婦人科病棟の松村さとみ看護師長(44)は「これまで産む姿勢は(あおむけの)仰臥位が100%。だから、それ以外の姿勢は学んだことがなかった」と言う。2年前からフリースタイル分娩について研修を重ね、必要となる介助者のやりくりも研究。現在は半数近くが横向きや四つんばいで分娩に臨むようになった。
「バースプラン」は05年から段階的に導入。裏面には妊婦自身がお産を振り返る「バースレビュー」も加え、不満や帝王切開などの医療介入によりプラン通りに出産できなかった場合の誤解を解消する仕組みも取り入れた。大半の妊婦が「横向きのお産がよかった」「赤ちゃんをすぐ抱けてうれしかった」と評価している。
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初産の検診のため助産師外来を訪れた□□□さん(19)は、36週に入ったのを機に、分娩をやめた個人医院から市立病院に移った。同様に市立病院で出産を経験した母親(45)からは「市立病院は流れ作業だよ」と聞いて不安を感じていた。
しかし、産むスタイルを選べ、助産師や看護師に気軽に声をかけられる雰囲気も気に入り、当初のイメージは消えたという。「横向きがいいな。自分のペースでゆっくりと産みたい」と語った。
助産師の藤綱さんは「お産でいいスタートを切れたという気持ちは、その後のいい育児につながっていく。病院任せではなくお母さん自身が産むという意識を引き出しながら、妊婦も私たちも満足のいくお産をできるようにしたい」と話した。
(信濃毎日新聞、2007年9月28日)