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小児科や麻酔科との連携が不十分な産科では、いざという時に適切な緊急対応ができず、リスクが非常に高いことは確かだ。従って、産科、小児科、麻酔科が緊密に連携して周産期診療を行うことが重要で、しかも、それぞれの科の医師が最低でも5~6人づつは常勤している必要がある。一人の医師だけで、24時間365日、周産期医療のすべてに対応するのは絶対に無理である。
「総合周産期実践医(GPP)」養成コースでは、3年間で、産科、小児科、麻酔科の中途半端な知識・技能を身につけさせて、産科医、小児科医、麻酔科医の不足している地域の病院に一人で勤務させようという意図なのであろうか?
一人医長体制の産婦人科や、小児科医・麻酔科医の勤務していない病院の産婦人科からは、派遣している産婦人科医を撤退させて、できるだけ産科施設は集約化していこうという全国的な時代の流れであるというのに、このGPP養成コースは、完全に時代の流れに逆行した試みではないだろうか?
****** 河北新報、2006年8月15日
全国的に産科医不足が深刻化する中で東北大病院(仙台市青葉区)は、小児科と麻酔科に関する知識や技術も備えた産科医「総合周産期実践医(GPP)」の養成に乗り出す。妊娠から出産、新生児期まで母子の健康をカバー、緊急時にも対応できる専門医として、診療科目の枠を超えた人材の育成を目指す。
研修医が専門技術を身に付ける後期臨床研修(3年)に、GPPのコースを設ける。本年度中に研修プログラムを作り、2007年度から本格始動させる。
大学病院だけでなく、仙台市内の協力病院の産科、麻酔科、新生児集中治療室(NICU)で研修。新生児の蘇生(そせい)や麻酔時の全身管理などに幅広く対処できる技術を習得する。
大規模な病院では「周産期母子センター」を設け、産科医と小児科医、麻酔科医が連携して母親や胎児、新生児の異常に対応する体制を整えているが、東北では仙台赤十字病院など仙台市内に3カ所ある宮城県以外は、各県とも1カ所程度しかないのが実情だ。
センターを設置している病院でも各診療科の医師は慢性的に不足気味。都市部を除く地方では産科医が1人の病院も多く、異常分娩(ぶんべん)など緊急時の対応が課題となっている。
東北大医学部の岡村州博教授(周産期医学)は「医師が足りない地方で一刻を争うような事態になったときに応急処置ができ、必要に応じて他の病院へ搬送する判断力を持った医師を育てたい。中堅医師の応募も受け入れたい」と話している。
******* (河北新報) - 8月15日7時2分更新