ある産婦人科医のひとりごと

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産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足

2006年08月19日 | 地域周産期医療

産科施設の数を、出産適齢期の女性の人口比で比べてみると、大都市圏の方が地方よりも少なくなってしまうという調査結果の報道です。

最近、地方での『お産難民』が増加し、地方では出産場所を確保するのが非常に大変になってきたという報道が多いです。しかし、実は、大都市圏でも、出産適齢期の女性の人口比でみれば、むしろ、地方よりも産科施設の数は不足しているとのことですから、大都市圏であっても産科施設数の不足の状況は相当に深刻になってきているようです。

もしかしたら、地方の『お産難民』の出産場所の受け皿として、大都市圏の病院もあまり当てにはできなくなってきているのかもしれません。

****** 読売新聞、2006年8月18日

産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足

 出産適齢期(20~39歳)の女性が出産できる病院・診療所の数(人口1万人当たり)は、埼玉県や東京都など大都市圏ほど少ないことが、日本産婦人科医会の調査で明らかになった。

 これまで地方の産科医不足が叫ばれてきたが、適齢期の女性が多い大都市圏も深刻な状況にあると言えそうだ。

 調査は昨年12月から今年2月にかけて、産婦人科のある全国の医療機関6363施設を対象に実施。5861施設(回答率92・1%)から回答を得た。

 その結果、実際に出産を取り扱っている医療機関は、2905施設(病院が1247施設、診療所1658施設)に限られていた。出産適齢期の女性1万人当たりに換算した全国平均は、1・69施設だった。

 都道府県別に見ると、最も少なかったのは、埼玉県で0・98施設。東京都0・99施設、神奈川県1・14施設、大阪府1・25施設、奈良県1・31施設などと首都圏や近畿圏の都府県が続き、全国平均を大きく下回った。

 一方、最も多かったのは長崎県の3・48施設。これに島根県3・41施設、佐賀県3・24施設、山形県3・21施設と続いた。適齢女性の人口で比べると、地方の方が出産できる医療機関数は多かった。

 さいたま市のある区では、産科施設が最近13年間で3分の1に減った。同医会によると、近年産科施設の閉鎖が目立つ大都市では、医師1人が診察する妊婦の数が増え、多くの医師が過労状態になっているという。

 佐藤仁(まさし)常務理事(医療対策担当)は「大都市圏の方が出産環境は深刻であることがうかがえる。ただ、地方でも、産科のある病院は県庁所在地に集中しており、産科不足は全国的な問題だ」と話している。

(読売新聞、2006年8月18日)

****** 参考:

衆議院厚生労働委員会 奥田美加先生発言

読売新聞: “お産難民”深刻に

神奈川県の産科医不足の状況

迫る!お産難民時代 県内約五千人と推計