ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

卵巣癌のFIGO臨床進行期分類(1988年)

2006年07月08日 | 婦人科腫瘍

FIGO (国際産科婦人科連合、International Federation of Gynecology and Obsterics)

進行期の決定は臨床的検査ならびに/あるいは、外科的検索によらねばならない。進行期決定にあっては組織診を、また体腔滲出液については細胞学的診断を考慮すべきである。骨盤外の疑わしい箇所については生検して検索することが望ましい。

******

Ⅰ期:卵巣内限局発育

Ⅰa:腫瘍が一側の卵巣に限局し、癌性腹水がなく、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
Ⅰb:腫瘍が両側の卵巣に限局し、癌性腹水がなく、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
Ⅰc:腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。

【注】 腫瘍表面の擦過細胞診にて腫瘍細胞陽性の場合はⅠcとする。

Ⅱ期:腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤内への進展を認めるもの

Ⅱa:進展ならびに/あるいは転移が、子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの。
Ⅱb:他の骨盤内臓器に進展するもの。
Ⅱc:腫瘍発育がⅡaまたはⅡbで、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。

【注1】 ⅠcおよびⅡc症例において予後因子としての関連を評価するために、下記のごとく分類・表記することが望ましい。
 Ⅰc(a):自然被膜破綻
 Ⅰc(b):手術操作による被膜破綻
 Ⅰc(1):腹腔洗浄液細胞診陽性
 Ⅰc(2):腹水細胞診陽性
  Ⅱcも同様とする。

【注2】 他臓器への進展、転移などは組織学的に検索されることが望ましい。

Ⅲ期:腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜、または鼠径部のリンパ節転移を認めるもの
 
また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められたものもⅢ期とする。

Ⅲa:リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
Ⅲb:リンパ節転移陰性で、組織学的に確認された直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの。
Ⅲc:直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの。

【注1】 腹腔内病変の大きさは最大のものの径で示す。すなわち、2cm以下のものが多数認められてもⅢbとする。

【注2】 リンパ節郭清が行われなかった場合、触診その他できうるかぎりの検索で知りえた範囲で転移の有無を判断し進行期を決定する。

Ⅳ期:腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、遠隔転移を伴うもの
 胸水の存在によりⅣ期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。また肝実質への転移はⅣ期とする。

【注】 肝実質転移は組織学的(細胞学的)に証明されることが望ましいが、画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。

参考文献: 卵巣腫瘍取り扱い規約(第2部)改訂第2版、日本産科婦人科学会、1997年刊

****** EXERCISE
(産婦人科研修の必修知識2004より)

Q 卵巣癌のFIGO臨床期分類で正しいものはどれか
a) 子宮のみへの浸潤を認めた:Ⅱb期
b) 腫瘍は一側卵巣に限局していたが、術中、卵巣腫瘍が破綻した:Ⅰa期
c) S状結腸浸潤を認め、腹水細胞診が陽性:Ⅱc期
d) 脾実質への転移を認めた:Ⅳ期
e) 肝実質への転移を認めた:Ⅳ期

---------------

解答:e

a) Ⅱa期:進展ならびに/あるいは転移が、子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの。

b) Ⅰc(b)期:手術操作による被膜破綻

c) d) Ⅲ期:腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜、または鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められたものもⅢ期とする。

e) 肝実質への転移はⅣ期とする。