ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

兵庫県の産科医不足の状況

2006年07月07日 | 地域周産期医療

日本全国各地の地域産科医療の厳しい状況について連日のように全国紙や地方紙で報道されています(北海道、東北地域、神奈川県、山梨県、長野県、北陸地域、九州・沖縄地域、など)。

兵庫県の産科医療の厳しい状況についても、最近しばしば報道されています。

市立加西病院、西宮市立中央病院などの分娩取り扱い中止

加西病院:産婦人科医、来月からゼロに

県内の産科、10年で3割減

****** 神戸新聞、2006年7月4日

産科空白地帯 県内に12市町

00064729  兵庫県内の十二市町が、実際に出産できる病院・診療所がない空白地帯となっていることが三日、神戸新聞社の調べで分かった。うち四市町は市町立病院での再開や開設を検討するが、医師不足のため困難な状況だ。大半の市町が小児救急の体制維持、整備などの課題を抱えており、安心して子どもを産み育てるための基盤が揺らいでいる。

 県内の全四十一市町に、出産できる病院・診療所の有無▽産科充実の対策▽産科や小児救急の不足-など子どもを取り巻く医療の現状や課題を尋ねた。

 それによると、出産施設の空白地は相生、たつの、加西、朝来、淡路、加東市、猪名川、播磨、市川、佐用、香美、新温泉町。市町立病院での再開を目指すのは、加西、加東市と香美町で、たつの市は開設を検討している。

 加西市立加西病院は、医師二人がほかの病院に移ったため、今年六月から分(ぶん)娩(べん)の取り扱いを休止した。存続を求める約二万人分の署名が出され、病院側は神戸大などに医師派遣を依頼するなどしたが、確保できないまま。同市の出生数は年間四百人以上あり、不安の声が上がる。

 香美町立の公立香住総合病院も、二〇〇五年三月で分娩を休止。町民は近隣自治体で出産せざるを得ないが、同町は「病院まで時間がかかり、妊婦や家族は心配を抱える。雪が積もればさらに負担が大きい」と話す。

 たつの市は、合併に伴い誕生した市立御津病院を一一年に建て替える計画。産科開設の方向で検討するが、医師確保が難題という。

 ただ、地域によって事情は異なり、空白地帯でも、播磨町は、町域が狭く、近隣市に病院や診療所があるため、問題は生じていないという。

 子どもを取り巻く医療では、全体の七割にあたる三十一市町が、産科・小児科の医師不足、夜間や休日の小児救急体制の整備・維持を課題に挙げた。

 医師不足は全国的な課題で、都市部でも深刻。「小児科医の減少や新人医師が小児科を敬遠するため、二十四時間の救急体制の維持が難しくなっている」(姫路市)「休日夜間急病診療所の小児科が近い将来維持できない可能性が高い」(尼崎市)などと答えた。

****** 神戸新聞、2006年7月4日

妊婦に負担、不安

 実際に出産できる病院や診療所がない空白地帯が、兵庫県内で急速に広がり、空白となった市町では深刻な問題になっている。「妊婦の体力的、精神的負担が大きい」「出費もかさむ」など、市民から不安を訴える声が相次ぐ。空白一歩手前の三木市では、産婦人科医院誘致のため上限五千万円の助成を決め、医師探しに奔走している。

 市立加西病院が分娩(ぶんべん)の取り扱いを今年六月から休止しため、空白地帯となった加西市。長女を同病院で出産した市内の主婦(31)は「夜中に何かあってもすぐ行けるので安心だった。市外での出産となると、二人目以降の妊娠をちゅうちょする」と不安を語る。産婦人科の存続を求める署名を集めた市連合婦人会の板井ちさ代会長は「市外に通うのは、妊婦の体力的、精神的な負担が大きく、支える側も大変。早く解決するよう市や病院に働き掛ける」と話す。

 淡路市の妊婦は、海を隔てた明石市か、隣接の洲本市で出産せざるをえない。三十代の女性は長女(1つ)の出産時、妊婦検診のため明石市内に高速船で通い、出産した。洲本市内の病院へは、五十分車を運転するか、一時間かけて路線バスを乗り継ぐか。現在、第二子を妊娠中で、今回も明石へ通う。「船は欠航や揺れの恐れがある。いざというときの不安も。出産以外での労力、出費が大きい。もっと近くに病院がほしい」と訴える。

 一方三木市では、市民病院が二〇〇五年七月から分娩の取り扱いを止めた。出産可能な産科は九床の有床診療所一カ所だけになり、神戸市や小野市で出産する人が多いという。五千万円は、建物、医療機器の購入などに対する助成。薮本吉秀市長自ら大学や民間病院を訪ね、誘致を目指す。