ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

病院の産科における助産師の役割

2006年07月02日 | 地域周産期医療

病院産科において助産師の役割は非常に重要であり、今後、助産師はますます活躍の場が広がってゆくと思います。

病院産科における助産師の数が足りない場合は、本来、助産師のやるべき仕事(正常分娩の助産業務)まで産科医がやらなければならなくなってしまって、産科医の負担がますます増えてしまいます。

ですから、病院の分娩件数にみあった助産師数を確保する必要があります。分娩件数が倍に増えれば助産師数も倍に増やす必要があります。行政側の誘導で産科施設を集約する場合は、産科医、小児科医などの集約と同時に、助産師も同じ施設に集約しなければならないことを必ず考慮していただきたいと思います。産休や結婚退職、定年退職などによる自然減も当然ありますから、毎年ちゃんと新規に採用し続けなければなりません。

病院の産科部門が閉鎖されて、産科以外の部署で働いている助産師は大勢います。また、今は専業主婦だが子育ても一段落してまた助産師として働きたいという意欲のある有資格者も大勢います。そういう地域内に埋もれた経験豊富な有資格者達を、うまく病院の産科業務に復帰させることも行政の大事な仕事だと思います。

地域内で助産師を養成し、助産師の数をしっかりと確保し続けるシステムを確立することも非常に重要だと思います。

最近、産科医不足の対策として、病院の中に産科とは別組織として院内助産院を創設しようとする動きもありますが、いくら病院内に院内助産院という組織ができても、分娩経過中の異常はいつ発生するか全くわかりませんから、結局、その病院の産科医は24時間体制で病院に待機して緊急に対応しなければなりません。また、生まれた児に異常があれば新生児科医に至急診てもらう必要があります。緊急帝王切開の場合や、分娩時大出血などでは、麻酔科医の助けも必要です。結局、分娩件数に応じた医師達の本来の仕事(異常への対応)は全く同じですから、院内助産院を病院内に創設したからと言っても、医師のやるべき仕事の量は従来と同じです。要するに、院内助産院が院内にあってもなくても、(異常時にはその病院の医師が呼ばれるのであれば)その病院の産科で必要とされる常勤医師数や医師の負担にはそう大きな変わりがないと思われます。