紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ズートが贈る、ワンホーン・ライブ・アルバム…ズート・シムズ・イン・パリ

2008-01-15 22:57:01 | ジャズ・テナー・サックス
今日は白人系のワンホーンアルバムで行きましょう。
それも西海岸的なサウンドが聴きたいなぁ~って事で、「ズート・シムズ」のライブ盤で行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ズート・シムズ・イン・パリ

パーソネル…リーダー;ズート・シムズ(ts)
      アンリ・ルノー(p)
      ボブ・ホイットロック(b)
      ジャン・ルイヴィアール(ds)

曲目…1.ズートのブルース、2.スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト、3.ワンス・イン・ア・ホワイル、4.ジーズ・フーリッシュ・シングス、5.オン・ジ・アラモ、6.トゥー・クロース・フォー・コンフォート、7.ア・フラット・ブルース、8.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド、9.サヴォイでストンプ

1961年 ライブ録音

原盤…Liberty 15013  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5408

演奏について…オープニング曲「ズートのブルース」…ブルースだが、いかにも白人が奏でるらしい曲&演奏で、恨み、辛み、悲しみ等とは全く無縁のライトな感覚のブルースで、終始演奏される。
「ズート」はアドリブ・パートにも冴えを見せて、バック3人との絡み合いも好調のgoodなトラックです。

4曲目「ジーズ・フーリッシュ~」…「ズート」演奏の真骨頂、一寸辛口の大人のテナー・サウンドが煌く、ストレートなバラッド演奏です。
「ルノー」のちょっぴりセンチメンタルなピアノ・アドリブも良いし、ブラッシュ・ワークで脇役、アシストに徹する「ルイヴィアール」の演奏もかなり良いんですぅ~。
この中庸の美学…流石「ズート」だ!

2曲目「スプリング・キャン~」…短曲ですが、この演奏も、大人が演るバラード演奏で、非常にストレートな音色と、節回しで「ズート」が吹き切る。
奇を衒わず、シャウトしすぎも無く、だが余裕タップリで演っている訳では無い。
一本ピシッと芯は通っていて、優しき男が背中で語るテナー演奏です。

8曲目「ユー・ゴー・トゥ~」…ライブも終盤になってか?幾分、余裕を持った「ズート」がスロー・バラッドを渾身の演奏で、テナーで吹き通します。
「ズート」にピッタリ伴奏で合わせる「ルノー」とのコンビネーションもバッチリ決まって、取分け中盤で「ルノー」が弾くアドリブの美しさ…とても感傷的で…そしてきれいの一言です。
一寸、乙女チックな感じも否めませんが、アルバム全曲中、一番しおらしくて、可憐で…魅力タップリな1トラックだと思います。
私的には、一番のお気に入り演奏です。

9曲目、名曲「サヴォイでストンプ」…レスター派の「ズート」がお得意なアドリブ重視の展開で、バックの3人もタイトに、集中して「ズート」をアシストする。
何気に目立たないが、実直にぶんぶんベースを生真面目に弾く「ホイットロック」が良い味を出しています。
「ズート」は、まじで好アドリブ・フレーズを次々と繰り出して、ラストナンバーをバッチリ決めて、やってくれますよ。

5曲目「オン・ジ・アラモ」…こう言った、ミドル・アップ・テンポで、寛ぎの演奏を奏でられるのも、バラッド以外の「ズート」のもう一つの魅力部分です。
かと言って演奏自体は、遊び心が満載と言う訳ではないし、逆に生真面目すぎる事も無い。
しかし、その中庸さが、カッコよくて、どことなく味わいが有るんです。
「ズート」は、「コルトレーン」や「ロリンズ」の様な大御所、スーパー・スターでは、決して無いかもしれないが、彼等には無い、普通っぽく、そしてチョビッとニヒルな所が最大のセールス・ポイントなのでしょう。

3曲目「ワンス・イン~」では、「ズート」のブロウに若干余裕が見て取れます。
影の如く、張り付く様に「ズート」に合わせるドラムス、「ルイヴェール」のブラッシュ・ワークが冴え渡ります。
シングル・トーンで軽やかに、そして可憐にアドリブを演る「ルノー」と、ベース職人に従事する「ホイットロック」の真面目な演奏も○ですよ!

6曲目「トゥ・クロース~」も、5曲目同様、早めの4ビートで「ズート」が余裕綽々に決めます。
ペタっと張り付く様にブラシ・ワークに順ずる「ルイヴィアール」と中間で好フレーズのアドリブを演る「ルノー」の仕事も中々良い。

「ズート」が奏でる、ワンホーンのライブでの演奏…渋くてカッコイイです。

久々にラテン系アルバムを…熊本尚美~ナオミ、リオへ行く。

2008-01-14 23:06:01 | ラテン・インストゥルメンタル
皆様、「ショーロ」って言うジャンルの音楽、ご存知ですか?
ブラジルで最古の都市型ポピュラー音楽の事を、「ショーロ」と言うんだそうです。
今日は、日本人で「ショーロ」演奏家として、リオで初録音した、フルート奏者「熊本尚美」の初リーダー・アルバムを紹介しましょう。

その前に「熊本尚美」さんについて簡単なご紹介をしておきましょう。
神戸市生まれ。大阪教育大学、音楽科でフルートを専政後、クラシック畑で活動を始めるが、最もフルートの合う楽曲、ジャンルを模索していた時に、行き着いたのが、クラシック音楽とアフリカのリズムが混血した、ブラジル最古の都市型ポピュラー音楽、すなわち「ショーロ」に出会ったとの事です。
現在は、音楽活動拠点をリオ・デジャネイロに移し、精力的に演奏を行っているとの事です。

アルバムタイトル…ナオミ、リオへ行く

パーソネル…リーダー;熊本尚美(fl、a-fl、picco)
      ナイロール・プロヴェータ(cl)
      エドゥアルド・ネヴェス(ts、fl)
      フイ・アウヴィン(cl)
      ペドロ・アモリン(tenor-g)
      ルシアーナ・ハベーロ(カヴァキーニョ)
      パウロ・アラガォン(g)
      マウリシオ・カヒーリョ(7弦g)
      セルシーニョ・シルヴァ(パンデイロ)
      ジョルジーニョ・ド・パンデイロ(パンデイロ、カイシェータ、他)

曲目…1.ナオミ、リオへ行く、2.私をリオで待っててね、3.トニーニョに捧げるショーロ、4.雨のリオ、5.ドミノ、6.~10.ブラジルの思い出(カドリーリャ)、11.甥っ子達、12.甦生(大震災から立ち直りつつある我が町、神戸に捧ぐ)、13.おめでとう、ショヴィ・ショヴァ、14.マリコチーニャ・シェガンド、15.にんじんケーキ(ドナ・ゼリアに捧ぐ)、16.アナ・カロリーナ

2001年6月、2002年5月、リオ・デジャネイロにて録音

原盤…アカリ・レコード AR-13  発売…㈲中南米音楽
CD番号…LAM-11503

演奏・曲について…オープニングのタイトル曲「ナオミ、リオへ行く」は、「マウリシオ・カリーヒョ」が作曲して、「熊本」へプレンゼントした曲との事。
「熊本」のフルートと、「カリーヒョ」の7弦ギター、他の楽器との絶妙の絡みが、寛ぎと癒しの空間を演出する。
とにかく気持ちの良い1曲です。

2曲目「私をリオで待っててね」…「熊本」が初作曲のオリジナル曲。
とても華やかで、軽やかなメロディに、ショーロの魅力が満載。
中盤からテナーの「ネヴァス」と「熊本」のフルートの掛け合いがワンポイントになっていて、良い味を出しています。

3曲目「トニーニョに捧げるショーロ」は、ブラジルのショーロの大御所フルーティストの「アントニオ・カスケイラ」のニック・ネーム。
彼に敬意を表している楽曲らしく、2曲目の後半以上に管楽器をフューチャーした演奏&編曲がなされている。
「ネヴァス」と「熊本」の二人…素晴らしいコラボです。

4曲目「雨のリオ」…これも勿論、「熊本」のオリジナル曲なんですが、一言で言いましょう。このアルバムのベスト・トラックです。
「熊本」の哀愁たっぷりのフルート演奏はもとより、とにかくテノール・ギターで感情豊かに入魂の演奏、アドリブを奏でる「ペドロ・アモリン」が素晴らしい出来栄えです。
「ハベーロ」、「バンデイロ」のリズム・セクションも二人をリスペクトする、バック演奏に従事します。

5曲目「ドミノ」…子犬の名前にちなんで付けられた、曲名&演奏で、いかにも可愛らしい雰囲気が溢れた曲です。

6曲目~10曲目「ブラジルの思い出」…カドリーリャと呼ばれている5つのパートから形成される組曲。
組曲なので当たり前かもしれませんが、起承転結が楽曲に見事にいかされていて、その中でも特に、個人的には8曲目のマイナー・メロディが気に入りました。
物悲しい曲調にも、明るい曲調どちらでもフルートって合うんですねぇ。

11曲目「甥っ子達」…正しく曲名通りのイメージ曲。
子供達が騒ぎながら駆けずり回って(暴れる?)、いたずらっ子風の感じが良く出ています。
ここで「熊本」はピッコロを使用して、より子供達の雰囲気を表現しています。

12曲目「甦生」…ショーロのタイトルとしては、相応しく無いと物議をかもしたらしいのですが、曲は良いですねぇ。
私の大好きなマイナー・チューンで、ここでも「熊本」とギター奏者達とのコラボレーション、フュージョンが、good jobを成し遂げました。
特に「熊本」の静かな悲しみを纏ったフルートにまいります。

13曲目「おめでとう、ショビ・シュヴァ」…まっこと、ジス・イズ・ショーロとも言うべき、ショーロの伝統的・基本的な曲調で、「バンデイロ」がタンボリンで参加している事も見逃せません。
ギター、カヴァキーニョ等のリズムに、ラテンの血が滾ります。

14曲目「マリコーニャ・シェガンド」…「マウリシオ」が(お腹の中にいる)娘のために書いた名曲で、「熊本」の荘厳のフルートと「アラガォン」の静かなギターが、生命の尊さ、神秘さを表現している。
二つの楽器だけのデュオ演奏が、逆に曲の重厚さと、生真面目さをより一層際立たせる役目を果たしている。

15曲目「にんじんケーキ」…遊び心と悪戯な雰囲気を良く表したトラック。
こう言うライトな感覚のラテン曲って、良いよねぇ?

16曲目「アナ・カロリーナ」は、ショーロの老舗グループ、「コンジュント・エポカ・ヂ・オウロ」のリーダー、「ジョルジーニョ・パンデイロ」が、自分のお孫さんに捧げたワルツ曲。
とても、気持ちのこもった優しいフルートの調べを、「熊本」が奏でます。
正しく、好々爺が孫の笑顔を見て、微笑んでいる様が、分り易く表現されていて、ほのぼのさせられる、goodな1曲です。

ボサ・ノヴァ程、洗練されていませんが、フォルクローレよりは、アーバナイズされているショーロ・ミュージックを是非お試しあれ!!

ジャズ・メッセンジャーズをバックに従えて…バーズ・アイ・ヴュー~ドナルド・バード

2008-01-14 08:55:22 | ジャズ・トランペット
以前、「ドナルド・バード」が演奏していた、幻のレーベル、トランジションに吹き込んだ、「ビーコン・ヒル」を紹介した事が有りました。
今日は、「バード」が同じくトランジションに残したデビュー・アルバム(曲によって、「ジョー・ゴードン」との2トランペッツ)を紹介しましょう。

バックのメンバーが「ジャズ・メッセンジャーズ」と言う、豪華且つ貴重なアルバムです。

アルバムタイトル…バーズ・アイ・ヴュー

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ジョー・ゴードン(tp)
      ハンク・モブレー(ts)
      ホレス・シルヴァー(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      アート・ブレイキー(ds)

曲目…1.ダグズ・ブルース、2.エル・シノ、3.エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー、4.ハンクス・チューン、5.ハンクス・アザー・チューン

1955年12月2日録音

原盤…TRANSITION  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5886

演奏について…解説から少し引用すると、スタートの「ダグズ・ブルース」は、12小節のブルースで、「ジョー・ゴードン」が加わったセクステット演奏との事。
ソロの順番ですが、「ワトキンス」の(2コーラス・ウォーキングベース)から始まり→「バード」(9コーラス)、「モブレー」(4コーラス)、「ゴードン」(7コーラス)、そして最後が「シルヴァー」(3コーラス)との事です。
まず、長いソロの「バード」ですが、ちょっぴりファンキーで、エモーショナルも豊かなフレーズ連発で、デヴュー作とは思えない程、堂に入った演奏をしてくれます。
「モブレー」は、とにかく、し、渋い!
渋くてス・テ・キ!!
2トランペッツで、派手になりがちなイメージの演奏・曲を、ブラック・ブルー色の楔(くさび)を打つが如く、燻し銀の役目をしています。
「ゴードン」は「ガレスピー」をアイドルと仰ぐだけに、非常に切れが有って、ブリリアントな音色で、尖ったソロを取ります。
この辺の二人のペッターの音色&フレーズ対決が、一番の聴き所でしょう。
「シルヴァー」の抑え目のソロ(余りファンキーには演っていないんだけど…)も良いですね。
御大「ブレイキー」は、何故か?地味に地味にバックに徹していますが、これも逆に良い味を出しています。
正にトップ・イズ・ベストの1曲でしょうか?

2曲目「エル・シノ」…こいつも少し解説のお力を借りておきましょう。
まず、「モブレー」が抜けた2トランペッツのカルテット演奏であります。
テーマは2管ユニゾンで演りますが、主題の1ブリッジは、まず「ゴードン」が吹きます。
それから、この曲…「ウォーキン」にクリソツと思ったら、一部メロディを引用しているとの事で…。
ここでのソロは、「ゴードン」、「バード」の順番で、代わる代わる取りますが、前述の通り「ゴードン」の音色の方が尖っているので、ちと鋭く、そして乾いたクールさが有るので分り易いと思います。
逆に「バード」の音色は、幾分、ウォーム系で、情感がとても豊かです。
「ブレイキー」「ワトキンス」「シルヴァー」のバックは…バック、リズム・セクションとして申し分無い出来栄えで、二人を強固にサポートしています。
2トランペッツのバトル的な演奏を際立たせる、とても見事な演奏です。
でも、でも「シルヴァー」は勿論の事、「ブレイキー」も1コーラスだけ、一発ソロを演りますよ!ムフフ…。

3曲目「エヴリシング・ハプンズ~」…一言で良いねぇ。
寛ぎ系の4ビートのバラッド演奏で、「ゴードン」が抜けたカルテット演奏なんだけど、序奏からソロと取る「バード」が、エモーション抜群のアドリブ・ソロを吹き切る。
「モブレー」もウォーム系で、訥々とした感じが何とも言えない良い仕事をしますねぇ。
ブラシで静かに演奏を通し抜く「ブレイキー」と、可憐にお洒落に弾く「シルヴァー」も最高です。

4曲目「ハンクス・チューン」は、名前の通り「モブレー」が書いたミドル・テンポのハード・バップ曲。
最初のソロは、当たり前だが「モブレー」から。
前2曲は一寸遠慮がち?で渋すぎたかも?て言うに思ったのか、結構、自我を出したソロを取ります。
※自我って言ってもそこは、朴訥な「モブレー」の事、ビッグ・ネームのサキソフォニストとは全く違って、やっぱり渋いんですけどね。(大笑)
この曲はハード・バップさをモロ出しで、「ワトキンス」のカッコイイソロや「ブレイキー」節全開の御大のソロなんかも繰り出されて、面白い演奏です。

ラスト「ハンクス・アザー・チューン」も勿論「モブレー」の曲です。
ここでの「モブレー」のソロの出来は良いですよ~!
音色は相変わらず渋いものの、アドリブ・フレーズのイマジネーションの豊かさは半端じゃない。
派手じゃないけど、とても良く思索された演奏です。
続く「バード」も、「モブレー」を尊敬して?同感覚(音色は地味に、だけど情感はタップリの)ソロを演ります。
中間では見事な二人の絡み合いが最高の聴き場所で、ハード・バップ・カルテットの醍醐味が堪能出来ます。

いずれにせよ、駄演抜きの好アルバムで、新人「ドナルド・バード」の実力と魅力を堪能できますよ。
とてもお薦めの1枚です。

60年代マクリーンの最後の傑作…デモンズ・ダンス~ジャッキー・マクリーン

2008-01-13 11:05:38 | ジャズ・アルト・サックス
おどろおどろしくサイケなジャケット・デザインに目を奪われて、とても過激な演奏かと思いきや、中身は正統的な2管で、(曲によっては)若干フリーキーな演奏も有りますが、叙情性タップリの「マクリーン」のブロウが冴えている曲も多く、60年代後期、いや、(60年代)最後の「ジャッキー・マクリーン」を代表するアルバムが、これなんですよ。

アルバムタイトル…デモンズ・ダンス

パーソネル…リーダー;ジャッキー・マクリーン(as)
      ウディ・ショウ(tp)
      ラモント・ジョンソン(p)
      スコット・ホルト(b)
      ジャック・デジョネット(ds)

曲目…1.デモンズ・ダンス、2.トーイライド、3.ブー・アンズ・グラインド、4.スイート・ラヴ・オブ・マイン、5.フルーゲ、6.メッセージ・フロム・トレーン

1967年12月22日録音

原盤…BLUE NOTE BST-84345  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-9548

演奏について…表題曲「デモンズ・ダンス」…「マクリーン」と「ショウ」のユニゾン演奏に、「デジョネット」の変幻自在のドラミングが付随して序奏が始まり、その後、「マクリーン」がスケール有るブロウを展開して行く。
「ショウ」は情感たっぷりのアドリブを演り、「ジョンソン」もスケールはやや小さいが、メロディ・フレーズ的には「マッコイ・タイナー」を彷彿させるモード演奏が行けてますね。
しかし、やはりこのアルバム全体を素晴らしい物に仕上げているのは、偏に「デジョネット」のドラムの素晴らしさにつきるだろう。
タイム・キープングとドライビングの素晴らしさは言うまでもないが、リズムを敲いていながら、しっかりとドラム&シンバルを一つの楽器として、歌わせている…
流石としか言いようが無い。

2曲目「カル・マッセイ」作品のバラッド曲「トーイランド」…この演奏は「ショウ」抜きのカルテット演奏なんですが、まず序奏の「マクリーン」の叙情性豊かにアルト・サックスを吹き始める所からが、いきなり、そして最大の聴き所です。
続く「ジョンソン」の透明度抜群の湖の様に、透き通った静かなピアノ・ソロも秀逸で、まっこと美しいカルテット演奏が終始なされます。

3曲目「ブー・アンズ~」では、このアルバム随一の「マクリーン」のアグレッシブなソロ演奏が聴けます。
「ショウ」もブリリアントな音色で、「マクリーン」の向こうを張ったアドリブを演ってくれて、フロント2管のバトル的な演奏がgoodですねぇ。
「ジョンソン」は、この演奏も「デモンズ・ダンス」と同様、ミニ「マッコイ」って感じで、モード演奏の極め付きのソロを弾きます。
「マクリーン」も「コルトレーン」に多大な影響を受けた一人ですが、それに付随して?至高のカルテットのメンバーからも(演奏的)影響を受けたミュージシャンって沢山いる事を改めて感じますね。
終盤、「デジョネット」も華麗なアドリブを一発演ってくれますぜ!

4曲目はこのアルバムの目玉曲「スイート・ラブ・オブ・マイン」。
私、大好きなボサ・ノヴァ・リズムの佳曲なんですが、歌うドラムス演奏で、ボサノヴァ・リズムでも、キッチリ皆を引っ張る「デジョネット」に率いられて、「マクリーン」、「ショウ」の二人とも、情感溢れるアドリブ・フレーズを吹くんです。
ここで面白いのが、「ジョンソン」の演奏で、今まではモード演奏で、クールに決めていたのですが、ここではラテン調と言う事も有ってか、遊びの演奏も演ってくれて、彼の個性が垣間見れるんです。
演奏もバッチリですが、とにかく曲が良いですね。

5曲目「フルーゲ」…アップ・テンポのリズムに乗って、「マクリーン」がかなりフリーキーにシャウトする1曲です。
ここでは「ジョンソン」が、非常に出来の良い、センス抜群のアドリブ・ソロを弾いてくれます。
中間部で、曲を無演奏(無音=タイム・ブレイク)する部分があって、この辺りは結構、実験的な感じがしますね。

ラストの「メッセージ・フロム・トレーン」…「コルトレーン」亡き後の、制作アルバムだったので、この曲を取り上げたんでしょうが、「ジョンソン」以外は、「コルトレーン・カルテット」的な演奏では無いんです。
しかし、各人のソロの出来栄えはかなり良いですよ~!
前述の「ジョンソン」のハイ・センスな演奏はもとより、リーダー「マクリーン」、「ショウ」の2管も聴き応え有りますし、ここでも「デジョネット」の華麗なソロは健在で、ラストを飾るに相応しい演奏です。

奇抜なアルバム・デザインで聴く事(購入する事)を躊躇されている方、…決して怖くは有りませんよ!(笑・笑)

まだまだ大人し目の演奏なんだけど…チャールズ・ミンガス~ジャズ・コンポーザーズ・ワーク・ショップ

2008-01-10 22:53:53 | ジャズ・ベース
今日は、超名作、問題作の「直立猿人」発表前の、「怒れるミンガス」では無い、非常に和声を重要視した、演奏で構成されているアルバムです。

特に、後に「マイルス・デイヴィス」のプロデューサーとして、名を馳せる「テオ・マセロ」がサックス奏者として参加している所も、このアルバムが知的なムードを醸し出す要因となっています。

「ミンガス」のアルバムとしては、非常に理論的で、計算された調和的な演奏ですが、「ミンガス」ミュージックには、実はこう言う知的で繊細な部分が根本に有る事を分って欲しいんです。

アルバムタイトル…ジャズ・コンポーザーズ・ワーク・ショップ

パーソネル…リーダー;チャールズ・ミンガス(b)
      テオ・マセロ(ts、bs)5~8
      ジョージ・バロー(ts、bs)1~4、9
      ジョン・ラ・ポータ(cl、as)1~4、9
      マル・ウォルドロン(p)1~4、9
      ウォーリー・シリロ(p)5~8
      ケニー・クラーク(ds)5~8
      ルディ・ニコルス(ds)1~4、9

曲目…1.パープル・ハート、2.グロゴリアン聖歌、3.ユーロジー・フォー・ルディ・ウィリアムス、4.ティー・フォー・トゥ、5.スモッグ・L・A、6.レベル・セヴン、7.トランシーズン、8.ローズ・ゼラニウム、9.ゲッティング・トゥゲザー

1954年10月31日(1~4、9曲目)、1955年1月30日(5~8曲目)録音

原盤…SAVOY MG-12059  発売…日本コロムビア
CD番号…COCY-9839

演奏について…1曲目「パープル・ハート」…「ミンガス」らしからぬ、西海岸的なサウンドで始まり、「おや!」って思うんです。
「バロー」のバリトン・サックス、「ラ・ポータ」のクラリネットが絡み合う様に柔らかなサウンドを生み出し、「ニコルス」のドラムも前半は知的に、後半は「一発」派手にやってくれるんですが、いずれのメンツも中々の賢者ぶりを発揮しています。
当事者「ミンガス」だけは、怒ってはいませんが、野太いベースで皆をグイグイとドライブして行きます。

2曲目「グレゴリアン聖歌」…このアルバムでも秀逸の聴き物の一つ。
「ミンガス」の畏怖を覚える程の深いベースのボウイングから序奏が始まる。
その後、相変わらず野太いベース音に導かれて、各人がソロを取るんですが、この統率力、編成の妙も真に見事です。
とても静かだが威厳のある一曲です。

3曲目「ユーロジー~」…これも遠目から、(オフマイク的な)録音効果も有ってか、彼方から聞こえてくる「バロー」のバリトン・サックス、「ラ・ポータ」のアルト・サックス(中途で他の楽器に持ち替えも有りますが…)が、ふんわりとした朝霧の様に少し霞んだ、音色でアドリブを演じて、そうだなぁ…朝もやの海上で、ラッパを吹いている様な雰囲気…或いは、夜霧の波止場に佇み、サックスを奏でるニヒルな裕次郎みたいな感じでしょうか?(例えが悪いかな?)
音は少ないながら、コツンコツンとブロック・コードを弾く「マル・ウォルドロン」も良い味を出しています。

4曲目「ティー・フォー・トゥ」…ハーモニー重視の一曲ですが、中間でソロを取る「ミンガス」の重厚感溢れるベース演奏が最高にカッコイイです。
「バロー」のバリトン・サックスと「ラ・ポータ」のクラリネットでのバトル的なハーモニーも良い感じで来てますが、中間でアドリブを演る「マル」が、「マル節」全開で弾く所は、ジャズ・ファンなら思わず眉が下がる事間違いなしです。
「マル」はやっぱり「マル」なんだよね!
全編では白人的なサウンドに対して、黒い「ミンガス」と「マル」の漆黒音色が逆に映えます。

5曲目「スモッグ・LA」…のっけから「シリロ」の華麗なピアノ・ソロが冴え渡る。
「クラーク」の乾いた粘着系?のペタペタ・ブラシも同様に冴えて、それをバックに「マセロ」がサックスを気持ち良く吹きます。

6曲目「レベル・セヴン」…この曲も「シリロ」の小洒落たピアノ演奏と、ミンガスのガッツリベースをバックに「マセロ」がソロを演るんですが、「シリロ」と言うピアニスト…侮れないんですよ。
「レッド・ガーランド」が弾いている様な、良い感じの演奏なんです。
個人的には「マル・ウォルドロン」の漆黒色のピアノ…大、大好きなんですが、この編成で、「ミンガス」が目指すサウンドには、ハッキリ言って「シリロ」の方が合うと思います。

7曲目「トランシーズン」…ここでも「シリロ」…好フレーズ連発の、goodなソロ、アドリブを演るんですよ。
「ミンガス」と「クラーク」のサポートも最高で、ここでのピアノ・トリオでなされる演奏が最も聴き所かも知れません。
この3人で演っているピアノ・トリオ・アルバム…無いのかなぁ?
それぐらい魅惑的な演奏なんですね。
それを分っているのか?流石に「マセロ」…ソロイストで有りながら、サイドメン的にでしゃばらずに吹くんですよ。
この辺り、後の名プロデューサーの片鱗?が伺えます。(大爆笑)

8曲目「ローズ・ゼラニウム」…ここでも主役は「シリロ」です。って言うか、5曲目からこの曲まで、実は「シリロ」をフューチャーしたアルバム作成したらしいです。※今、ライナー・ノーツ読んでる私は何?誰?何処?って感じですか?
生意気にも、普段、よほど知りたい情報以外は、ライナー・ノートをあてにしないしない?性質なのでゴメンナサイ!
「シリロ」…当時は「レニー・トリスターノ」から影響を受けて、かなり有望な作曲家&ピアニストだった(らしい)。
どうりで、「シリロ」の絡んでる演奏&曲目…とても魅力的で、ここでの演奏も時代を先取りして、まるで「ハービー・ハンコック」の様に知的で切れた演奏をしています。

9曲目「ゲッティング・トゥゲザー」…これは「ニコルス」の派出目のドラムに引っ張られて、「ラ・ポータ」の華麗なクラリネットをメイン演奏に、「マセロ」「バロー」の2管が万華鏡の様に絡まる、カラフルな1曲です。
「マセロ」のバリトン、「バロー」のテナー演奏も好フレーズが多く、この煌びやかな演奏も良いですよ!

久しぶりにオケをバックにしたアルバムです…マイルス・デイヴィス~ポーギー&ベス

2008-01-09 23:04:02 | マイルス・デイヴィス
ガーシュインの名作オペラ「ポーギー&ベス」に、帝王「マイルス・デイヴィス」と名アレンジャー「ギル・エヴァンス」&「ヒズ・オーケストラ」がバックとして挑んだ意欲的な名演・名盤がこいつです。

アルバムタイトル…ポーギー&ベス

パーソネル…マイルス・デイヴィス(tp)
      ギル・エヴァンス(arr、cond)
    他 キャノンボール・アダレイ(as)
      ジミー・コブ(ds)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ポール・チェンバース(b)              等

曲目…1.禿鷹の歌、2.ベスよお前は俺のもの、3.ゴーン、4.ゴーン・ゴーン・ゴーン、5.サマー・タイム、6.ベスよ、何処に、7.祈り、8.漁夫と苺と悪魔蟹、9.マイ・マンズ・ゴーン・ナウ、10.ご自由に、11.ほら、蜂蜜売りだよ、12.愛するポーギー、13.ニューヨークへボートが

1958年7月22日、29日、8月4日、18日 NYにて録音

原盤…米コロムビア  発売…SONY Records
CD番号…SRCS-9107

演奏について…正直、今日紹介していて、こう言うと何だけど、非常に中途半端な立ち位置のアルバムである事は否めないんですぅ。
クラシックのオペラを素材としていて、バックはストリング・レスのオーケストラがこなしている。
本来歌手が歌うメロディを「マイルス」が吹いてくれるんだけど、この楽器編成が、吉と出るか?凶と出るか?ちと微妙な感じですね。
クラシックを全く聴かない人、映画音楽なんかが好きな人には、絶対的にお薦めしたいけど…クラシックに精通している人にとっては、かなり物足りない印象も抱くと予測されます。

また、本格的なジャズ好きな人にとっても物足りないかも?って思う部分も多い。
何故なら、ジャズの本質、面白さは、やはりアドリブが多勢を占めるからなんですね。
このアルバムには、アドリブ・パートが少なくて、かなりBGM的な演奏が多くなっているので、この辺りの評価も分かれる部分でしょう。

但し、超A級のBGM、映画音楽として理解できるのなら、是非聴いて欲しい。
「マイルス」と「ギル」の、非常に高尚で知的な音楽芸術のエッセンスが、ギューッと凝縮されて、パンパンに詰っている…この感覚は他のアーティストには、決して真似できない代物なんです。

それでは、各パートの詳細について少し述べましょう。

5曲目「サマー・タイム」…超名曲だが、「マイルス」は非常に原曲に忠実に、ミュート・トランペットでメロディを吹き上げる。
バックのホーン群もとてもデリカシーの有るお上品な演奏です。
リリカルで、「竹久夢二」の女性画のように、繊細でちょっぴりクールな感覚が堪んない魅力です。
とても紳士的にリズムを刻む、「マイルス」親衛隊の「チェンバース」のベースと「コブ」のブラッシュ・ワークが良い仕事をしています。

12曲目「愛するポーギー」では、バックのブラス演奏が、静けさを演出していて、「マイルス」も(音楽的)情景に同化して、非常にクラシカルな雰囲気のBGMを創り出している。
しかし、「マイルス」の音は、いつ聴いてもとても寒色系の音でとにかく知的ですね。

7曲目「祈り」…一言で言うと「マイルス」芸術の極み的な演奏。
「マイルス」のクールなトランペットと、バックのオーケストラが作り出す高尚なアートです。
「マイルス」…帝王はやっぱり何を演っても絵になるし、カッコイイですね。
ここでの「マイルス」の祈りは、音色こそいつも通りだが、音楽の芯は珍しく男性的でマッシブに感じる。

オープニング曲「禿鷹の歌」…一寸エキゾティックな雰囲気の曲調に合わせてホーン・セクションと「マイルス」がクールに決め!の演奏ポーズを取る。
ビッグ・バンド系には不釣合いなぐらい、ニューヨーカーのダンディズムを見事に表現している演奏です。
渋く仕事を演る「チェンバース」と、ホーン群ではチューバを吹く「ビル・バーバー」の名演に思わず拍手!です。

13曲目「ニューヨークへボートが」…極上のミュージカルのラストを飾る様な、誠にゴージャスな雰囲気のブロード・ウェイのショウ・タイムにドンピシャはまるラスト・ナンバー。
「コブ」が、アルバムのエンディングらしく、結構派手にドラムを敲いてくれるのもgoodです。

2曲目「ベスよ~」では、叙情性を豊かに「マイルス」とホーン群が、緩楽章での美演をやります。
とても優しげで、ほのかに温かい…初春の木漏れ日をイメージさせるんです。
うぅーん、聴いていて、とにかく気持ち良い~!!

3曲目「ゴーン」…この演奏の肝は、この曲と4&9曲目だけ参加し、太鼓(ドラム)を敲きに来ている?「フィリー・ジョー」の独壇場的な、超絶ドラム演奏が最高です。
「フィリー・ジョー」は相変わらず、テク&スピリット共に最高ランクの演奏で、強烈なドライブ力をバックにして、「マイルス」も気持ち良くペットを吹き通す。

10曲目「ご自由に」…静けさと、都会的な曲調が見事に同化した、好トラック。
ブルース的に進行する、(ソー・ホワットかブルー・セヴンみたいだ)リズムを従えて、「マイルス」が最高にカッコイイ、ダンディな演奏を演ってくれます。
「マイルス」のブルース…土臭くないアーバナイズの極めのブルースで、この曲では、アドリブも満載です。
これが、ニューヨークのブルースだ!これが東海岸のジャズだ!!
このアルバム中でナンバー1のベスト・トラックだ!!!

8曲目「漁夫と苺と~」…この演奏も美しい。
このトラックは、「マイルス」的な演奏と言うよりも、どちらかと言うと、フリューゲル・ホーンを演っている「アート・ファーマー」の様な感じの演奏です。
最後の方で、音色を捻る?、一寸小細工する所は「マイルス」らしいんですけどね。(大笑い)。

4曲目「ゴーン・ゴーン・ゴーン」…「マイルス」のソロに合わせて、ホーン・セクションが極上のサポート演奏で応援するトラックです。

これも幻の名盤の一つでした…ソニー・クリス~サタデイ・モーニング

2008-01-08 00:07:55 | ジャズ・アルト・サックス
今日は、かつて幻の名盤の一つであった、「ソニー・クリス」が、ザナドゥ・レーベルから出した、「サタデイ・モーニング」を紹介しましょう。

「クリス」の良く歌う、饒舌アルトの冴えも素晴らしいのは勿論の事、バックのメンツも行けてますよ。
ピアニストは「バリー・ハリス」、ベースは、ウォーキング・ベースの名人、「リロイ・ビネガー」、そしてドラムは「レニー・マクブラウン」と言う、渋い名人が強固に「クリス」をサポートしてくれちゃってます。

曲も聴き易い名曲が多く、多くの方にお薦めしたいアルバムです。

アルバムタイトル…サタデイ・モーニング

パーソネル…リーダー;ソニー・クリス(as)
      バリー・ハリス(p)
      リロイ・ビネガー(b)
      レニー・マクブラウン(ds)

曲目…1.エンジェル・アイズ、2.ティン・ティン・ディオ、3.ジェニーズ・ニーズ、4.サタデイ・モーニング、5.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、6.アンティル・ザ・リアル・シング・カムズ・アロング

1975年3月1日 録音

原盤…XANADU 105   発売…クラウン・レコード
CD番号…CRCJ-5001

演奏について…まず、冒頭の1曲目「エンジェル・アイズ」から、お薦めだい。
「ハリス」の悲しげなマイナー・トーンの序奏から、聴く耳が立って、それに続いて「クリス」も更にディープで、憂いを纏ったアルト・サックスで、詩人の様に物語を綴る。
「ビネガー」のカッツリした実直なベース演奏と、ブラシ&シンバルで影の様に「クリス」の演奏を支える「マクブラウン」のバック二人も超名演…。
最初から、これぞワンホーンの魅力が凝縮された演奏に大満足します。
中間の「ハリス」のシングル・トーンが更に深く心の悲しさを抉り、「ハリス」が最後に「泣き節」で止めを差す。
最初から全開バリバリの名演にKOですよ。

2曲目「ティン・ティン・ディオ」…私、大、大好きなラテン・リズムで「マクブラウン」がリズムを起こすと、続く「ビネガー」のぶっといガッツリ・ベースが思い切りはまる。
メロディを吹く「クリス」は相変わらず絶好調、泣き、こぶし、感情を入れ捲り、日本人の琴線に触れるアドリブを演ってくれます。
「ハリス」のソロも美演で、曲に彩りを副えてくれますよ。
しかし、何度も言いますが、この曲でのベスト演奏は、とにかく「ビネガー」の野太い安定感抜群のベースにつきます。
ジャズはベースよければ全て良しと言っても過言では有りません。
「リロイ・ビネガー」最高です!!

3曲目「ジェニーズ・ニーズ」…この曲は、とてもシンプルなブルース曲で、堅実なピアノ・トリオをバックに、「クリス」が気持ち良く、アルトを吹き切ります。
余り虚飾せずに、まじにストレートで男っぽい表現で、「クリス」の別の魅力が発見できます。
中途で「ハリス」が、前2曲のロマンティック&ナイーブな表現とは異なったブルーズでのピアノ演奏も、中々乙ですね。
最後もテーマ・メロディを「クリス」がシンプルに吹いてフィニッシュと相成る。

4曲目「サタデイ・モーニング」…いよいよタイトル曲、真打の登場に場内が沸く。(勝手に妄想していますぜ!)
この曲のテーマも物悲しい、都会のジャズ演歌で、「クリス」の「こぶし」の吹き廻しは絶妙で壷を直撃する。
受ける「ハリス」のアドリブも、「クリス」と一体化されたエレジーである。
相変わらず、「ビネガー」と「マクブラウン」は、実直にラインを刻むだけだが、これが非常に漢の一途な仕事ぶりでいかすんです。
※しかし、中間で一寸だけ、「ビネガー」がぶっとい音でソロを演ってくれて、これが又良いんだよ~。
最後の〆も、臭いぐらい劇的に舞台設定を3人がしてくれて、「クリス」がきっちりと千両役者として、纏めてくれます。
最高!!です。気持ち良いです。

5曲目「マイ・ハート~」…前3曲とは異なって、寛ぎ系メジャー・チューンです。
この曲は、「クリス・レス」のピアノ・トリオで曲が演奏され、「ハリス」がかなり装飾を付けた煌びやかなアドリブを弾き、かつての「ハリス」が演っていた、トリオ・アルバムがデジャ・ヴ様に脳裏をよぎるんですよ。
ここでもソロを演ってくれる「ビネガー」のベースが、分厚いサウンドを生み出し、「クリス・レス」の寂しさは微塵も感じさせない演奏に仕上がっています。

ラストの「アンティル・ザ~」…この曲もラストを飾るには、とても可憐でライトな雰囲気の曲です。
伝統的な4ビートで、終始ブラシ・ワークで「マクブラウン」がリズムを刻み、「ビネガー」もこつこつラインを刻む。
「クリス」は、最後のこの曲は楽しんでいるかの様に、非常に肩の力が抜けた、大人の演奏が渋かっこいいですね。
最初から最後まで、「泣き節」で通さない所が、逆に好感が持てますよね。

演歌を思わせる、1~4曲目の陰鬱な泣き節と、ライトで寛いだ5&6曲目の対比がとても面白く、聴き比べもgoodなアルバムです。
非常にお薦めの1枚です。

生誕100年、ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団~マーラー交響曲第9番

2008-01-06 23:12:31 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日は、今年、生きていたら生誕100年と言う、記念すべき年に当たる、20世紀クラシック界の巨匠指揮者、「ヘルベルト・フォン・カラヤン」が、手兵「ベルリン・フィル」を振って、ベルリン芸術週間での、歴史的ライブ録音にて、「マーラー」の「交響曲第9番」の演奏アルバムを紹介します。

「カラヤン」の「マーラー」演奏にはそこそこ定評が有るものの、磨きぬかれたオーケストレーション故に、実際は、作為的だの美術工芸品、偽宝石(ジルコニア)などと、言われる評論家の方々が多い事も否めません。
そう言った意味では、「ワルター」や「バーンスタイン」の「マーラー」直系の愛弟子達や、「テンシュテット」、「アバド」達の「マーラー」演奏に対して、定評のある指揮者等と評価を比べてると、低いと言わざるを得ませんでした。

「カラヤン」とは、アプローチやスタイルが違うものの、一般的な音楽好き(俗的)な我々にだけ?評価されていた、「マーラー」指揮者と言えば、「ゲオルグ・ショルティ」が代表的ですが、「カラヤン」も「ショルティ」と同様の評価、(専門家から見方が)なされていたと言っても過言では無いでしょう。

つまり、俗人受けが良く、評論家や専門家からの評価は、こと「マーラー」演奏に対しては、高いものでは無かったのです。

しかし、本アルバムの、この演奏は、その評価を覆したばかりか、20世紀の全「マーラー」演奏の中でも屈指の評価を得た、超絶的な名演奏なんです。

一言で言うと、「カラヤン」がレコーディングの鬼、録音の魔術師では無かったことが証明されて、ライブで最高のパフォーマンスを表現できる、真のマエストロ(巨匠)である事を、実力でもって知らしめた演奏、アルバムなのです。

とにかく、全編に漲る緊張感と、「カラヤン」の研ぎ澄まされた「タクト」の魔術に、「ベルリン・フィル」の団員達も、極限状態まで高まった精神を集中して、演奏に邁進しています。

曲的には、「マーラー」の第9は、聴き易い曲では無く、一寸マニアックで、長大な曲なのですが、多くの指揮者がベスト・パフォーマンスを遺している曲ですので、是非、慣れて聴いて頂きたいと思います。

アルバムタイトル…カラヤン/マーラー交響曲第9番ニ長調

演奏…ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目…第1楽章 アンダンテ・コモド ニ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
   第2楽章 ゆっくりとしたレントラーのテンポで、いくらかぶきっちょに、そして非常に粗野に ハ長調 4分の2拍子 非常に拡大されたスケルツォ 
   第3楽章 ロンド ブルレスケ イ短調 2分の2拍子 きわめて反抗的に
   第4楽章 アダージョ 変ニ長調 4分の4拍子 ロンド形式

1982年9月 ベルリン芸術週間におけるライブ・レコーディング

原盤…ドイツ・グラモフォン 410-726-2  発売…ポリドール
CD番号…F66G-50038~39 2枚組

演奏について…冒頭の解説でも、かなり述べているので、手短に行きましょう。
 
まず、一つには「カラヤン」と言う、詳細、ディティールを磨きぬく手法を得意とした、指揮者の力量を、余す事無く伝える演奏形態に、寸分違わず応える、「ベルリン・フィルハーモニー」のビルトオーゾぶりと、技術を味わってもらいたい。

二つ目に、ライブ・レコーディングと言う、得も言えぬ緊張感により、高められた各人のコンセントレーションを、「カラヤン」が一つの指揮棒によって纏めて、精神性の非常に高い演奏が、徹頭徹尾成されている。

三つ目に「マーラー」の第9と言う曲自体が、名演を生んだ大きな要因になっていて、その理由としては、「マーラー・ミュージック」中、最も美しいと評価されている、第1楽章と、美しい死が訪れる、究極の美音楽(空間)の第4楽章、アダージョが、「カラヤン」の磨きぬいた美音、美しさと、とてもマッチしている事。
中間の第2楽章は、とても変化に富んだ面白い楽章であり、同じく第3楽章も「道化」の楽章として、趣の深い演奏が強いられるので、こう言う「ポピュラー・ミュージック」的な演奏を演らせたら、「カラヤン」の右に出る者はいない。

つまり、全楽章を通じて、「パーフェクト」な演奏がなされているので有る。

是非、「カラヤン」の「ベスト・パフォーマンス」の出来栄えの、この1枚、アルバムを聴いて下さい。

フリー・ジャズの本丸的演奏…アーチー・シェップ~ママ・トゥー・タイト

2008-01-04 16:18:00 | ジャズ・テナー・サックス
今日、紹介するアルバムは、先回の「ゴールデン・サークルのO.コールマン」以上に、フリー・ジャズの毛色の濃いアルバム、「アーチー・シェップ」の「ママ・トゥー・タイト」で行きましょう。
正しく、フリー・ジャズの本丸作品の一つです。

年末から、何かフリー系ジャズばっかりでごめんなさい!
一部の閲覧者の方からは、評価して頂いているのは分っていますが、あまり一般的で無いので、フリー系の紹介は、今日で一回止め時ましょう。
別にフリー系ジャズの紹介自体を止める訳では有りませんので、悪しからず。

明日以降は、ラテンや4ビート・ジャズ、クラシックを中心に、聴き易いアルバムを全面に押出した以前のスタイルに戻す予定です。

アルバムタイトル…ママ・トゥー・タイト

パーソネル…リーダー;アーチー・シェップ(ts)
      トミー・タレンタイン(tp)
      ラズウェル・ラッド(tb)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ビーヴァー・ハリス(ds)

曲目…1.ア・ポートレート・オブ・ロバート・トンプソン a)プレリュード・トゥ・ア・キッス、b)ザ・ブレイク・ストレイン、c)デム・ベーシズ、2.ママ・トゥー・タイト、3.アーニーのテーマ、4.バッシャー

1966年8月19日 録音

原盤…impulse A-9134  発売…MCAビクター
CD番号…MVCI-23079

演奏について…まず、オープニングの組曲風、大作「ア・ポートレート~」ですが、aの「プレリュード~」の序奏から、これぞフリー・ジャズだと言わんばかりに、「シェップ」の絶叫テナーに追従して、「タレンタイン」のトランペットと、「ラッド」のトロンボーンが、壊れた?万華鏡の様に、3管が絡む合う、壮絶な演奏から始まる。
取分け、「シェップ」と「ラッド」の二人の出来が良く、高音の「シェップ」、低音の「ラッド」が、フリーキーに吼え捲るんです。
ある種、異種格闘技の殴り合いの画を想像させるほどに、激しいシャウトでバウトしてくれます。
ドラムスの「ハリス」は、陰ながら彼等を渋く煽り、「ヘイデン」は演奏に重厚感を与えるべく、腰を据えた骨太ベースを弾いて、アシストしてくれます。

bの「ザ・ブレイク~」に入ると、曲は一転して、かなり静かな曲調に変わりますが、ホーン群の3人は、それでもパートパートで、シャウトをした演奏で、曲を飾り付けるんですが、この曲で吹いているメロディの所々が、どことなく「ミンガス・グループ」で過去に演奏されているフレーズに似ていて、やはり、3管ぐらいのカルテットやセクステットの編成になると、コンボ演奏の音に重厚さを出すには、「ミンガス」の解釈は必要不可欠な要素なのかなぁと、改めて考えさせられます。

cの「デム・ベーシズ」になると、aと同様、再度「シェップ」を中心とした3管が絶叫とシャウトで、激しい盛り上がりを見せて、「ハリス」もガツン、ドカンとドラムを敲き捲って、廻りを煽り捲ります。
「シェップ」と「ラッド」は、動物的な、ゾウや羊や馬の様に「グヮオーン」とか「ギャーッ~」と言う感じで嘶くのですが、曲の終盤に入ると、非常にクラシカルでメロディアスなマーチ曲になって、この起承転結?な感覚が、シュールさと面白さが同居していて、…正しくこの感じが「フリー・ジャズ」なんでしょう。

2曲目、表題曲「ママ・トゥー・タイト」…とても親しみ易いメロディから始まり、(「ハンコック」の「ウォーター・メロン・マン」のメイン・メロディに酷似した雰囲気なんですよ)これを聴く限り、フリー・ジャズと言うより、バピッシュなファンキー・チューンなんだけど、私は嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きですねぇ。
「タレンタイン」が、てとも開放的で、楽しげなオープン・トランペットを吹いて、「ラッド」もベース的な役割で、トローンボーンの音を重ねてくれるんですが、大将「シェップ」だけは、自由奔放にテナーをぶいぶい言わします。
フリー嫌いな人は、このトラック(表題曲)だけでも、聴いてみて頂戴!!

3曲目「アーニーのテーマ」…とてもアンニュイな雰囲気の妖しいメロディに、2管(ペットとトロンボーン)のユニゾンに対して、「シェップ」も攻撃的だが、知己に富んだアドリブで、テナーで絡んで行く。
リズム二人は、とてもアーバナイズされた、乾いた曲調で、何かとても不思議な雰囲気の曲ですね。

ラストの「バッシャー」…ビッグ・バンドのテーマ風に、3管でテーマを吹いた後、ユニゾン演奏を軸にしながら徐々にホーン・セクションが疾走を始める。
やはり、曲を推進する旗手は、「シェップ」であり、それを受けて「タレンタイン」と「ラッド」もブロウをするのだが、後輩?がシャウトをすると、それを倍返しするのが「シェップ」なんだ。
しかし、4分すぎに突然曲調が静かになって、「タレンタイン」の独演的なソロ演奏になる。
とてもメロディアスで、魅惑的なアドリブ・フレーズで、聴いていてとても気持ち良い~。
だが、この静かなバラード的な演奏は、あくまでも一時的な物で、また「シェップ」と「ラッド」が、ジャングルの鳥類の様に騒ぎ出すと、演奏が激しくなってくる。
ホーンは戦慄いているが、この曲をカッツリと〆ているのは、微動だにしない「ヘイデン」のヘヴィーなベースである。
ホーン3人プラス「ハリス」のドラムは、煽りに煽って、どこまでも飛翔するとするのだが、「ヘイデン」は勝手にはさせず、例えが悪いかもしれないが、鵜飼の鵜匠の様に、天空に行きそうな4人を、最終的には上手く掌中に戻る様に、抜群の裁量でコントロールしているんです。
流石、「ヘイデン」ですね。

新年、明けましておめでとうございます。

2008-01-03 00:28:03 | ジャズ・アルト・サックス
新年明けましておめでとうございます。

昨年は、閲覧されてらっしゃる皆様に、多大なご協力やアドバイスを賜り、本当にありがとうございました。

また、私の至らない面から、色々な嫌な思いをされた方も多かったのでは?と深く反省をしている所存です。

今年は、ブログを書く者として、常識ある文章、態度、コメントをして行く所存ですので、(但し、如何せん不躾な人間故に、皆様のお気に召さない、不適切な言葉で書いたりする事も有るかもしれません)、その節は、平にお叱りの言葉(苦言)を言って頂いたり、逆にフォロー、アドバイスをして頂けると幸いです。

一所懸命に努力をしますので、今年もどうかお付き合いをして行って下さい。

さて、新年最初のアルバムは、昨年の続き…余りにもディープで、ノッケからヘヴィーな作品で、恐縮しちゃいますが、「ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン」の続き、「vol.2」で行きますよ。

まず、超問題作の、1曲目「スノーフレイクス・アンド・サンシャイン」ですが、この「コールマン」の傑作アルバムが、「問題作」とも言われているのは、偏にこの曲、演奏に他ならないのではないかと思わせるトラックです。
まず、「コールマン」のバルトークを思わせる様な、(おどろおどろしい)ヴァイオリン演奏から、スタートして、この緊張感溢れるヴァイオリン演奏を、乾いた音色で、タイトに演奏する「アイゼンソン」のベースと、変幻自在のクールなドラミングの「モフェット」が見事にアシストをする。
中間では、「コールマン」はトランペット(演奏)も駆使するが、やはりこの曲の面白さは、ヴァイオリンの演奏の方だと思う。
ヴァイオリン演奏自体は、技術的に優れているとは思わないが、「ネオ・ジャズ」を演ろうとしている、スピリットは非常に買いの部分だと思う。
何度も言うが、乾いた緊張感の演奏は、このヴァイオリンと言う楽器演奏ならではのなせる産物だと思う。
とにかく、聴いてみる価値のある、一曲でしょう。

2曲目「モーニング・ソング」…1曲目で、究極の遊び心、実験心を満喫?した「コールマン」が、今度はアルト・サックスで正統的にブロウする曲が、これなんです。
演奏フレーズは、清々しい朝をイメージさせる、伸びやかで健康的な響きで…前曲とは、全く曲調が異なる。
まぁ、バラッド曲と言えば、バラッドと言うカテゴリーに入れても良いぐらい、スタンダードな曲調であり、演奏でもある。
中途では、トライアングルをリズム楽器として使用したりする、前衛的な演奏部分も有るには有るのだが、この曲全体を通じて思うのは、とても魅惑的な、聴き易いベーシックな演奏と解釈できる曲だと言えます。

3曲目「ザ・リドル」…vol.2の中では、「コールマン」が、最もアグレッシヴで、豪快にブロウするナンバーです。
バックでは、特に「モフェット」のクールなドラミングの出来が良く、「コールマン」とのデュオの様な、サックスとドラムのバトル的なやりとりが、最高の聴き所でしょう。
ピアノ・レスの良い部分、ロマンティシズムやセンチメンタリズムを排除した、乾いたクールさが、カッコイイですね。
「コールマン」は、激しい演奏の中に、何か楽しさを見出した様な、不適な笑みが思い浮かぶ演奏です。

ラストの「アンティーク」…フリー演奏ですが、「コールマン」のサックスが良く歌っていて、メロディアスなフレーズが多く、「ロリンズ」のピアノ・レスでの演奏を彷彿させる、好トラックです。
この辺が、フリー系アーティストでも、「コールマン」なら何とか聴ける…と言う方が多い理由かもしれませんね。
サックスと言う楽器の性能を、極限まで導き出した感じがする演奏です。

最後に…フリー・ジャズが怖い方でも、「オーネット・コールマン」なら、聴ける方はいらっしゃると思いますので、是非チャレンジして下さい。

皆さん、今年も宜しくお願い致します。