紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

BN、ソウル、そしてジャズの答えとなるアルバム…アム・アイ・ブルー~グラント・グリーン

2008-01-20 22:02:39 | ジャズ・ギター
タイトルが仰々しいのですが、解説帯(中山康樹氏著)から、少しばかり拝借させて頂きましたが、正しくその通りの内容で、付け加えるなら、泥臭く無いブルースと「グラント・グリーン」の答えと言うのも入れたいですね。

清書してみますと…ブルーノートとは?グラント・グリーンとは?ソウルとは?ハイセンスなブルースとは?そしてジャズとは何?の答が、出されたアルバムなんです。

アルバムタイトル…アム・アイ・ブルー

パーソネル…リーダー;グラント・グリーン(g)
      ジョー・ヘンダーソン(ts)
      ジョニー・コールズ(tp)
      ジョン・パットン(org)
      ベン・ディクソン(ds)

曲目…1.アム・アイ・ブルー、2.テイク・ジーズ・チェインズ、3.アイ・ワナ・ビー・ラヴド、4.スイート・スランバー、5.フォー・オール・ウィ・ノウ

1963年5月16日録音

原盤…BLUE NOTE ST-84139  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6568

演奏について…オープニングでは、表題曲でも有る「アム・アイ・ブルー」から始まる。
「グラント・グリーン」のブルージーでソウルフルな、感情表現豊かなギター・プレイがノッケから最後まで全力投球される。
伴奏陣の中で、特に色を副えるのは、オルガンの「ジョン・パットン」…彼の素晴らしいプレイとアドリブが、このアルバムのソウル色、ブルース魂のステージを何段階も上げる原動力となっている。
中間での「ヘンダーソン」のテナーも魅惑的だし、「ベン・ディクソン」のドラミングもgood jobです。

2曲目「テイク・ジーズ~」…寛ぎ系の4ビートに寄せて、「グリーン」が寛容なソロを取る。
バックでは、「パットン」のオルガンと「ディクソン」のドラムは淡々とリズムを刻むのだが、単純でありながらもブルース・フィーリングに満ち溢れていて、「グリーン」のインスパイアに貢献している。
「コールズ」「ヘンダーソン」のソロも、ほのぼのとしたトーンとメロディで、とてもフレンドリーな曲に仕上がった。
こう言う、ミディアムで楽しい曲も良いもんだ。

3曲目「アイ・ワナ・ビー・ラヴド」…スローなテンポで、「グリーン」が、感情移入たっぷりにアドリブを弾く、アルバム一押しのバラード(ブルーズ)・チューン。
ホーン2人は、ユニゾン伴奏で、千両役者、いや(立場上、横綱の)「グリーン」の、露払と太刀持ちとして、バッチリ、サイドプレイを演ってくれます。
勿論、「パットン」の優雅なオルガンと「ディクソン」の赤銅色のブラッシュ・ワークのアシストも良いですよ。
終盤ソロを取る「コールズ」の叙情性たっぷりのトランペットが…胸にグッと来ます。
「コールマン」ってこんなに良いトランペッターだったのかと改めて惚れ直す事間違い無しです。

4曲目「スイート・スランバー」…序奏は「コールズ」がメインとなって、テーマを吹き、3曲目と同様、ここでもとても素晴らしいバラッド演奏が幕を開ける。
「グリーン」の演奏はメロディ・ラインをあまり崩さず、原曲の美しさを充分に活かしたアドリブ・プレイを演ってくれるんです。
また、「パットン」のオルガン演奏が、音の使用を極力抑えて、少な目のフレーズで、お上品に曲を修飾してくれて…より一層、曲のセンスが上がってますね。
しかし、ソロに入ると、流石「パットン」と言える…青白いオルガン・サウンドで、夜月の様な存在を誇ります。
曲の大半を支配する「グリーン」「パットン」「ディクソン」のトリオ?演奏に、音楽のミューズを見る(かも知れません。)(笑・中笑・大笑)

ラストの「フォー・オール~」も、力の抜けたライトな感覚で曲が始まります。
しかし、「グリーン」の次にソロを演る「コールズ」のミュート・プレイの美しさが、最高に行けていて、ライト感覚からバージョン・アップさせて行きます。
このアルバム全体のコンセプトに合致した、とても魅惑的なプレイ…まじに良いんですよ。
その後の「ヘンダーソン」も、バリバリと言う感じでは無く、幾分抑え目の、内なる感情表現寄りのアドリブを吹いて、「コールズ」同様に曲を知的に仕上げます。
ソロイストはもう一度、「グリーン」に戻り、好フレーズを続けて、それを受けた「パットン」も、最後の見せ場とばかり、ちょいとハード目のアドリブを演って、フィナーレまで盛り上げてくれます。

このメンバー…各人がブルーノートの秘蔵っ子なので、徹頭徹尾ブルー・ノート・レーベルの良い部分が凝縮されて、濃いエッセンスが集約されたアルバムに仕上がっています。

このアルバムの収録曲は佳曲ぞろいです…ドナルド・バード~バード・イン・フライト

2008-01-20 14:14:53 | ジャズ・トランペット
CD解説(高井信成氏 著)から引用させて頂くと、このアルバムは、「ドナルド・バード」の有名作、ファンキーの王道「フュエゴ」と、ライブの傑作「ハーフノートのドナルド・バードvol.2」の間に挟まれて、一寸地味な評価に留まっているのだが、佳曲揃いの好アルバムだと書かれていました。

正しく高井氏のおっしゃる通りで、「バード」の作曲と、ピアニストとして参加の「デューク・ピアソン」の作品、そして、スタンダードと、メロディアスな佳曲で構成されている…昔的に言うなら、ジャズ喫茶(店主)好みの1枚なんですね。

そして、演奏するコンボも、「ハンク・モブレー」との2管(1、3、4曲目)と、「ジャッキー・マクリーン」との2管(2,5,6曲目)で、半々ずつに構成されています。
この辺の対比、聴き比べが出来るのもお楽しみの一つになるかもって感じでしょうか?

アルバムタイトル…バード・イン・フライト

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ハンク・モブレー(ts) ☆2、5、6曲目抜け
      ジャッキー・マクリーン(as)★★2、5、6曲目参加
      デューク・ピアソン(p)
      ダグ・ワトキンス(b) ☆2、5、6曲目抜け
      レジー・ワークマン(b)★★2、5、6曲目参加
      レックス・ハンフリーズ(ds)

曲目…1.ガーナ、2.リトル・ボーイ・ブルー ★★、3.ゲイト・シティ、4.レックス、5.BO ★★、6.マイ・ガール・シャール★★

録音…1960年1月17日、25日  7月10日★★

原盤…BLUE NOTE STー84048  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6531

演奏について…巷で評価されているのは、1曲目と6曲目、そして2曲目なんですが、私的にもその3曲が聴き物なのは言うまでも有りません。(かなり俗的だけど、良い物は良いんですよ!)
さて、その1曲目「ガーナ」…「ドナルド・バード」自らが書いたラテン・リズムのナンバーなのですが、「ダグ・ワトキンス」の的確なベースと、「ハンフリーズ」のシンバル・メインのドラムスがしっかりと曲の礎を作って、そのリズムの上を「バード」が哀愁を含んだトランペットで走ります。
その後に「ピアソン」がそれ以上に哀愁あるピアノ・アドリブをバッチリ決めてくれて、心わくわくの更に良い感じになります。
終盤に出てくる「モブレー」は、いつもより太目の音色(サウンド)で、かなり男っぽい(渋い脇役では無く、準主役級の俳優だな)のイメージ演奏が新鮮です。
それ以上に「モブレー」の後の「ハンフリーズ」のドラム・ソロが聴き物で、アフロでリズミックなバスドラ効果も良いので、「ハンフリーズ」の音楽人生の中でもベストに近い演奏では無いかと思います。

2曲目「リトル・ボーイ・ブルー」…「マクリーン」抜きのワン・ホーン演奏なんですが、「バード」の演奏だけをメインに選ぶなら、このアルバムのベスト・チューンなのは間違いないでしょう。
やや抑制した音量で、非常にリリカルにバラッド・メロディを吹き切ります。
フル・トーンでのバラッド演奏で言ったら、「リー・モーガン」の「アイ・リマンバー・クリフォード」に匹敵するぐらいの演奏かな?(一寸持ち上げすぎか?)
「ピアソン」のシングル・トーンで高音域を多用した、ロマンティックなアドリブも感涙物で…とにかくきれいで、二人の織り成す「美演」は、最高です。

3曲目「ゲイト・シティ」…これは、「ピアソン」作のファンキーなノリの良さを含んだブルーズ曲で、1曲目のラテンと2曲目のバラッドから、がらりと変わった曲調で、面白いアクセントになっています。

4曲目「レックス」…全編を通じて、ブリリアントな音色で、「バード」が気持ち良いアドリブを演ってくれます。
相変わらずバックの3人「ピアソン」、「ワトキンス」、「ハンフリーズ」の的確なアシスト演奏が、「バード」の強力な援軍となってくれます。
「モブレー」も、元気なトーンで、ぶいぶい言わせるんですが、1曲目と同様に、この日「モブレー」に何が有ったんだろう?って思うぐらい、奏でるサウンドが元気(良すぎ)なんですよ。
「モブレー」の音って、テナー奏者の中で、最も地味で、渋いのが特徴で、また魅力でも有るんですが、(この日の音・演奏は)いつもと違うんだよね。
でも、一寸パワフルでマッシブな「モブレー」も良いよね?

5曲目「BO」…「ピアソン」作のマイナー・チューンで、序奏のテーマをユニゾン演奏する所のフレーズ&編曲は、完全にブルー・ノートの世界に真っ只中って感じだよね。
その後の「マクリーン」の塩辛い尖ったトーンのアルト・サックスと、「バード」の抑え気味のアドリブが、ディープな雰囲気を作っています。
また、「レジー・ワークマン」の野太いベース・サウンドと、ブルース調のフレーズを多様する「ピアソン」の演奏が、更にディープさに拍車をかけてますねぇ。
うぅーん、真に渋い一曲です!!

さて、このアルバムの代表作品が6曲目の「マイ・ガール・シャール」なんですけど、とにかく「ジャッキー・マクリーン」のソロの出来が秀逸で、無理に音を出すフリーキーな感じではないけど、天に突き抜けた様なトーンがgoodだねぇ。
「バード」も、アルバム収録曲中、一番とも言えるブリリアントな音色で、アドリブを展開してくれて…2管の魅了を余す事無く堪能させてくれます。
それから「ピアソン」の「ソニー・クラーク」ばりのシングル・トーンでのセンチメンタルなアドリブ演奏が…更に(貴方の)琴線を刺激し捲りますよ。

いつまでも手許に置いておきたい、魅惑的なアルバムです!!!