紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

久しぶりにオケをバックにしたアルバムです…マイルス・デイヴィス~ポーギー&ベス

2008-01-09 23:04:02 | マイルス・デイヴィス
ガーシュインの名作オペラ「ポーギー&ベス」に、帝王「マイルス・デイヴィス」と名アレンジャー「ギル・エヴァンス」&「ヒズ・オーケストラ」がバックとして挑んだ意欲的な名演・名盤がこいつです。

アルバムタイトル…ポーギー&ベス

パーソネル…マイルス・デイヴィス(tp)
      ギル・エヴァンス(arr、cond)
    他 キャノンボール・アダレイ(as)
      ジミー・コブ(ds)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ポール・チェンバース(b)              等

曲目…1.禿鷹の歌、2.ベスよお前は俺のもの、3.ゴーン、4.ゴーン・ゴーン・ゴーン、5.サマー・タイム、6.ベスよ、何処に、7.祈り、8.漁夫と苺と悪魔蟹、9.マイ・マンズ・ゴーン・ナウ、10.ご自由に、11.ほら、蜂蜜売りだよ、12.愛するポーギー、13.ニューヨークへボートが

1958年7月22日、29日、8月4日、18日 NYにて録音

原盤…米コロムビア  発売…SONY Records
CD番号…SRCS-9107

演奏について…正直、今日紹介していて、こう言うと何だけど、非常に中途半端な立ち位置のアルバムである事は否めないんですぅ。
クラシックのオペラを素材としていて、バックはストリング・レスのオーケストラがこなしている。
本来歌手が歌うメロディを「マイルス」が吹いてくれるんだけど、この楽器編成が、吉と出るか?凶と出るか?ちと微妙な感じですね。
クラシックを全く聴かない人、映画音楽なんかが好きな人には、絶対的にお薦めしたいけど…クラシックに精通している人にとっては、かなり物足りない印象も抱くと予測されます。

また、本格的なジャズ好きな人にとっても物足りないかも?って思う部分も多い。
何故なら、ジャズの本質、面白さは、やはりアドリブが多勢を占めるからなんですね。
このアルバムには、アドリブ・パートが少なくて、かなりBGM的な演奏が多くなっているので、この辺りの評価も分かれる部分でしょう。

但し、超A級のBGM、映画音楽として理解できるのなら、是非聴いて欲しい。
「マイルス」と「ギル」の、非常に高尚で知的な音楽芸術のエッセンスが、ギューッと凝縮されて、パンパンに詰っている…この感覚は他のアーティストには、決して真似できない代物なんです。

それでは、各パートの詳細について少し述べましょう。

5曲目「サマー・タイム」…超名曲だが、「マイルス」は非常に原曲に忠実に、ミュート・トランペットでメロディを吹き上げる。
バックのホーン群もとてもデリカシーの有るお上品な演奏です。
リリカルで、「竹久夢二」の女性画のように、繊細でちょっぴりクールな感覚が堪んない魅力です。
とても紳士的にリズムを刻む、「マイルス」親衛隊の「チェンバース」のベースと「コブ」のブラッシュ・ワークが良い仕事をしています。

12曲目「愛するポーギー」では、バックのブラス演奏が、静けさを演出していて、「マイルス」も(音楽的)情景に同化して、非常にクラシカルな雰囲気のBGMを創り出している。
しかし、「マイルス」の音は、いつ聴いてもとても寒色系の音でとにかく知的ですね。

7曲目「祈り」…一言で言うと「マイルス」芸術の極み的な演奏。
「マイルス」のクールなトランペットと、バックのオーケストラが作り出す高尚なアートです。
「マイルス」…帝王はやっぱり何を演っても絵になるし、カッコイイですね。
ここでの「マイルス」の祈りは、音色こそいつも通りだが、音楽の芯は珍しく男性的でマッシブに感じる。

オープニング曲「禿鷹の歌」…一寸エキゾティックな雰囲気の曲調に合わせてホーン・セクションと「マイルス」がクールに決め!の演奏ポーズを取る。
ビッグ・バンド系には不釣合いなぐらい、ニューヨーカーのダンディズムを見事に表現している演奏です。
渋く仕事を演る「チェンバース」と、ホーン群ではチューバを吹く「ビル・バーバー」の名演に思わず拍手!です。

13曲目「ニューヨークへボートが」…極上のミュージカルのラストを飾る様な、誠にゴージャスな雰囲気のブロード・ウェイのショウ・タイムにドンピシャはまるラスト・ナンバー。
「コブ」が、アルバムのエンディングらしく、結構派手にドラムを敲いてくれるのもgoodです。

2曲目「ベスよ~」では、叙情性を豊かに「マイルス」とホーン群が、緩楽章での美演をやります。
とても優しげで、ほのかに温かい…初春の木漏れ日をイメージさせるんです。
うぅーん、聴いていて、とにかく気持ち良い~!!

3曲目「ゴーン」…この演奏の肝は、この曲と4&9曲目だけ参加し、太鼓(ドラム)を敲きに来ている?「フィリー・ジョー」の独壇場的な、超絶ドラム演奏が最高です。
「フィリー・ジョー」は相変わらず、テク&スピリット共に最高ランクの演奏で、強烈なドライブ力をバックにして、「マイルス」も気持ち良くペットを吹き通す。

10曲目「ご自由に」…静けさと、都会的な曲調が見事に同化した、好トラック。
ブルース的に進行する、(ソー・ホワットかブルー・セヴンみたいだ)リズムを従えて、「マイルス」が最高にカッコイイ、ダンディな演奏を演ってくれます。
「マイルス」のブルース…土臭くないアーバナイズの極めのブルースで、この曲では、アドリブも満載です。
これが、ニューヨークのブルースだ!これが東海岸のジャズだ!!
このアルバム中でナンバー1のベスト・トラックだ!!!

8曲目「漁夫と苺と~」…この演奏も美しい。
このトラックは、「マイルス」的な演奏と言うよりも、どちらかと言うと、フリューゲル・ホーンを演っている「アート・ファーマー」の様な感じの演奏です。
最後の方で、音色を捻る?、一寸小細工する所は「マイルス」らしいんですけどね。(大笑い)。

4曲目「ゴーン・ゴーン・ゴーン」…「マイルス」のソロに合わせて、ホーン・セクションが極上のサポート演奏で応援するトラックです。


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2 コメント

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確かに中途半端?? (加持顕)
2008-01-10 18:47:57
こんばんわ。

そう言われて考えると、超名盤「マイルス・アヘッド」と「スケッチ・オブ・スペイン」に挟まれて、微妙な立場の作品かもしれませんね。

『マイルス・アヘッド』は大好きで一時期、ヘビーローテーションにしていた事がありましたが、「ポーギーとベス」はアレンジが大げさすぎる感じがしるからか、ほとんど聴かないなあ。
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こんばんわ!レスどうも!! (えりっく$Φ)
2008-01-10 22:41:09
私如きが、生意気に「中途半端」なんて言い方をして、自重すべきではなかったか?とちょっぴり反省しています。

でも、やっぱり…このアルバムの立ち位置って微妙ですよね?

加持さんから共感?を得られて、ちょっぴり安心しましたよ。
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