紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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70年代に録られた正統的なジャズ…ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン~ハンニバル・イン・ベルリン

2008-01-29 22:18:09 | ジャズ・トランペット
1970年代~って言いますと、誰もが知っている、フュージョン全盛時代。

歴史的な名盤で言っても、電気マイルスの諸作…例えば、「アガルタ」「パンゲア」「ジャック・ジョンソン」「オン・ザ・コーナー」なんかがそうでしょう。
また、「ハービー・ハンコック」の「ヘッド・ハンターズ」、「チック・コリア」の「リターン・トゥ・フォーエヴァー」等もそうですし、「ヒューバート・ローズ」の作品や、日本の「ナベサダ」「ヒノテル」「渡辺香津美」等も著名な、フュージョン系アルバムを数多く出したのが、やはり70年代です。

その、フュージョン全盛期に敢えて、アコースティック楽器で、フリー&モードで全力でぶいぶい演るアルバムを出したのが、今日、紹介の「マーヴィー・ピーターソン」であり、その彼の作品の中でも最高傑作が、この「ハンニバル・イン・ベルリン」なんです。

時代錯誤?と言われようと、自己を貫き、思い切り吹き切る「マーヴィー・ピーターソン」の名演を是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…ハンニバル・イン・ベルリン

パーソネル…リーダー;ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン(tp)
      ジョージ・アダムス(ts)
      マイケル・コクラン(p)
      ディーダ・マレイ(cello)
      スティーヴ・ニール(b)
      アレン・ネルソン(ds)

曲目…1.賛美歌第23番、2.ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー、3.ベッシーズ・ブルース、4.スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット、5.マイ・フェイヴァリット・シングス

1976年11月3日 ドイツ、ベルリン・ジャズ・フェスティバル ライヴ録音

原盤…MPSレコード  発売…ポリドール
CD番号…POCJ-2554

演奏について…まぁ、私が好きで書いてるブログなので、一方的な意見だと思いながらも、ラストの「マイ・フェイヴァリット・シングス」から書きたいので、ご了承を下さい。
「ハンニバル」が奏でる序奏は、ハイ・ノートで吹くアドリブ・ソロ演奏です。
一聴すると、まだ「マイ・フェイヴァリット・シングス」には聴こえないが、1分半過ぎた所から、著名なメロディを吹いて、全員がヨーイ・ドンの戦闘体勢に入る。
ビンビンと張り詰めたハードなベースを演る「スティーヴ・ニール」と、「エルヴィン・ジョーンズ」のこれ見よがしに、爆流の様にドラムを敲く「ネルソン」が、リズムを推進する。
ここで、「ジョージ・アダムス」が、フリー・ジャズの寵児らしく、思い切り豪快にシャウト&ブロウで、エネルギー発散120%で吹き切ります。
先生の「コルトレーン」を彷彿させる、テナー・サックスでの絶叫に、心が思い切り解放されます。
その後に続く「ハンニバル」は、高音域を中心に、オープン・トランペットで、ブリリアントにアドリブを決めてくれます。
その後には、「ハンニバル」が、もはやトランス状態になり、吹いて吹いて吹き捲る…倒れそうになるまで吹く。
こんなトランペット演奏…聴いた事がないぜ!
聴衆は完全にスタンディング・オベーションになります。

オープニング曲「賛美歌第23番」…クラシックに名曲、「熊蜂は飛ぶ」を彷彿させる、トランペットでの速射砲の様な、超絶技巧曲でスタートする。
ヴェリー・ハードな男のベースを弾き捲る「スティーヴ・ニール」が、鋼鉄のドライヴィングで皆を引っ張る。
「アレン・ニルソン」のドラムスも、「ニール」に負けじと、皆を煽り捲る。
それを受けて、「ハンニバル」が、幽閉された鳥が、天空に放たれた様に、思い切り自由にアドリブ演奏を吹くんです。
その後はピアノの「マイケル・コクラン」が、モード&フリー全開で、鍵盤を敲く敲く…打楽器としてピアノを打ち込むんです。
それから、またまた「ハンニバル」の登場です。
少し休んで体力を取り戻した、若き獅子がまたオープン・トランペットで、声高らかに、自己を叫びます。
素晴らしい名演奏です。

2曲目「ウィロウ・ウィープ~」…非常に有名なスタンダード曲ですが、ここでも例に洩れず、「ハンニバル」が素敵なバラード・プレイを見せます。
どこまでも美しく、しかしトランペットの迫力を活かして、ハイ・ノートで決めて来ます。
それから「コクラン」が、とても流麗なアドリブ・ソロを紡ぎます。
バックのリズム・セクションは、真面目に、実直に自分の仕事を完遂し、「コクラン」をサポートします。
この後、「ジョージ・アダムス」が、良く歌うカデンツァを演じて、更にエキサイティングな感情にさせますが、ラストの再度ソロを取る「ハンニバル」は、序奏と同じアプローチに戻り、叙情的なバラード・プレイで、この曲を締め括ります。

3曲目「ベッシーズ・ブルース」…相も変わらずハードなバック陣に煽られて、序盤は「アダムス」が主軸になり、ブルース調のメロディをフリーキーに調理して、ファイティング・スピリッツを曲に抽入します。
「アダムス」は、体が大きい事も有って、天性に(吹く)音に迫力が有りますね。
持ち前の大音量を見事に活かした演奏です。
この曲では「コクラン」は、シングル・トーンをメインに転がす様な弾き方で、華麗にソロを仕上げます。
そして、また曲の仕上げには、「ハンニバル」が、雄大なソロを大きな音で吹き切り、劇的に〆てくれます。
しかし、この日の「ハンイバル」…集中力の持続力が、まじに大した物です。
どの曲も、フル・トーンで完璧に吹き切っています。

4曲目「スウィング・ロウ~」…チェロの「デューダー・マレイ」のソロ演奏から、この曲は幕を開ける。
この曲は「ハンニバル」の自作曲らしいのだが、とても歌謡的なブルース曲で、覚え易いメロディ進行で…「ハンニバル」がアドリブ・フレーズを駆使して進んで行く。
しかし、チェロをコンボに使用すると考えた意図は何だろうねぇ?
結果から言うと、とてもセンスが有るよねぇ。
とても、曲の品が上がる感じがするんです。
「ハンニバル」は、とても気持ち良く、バックを信じて、トランペットで、メロディを忠実に、最初から最後まで歌い上げます。
真にセンス抜群の1曲に仕上がりました。

「ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン」…活躍期間は短かかったが、このアルバムを残した事により、ジャズ史にその名を刻んだと、私は信じたいです。
それぐらい、出来が良い名盤に仕上がっております。


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