紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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これぞ奇跡のライヴ演奏…エリック・アレキサンダー・カルテット~ライヴ・アット・ザ・キーノート

2007-10-12 21:53:36 | ジャズ・テナー・サックス
このブログによくコメントを下さる、「ナオさん」がピアニスト、「ハロルド・メイバーン」の最高傑作で、(リーダー;「エリック・アレキサンダー」も含めて)素晴らしい出来すぎて、またライヴ盤と言う事もあって、聴いていて疲れるぐらいの名盤との事で、興味が湧きましたので、購入致しました。

ナオさんのコメント通り、「メイバーン」、「アレキサンダー」のみならず、ドラムスの「ファンズワース」、ベースの「リーブス」とも、生涯最高の出来なのでは?と言う程の名演をしており、正しく4人のミュージシャンが、最高のパフォーマンスを見せた、「奇跡のライヴ演奏」だと感銘を受けた次第です。

是非、皆様に紹介したいと思い、今日はこのアルバムをチョイスさせて頂きます。

さて、今日はタイトルの「奇跡のライヴ演奏」と言う概要について、少しだけ述べさせて下さい。

「名演奏」…を生む要因には、大まかに言って二種類の演奏に分けられると思います。

一つは、カリスマ・ミュージシャン(スーパー・スター)が、強烈に全員を鼓舞して、牽引して行くタイプの名演、(無論牽引される側の演奏家にも、確かな技量と精神を持っているのは事実ですが)その演奏タイプの代表例は、「ジョン・コルトレーン・カルテット」等は最たる代表例でしょう。

一方、もう一つの名演のタイプは、コンボ(楽団)が一体となって、演奏の主役は全員にあって、そのコンボの各人がそれぞれベストなパフォーマンスを形成する事によって、演奏自体が最高レベルの水準に達した場合です。

申すまでもなく、この「アレキサンダー・カルテット」のライヴ・パフォーマンスは後者に属する、超名演です。
主役は全員、各人のベスト・パフォーマンスの集約演奏がこのライヴ盤に込められているんです。
心して聴いて下さい。

アルバムタイトル…ライヴ・アット・ザ・キーノート

パーソネル…リーダー;エリック・アレキサンダー(ts)
      ハロルド・メイバーン(p)
      ナット・リーブス(b)
      ジョー・ファーンズワース(ds)

曲目…1.ビー・ハイブ、2.メイビー・セプテンバー、3.イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト、4.エドワード・リー、5.バークリー・スクエアのナイチンゲール、6.スタンズ・シャッフル、7.アローン・トゥゲザー※
  ※未発表ボーナス・トラック

1999年3月4、5日 東京、原宿ジャズ・クラブ「KEYNOTE」にてライヴ録音

演奏について…まず、オープニングの1曲目「ビー・ハイブ」では、「アレキサンダー」の伸びやかなテナーに合わせて、ピアノ「メイバーン」がまるで陰の様に、「アレキサンダー」の演奏に重ねるように音を合わせる。
そして、この曲の主役は何と言ってもドラムス「ファーンズワース」である。
高速のリズムで強烈に皆をドライヴィングしており、全員が一斉に「ヤル気」モードに突入している。
ここからは「アレキサンダー」もエンジン全開で、激しくブロウする。
「メイバーン」の激しいくらいパワフルなブロック・コードの伴奏も必聴に値し、アドリブ・パートでは、シングルトーンを雨あられの様に、音として叩き込む。
己を主張はしないが、ベース「リーブス」のタイトでぐんぐん進むベース・ワークもすごいんです。
この3人の渾然一体の演奏、一種の異種楽器バトルの激しい燃焼(炎)に、聴いていて火傷しそうになります。
そして、最後は「ファーンズワース」の超ド級のドラム・ソロで、必殺のKO負けを喰らう。
もんどりうって聴いてくれ!!

2曲目「メイビー・セプテンバー」…は「アレクサンダー」が静寂のバラッドを吹き上げる。
ここでのこのカルテットの演奏は、まるで「マイルス・クインテット・マラソン・セッション」の1アルバムの様に、青白く燃えている気品高い演奏です。
「アレキサンダー」のテナーと絡み合う「メイバーン」の伴奏の気高さとセンスの良さも魅力充分。
中間からは、「アレキサンダー」は、音を抑制している物の、「コルトレーン」の「シーツ・オブ・サウンド」を連想させる、ノン・ブレス奏法が聴き所でしょう。
「マイルス」と「コルトレーン」のバラード・アルバムの良いとこ取りのベスト・トラックです。
終盤の「メイバーン」のセンチメンタルな、哀愁一杯のアドリブ・ソロ…良いですねぇ。最高ですねぇ。
聴いていて、本当にうっとりしちゃいます。

3曲目「イン・ザ~」全員が高速で突き進むトラックですが、バリバリ吹き捲る「アレキサンダー」、ガンガンとブロックコードで高速に合わす「メイバーン」、そして皆を煽る「ファーンズワース」も然ることながら、この高速にピタッとついて、タイトにベースを引き続ける「リーブス」が影のMVP級の活躍でしょう。
そして終盤での「メイバーン」の超高速ブロック・コードと「アレキサンダー」のテナー、「アート・ブレイキー」か?はたまた「フィリー・ジョー」か?と思わせる程の、超絶技巧で敲き捲る、「ファーズワース」のバトルロワイヤル的な4人の掛け合いが最高の聴き所です。

4曲目「エドワード・リー」…マイナー・チューン大好きな私には、モロにストライクゾーンに来た佳曲ストレートです。
ここで「メイバーン」は、何と「マイ・フェイバリット・シングス」を崩したアドリブ・ソロを含めて、好フレーズのオンパレード…噴水から出る水の如く、弾き捲ります。
この演奏の感じ…「コルトレーン・カルテット」時の「マッコイ」に雰囲気が良く似てるなぁ。
ただ、「マッコイ」の方が演奏、音ともやはり硬派だ。
「メイバーン」は、元来ラテン、スタンダード好きと言う事もあり、演奏に遊びや洒落が「マッコイ」よりは有るので、ここでの演奏に寛ぎが感じられる。
後半では「アレキサンダー」が激しくブロウし、「メイバーン」がそれを上手にサポートしつつ受け流す…。
「リーブス」のタイトなベース・リズムがサビになっているし、「ファーンズワース」はここでも、決め手一発をぶちかましてくれます。
しかし4人が対等に渡り合った素晴らしいトラックですね。

5曲目「バークリーズ~」…「コルトレーン&エリントン」の「イン・ア・センチメンタル・ムード」を彷彿させる、煌きのピアノ・メロディ・フレーズの序奏を経て、「アレキサンダー」が伸びやかに、ストレートにテナーを吹き通す。
しかしながら、この「メイバーン」のピアノ・アドリブ…いや、アドリブと言うよりも正しくカデンツァだ。
このカデンツァ…テクニックと情感のバランスが極めて高いステージで融合しており、本当に魅力に溢れていて、心を打ちますね。
最後のピアノとテナーのデュオの様な演奏に何を見るでしょう?

6曲目…「スタンダーズ~」は、エンディングを飾るに相応しいR&B曲で、聴いているとファイトが湧いてくる。
最後らしく、演奏者皆も慣れたと言うか、演奏にかなり余裕が感じられて、「アレキサンダー」は伸び伸びとテナーを鳴らし、「メイバーン」は演奏から笑顔が絶えないのが分かるくらい、跳ねた演奏に聴こえる。
聴衆もノリノリになって、4人が形成する宴が、ピークに達しているのが非常に良く分かります。
やっぱり、アメリカ人ってブルース大好きなんだよねぇ。
終盤の「メイバーン」のブロック・コード&ブルース・シングル・トーンの弾き捲り…見事です。最高です。聴衆もノリノリです。とにかくすごいの一言です。
「リーブス」のソロも渋くて素敵だし、「ファーンズワース」も決めてくれます。
最後のメンバー紹介も誠に乙だね。

ボーナス・トラックの「アローン・トゥゲザー」…「ハロルド・メイバーン・トリオ」の、素晴らしい実力が堪能できます。
「リーブス」の朴訥としたソロ・ワークに、嘗ての名人「ポール・チェンバース」の面影が脳裏を過ぎる。
この演奏の主役は、間違いなく「リーブス」ですよ。
相方「メイバーン」は、転がす様に素敵系のフレーズ連発で、ピアノ・センスを余すことなく放出します。
しかし、気の良い親父だ!絶対に出し惜しみなんかしないもんなぁ。

奇跡のライヴ演奏…本当に実際に聴いて見たかったなぁ。(合掌)


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