紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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夭逝の超天才…ディヌ・リパッティ~グリーグ&シューマンピアノ協奏曲

2007-08-12 23:47:59 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日は何かピアノコンチェルトを聴きたくなって、あまりにも名盤ですがこのアルバムを選びました。
有り余る才能と演奏技術を持ちながら、病のためにわずか33歳で天に召された、悲劇の天才ピアニスト「ディヌ・リパッティ」の人気協奏曲のカップリング・アルバムです。

録音は本当に古い音源ですが、彼の演奏の素晴らしさは感じて取れますので、聴いた事の無い方は是非ご視聴下さい。
それでは紹介しましょう。

アルバムタイトル…ディヌ・リパッティ(ピアノ)、グリーグ・ピアノ協奏曲イ短調 作品16&シューマン・ピアノ協奏曲イ短調 作品54
指揮 アルチェオ・ガリエラ(グリーグ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(シューマン) フィルハーモニア管弦楽団

曲目…グリーグ・ピアノ協奏曲イ短調 作品16
1.第1楽章:アレグロ・モルト・モデラート
2.第2楽章:アダージョ
3.第3楽章:アレグロ・モデラート・モルト・エ・マルカート~アンダンテ・マエストーソ
   シューマン・ピアノ協奏曲イ短調 作品54
4.第1楽章:アレグロ・アフェトゥオーソ
5.第2楽章:インテルメッツオ アンダンティーノ・グラツィオーソ
6.第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ

パーソネル…ディヌ・リパッティ(ピアノ)
      指揮;アルチェオ・ガリエラ(グリーグ)1~3曲
      指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン(シューマン) 
      フィルハーモニア管弦楽団

1947年9月(グリーグ) 1948年4月(シューマン) 録音

英EMI・レコード原盤
CDナンバー…TOCEー59176

演奏について…「リパッティ」の演奏について、この曲・演奏は誰のが一番優れていて、「リパッティ」はこのレベルだろう云々等と言う、下衆な解説や紹介は全く必要ない。
と言うのも、彼の演奏・個性は唯一無二であり、彼亡き後も誰も真似できないスタイルだからです。

彼のスタイルを出来るだけ簡潔に言うならば、19世紀のロマンティズムを、優れた演奏技術で見事に再現した演奏美・演奏家とでも言えば良いのかな。
言うなれば、後期ロマン派の最後の生き残り的な人なんだと思う。
演奏技術について言えば、超絶技巧と言えば「マウリツィオ・ポリーニ」の方が上だと思うし、ヴィルトオーゾで言えば「ヴラジミール・ホロヴィッツ」の方が遥かに上だろう。
しかし、彼等スーパー・ピアニストでさえも「リパッティ」に敵わない事がある。

一つは「気品(貴賓)」である。
とにかく演奏自体に、常に芳醇な気品が漂っていて、クラシック音楽が王侯貴族の娯楽だった、正しくその時代にタイムスリップさせられる様な、高貴な装いが感じられる演奏なんです。

それから「間・空間の美学」が素晴らしい。
いかにも西洋全とした王侯貴族の娯楽音楽なのだが、日本人の琴線に触れる「間」つまり演奏自体に、えもいえぬ「わび・さび」がある。
これは、彼が幼少の頃から非常に病弱な人だった事もあって、常日頃「死」と言う概念に実は捉われていたのかも知れず、その精神状態から来た物だろう。
死に場所を探す「武士道精神」を知らず知らずの内に身につけたのかもしれない。

それから3つめが「お人柄」が、とにかく素晴らしい方だった(らしい)。
諸説によると、彼は聖者の様な方であり、知人・友人は言うに及ばず、師匠の「コルトー」、「ブーランジェ」、「ミンシュ」、「メニューイン」等からも可愛がられて、とても謙虚なそれでいて演奏に対しては非常にストイックな演奏家だった。

これらの人物背景から、この2大協奏曲の演奏も大凡想像が付く事でしょう。
どちらの曲もゆったりとしたリズムで、気品に満ち溢れたロマンティックな演奏で、取分け「緩楽章」の表現は筆舌し難い程に美しい。
演奏テクニックでの美しさだけでなく、内面から滲み出てくる「究極の美演」です。
しかし、美しいだけではありません。
しっかりとしたテクニックに裏付された、ディナーミクや雄大な表現もバッチリとなされており、曲の知情意のバランスも素晴らしいです。

そして、伴奏する指揮者も、二人それぞれ「ガリエラ」「カラヤン」が大袈裟にならずに中庸の美学的な演奏で、名ピアニストをしっかりとサポートしています。

録音は確かに悪いですが、是非とも皆さんに一度は聴いて頂きたい「正真正銘の名演」です。
 


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウルトラセブンとリパッティ (木曽のあばら屋)
2007-08-13 17:19:23
こんにちは。
1968年「ウルトラセブン」の最終回で、
モロボシ・ダンがアンヌ隊員に向かって正体を明かすシーンで流れたのが、
このリパッティ/カラヤンのシューマンであることは
有名ですね。
緊張と気品あふれるこの演奏なればこそ、視聴者に強い印象を残し
いまだに語り草になっています。
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