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毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

タナ・フレンチ 『悪意の森』

2010年01月23日 14時34分55秒 | 図書館で借りた本
 いやいや、聞きしに勝る主人公のダメ男ぶりに、嫌悪感というよりも親近感を抱いてしまいました。

図書館で借りる前に、ネットでどんな内容なのかしら?と検索したんですね。そしたら、面白いのなんの、目にする感想のほとんどが主人公のへたれぶりをこき下ろしているのですよ(笑)

例として、密林の書評から一部引用。

Amazon.co.jp: 悪意の森〈上〉 (集英社文庫): タナ フレンチ, Tana French, 安藤 由紀子: 本

>それにしても後半の主人公のヘタレっぷりはすごかった…あそこまでつきぬけていると、ある意味感心さえしてしまいました。作者の趣味なのかな…

>下巻の途中から引き込まれていき最後まで一気に読みましたが、読後感はよくないです。 主人公のロブはボンクラ刑事で大きなドジを踏んでしまいます。 主人公が間抜けに描かれているミステリー小説は初めて読みました。

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あっはっは凄い言われようだ~♪と興味深深で読んだら、本当に心底ダメ男だったんですよ(爆)ただ、これはもう作者さんのキャラ造形の勝利だと思うんですね。

スーパーヒーロー的な、完全無欠の主人公を据えて成功している作品は数多くありますが、この作品では、主人公の「人間的な弱さ」が、逆にとても身近に感じるのです。自分自身や、周りに居る人たちと重なる部分があって、普通はこういう行動を取っても仕方ないよね、と思ってしまうんですよ。

事件の犯人&真犯人も、あァ、こういう子居るよなァと思うし(そんな恐い事!と言われそうだけれども、女子の皆さんは共感してもらえると思います)最後のあたりで、真犯人の父親が「おれはどうすればよかったと思う?」と主人公に問う言葉が、それまでの出来事を振り返らせて、ぐっと重さを増して圧し掛かってくるのを、ひりひりと感じられます。

物語がごちゃごちゃしている感は最後まで拭えなくて、コレ本当に*数々の文学賞の新人賞を総なめにしたの?!と不思議な気持ちになったんですが、才能のエッセンスを感じるという点で新人賞なんだろうなァと思いまそた。これから成長が期待ができるのかも、という作家さんでありました。

*文庫の訳者あとがきから引用
 「アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)」「アンソニー賞」「バリー賞」「マカビティ賞」「IVCAクラリオン賞」「ストランド・マガジン賞」「アイリッシュ・ブック賞」・・・などなど、いずれも最優秀新人賞の栄誉に輝いた。


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