チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

チェロの「脱力」の本当の意味

2018年10月09日 23時17分13秒 | レッスン

チェロ師匠のレッスンに復帰したことで、分かってきたことが沢山ある。
11年前、師匠に教わり始めたころから3年間は、解放弦でのボーイングしかやらせてもらえなかった。
常に「力を抜いて」「楽に弾いて」と、「脱力」だけには厳しい指導をしてもらったが
今にして、ようやく チェロの全ての技術が「脱力」の一点でつながり、大きな意味を持っていることを実感できるようになってきた。

脱力するということは、呼吸を楽にし、肩の力を抜き、弓を持つ右手の力みを解放し、
ネックを持つ左手の力を抜き、弓を押さえつけず、力まずにボーイングすること。

では「脱力」は何のためにするの?と改めて問うてみると・・・
今までは「体を楽にするため」とか「年齢を重ねてもチェロを続けられるため」
という風に受け止めてきたが 全く違っていた。それは大いなる勘違いだったのだ。

答えは、脱力とは「豊かに美しく、朗々とチェロを演奏をするため」ということ。
なぜそうなるかを 簡潔に説明するのはが難しい。
11年かかって「脱力」が全ての技術に繋がっているベースだと感じられてきた段階なので・・

逆に「脱力しないと」と何が問題になるかを説明できそうだ

脱力しないと、まず弓が弦に押し付けられるので、音が汚くなる
脱力しないと、毛が弦を噛まないので、上滑りになる、大きい音が出ない
脱力しないと、弓を返す時に、弓が弦に弾かれてしまい、噛んでいた毛が外れてしまう
脱力しないと、握りしめた弓では大きく鳴らせない(振幅が出ない)
脱力しないと、ボーイングの弾き始めで押し付けるので、不要なアクセントが出る
脱力しないと、ボーイングの速度が一定にならない
脱力しないと、ネックを握りしめるので、左手の運動が自由にならない
脱力しないと、左手が硬くなり、ビブラートが大きくかからない
脱力しないと、結局チェロそのものが”萎縮”して鳴らなくなってゆく

書き連ねればまだまだあるのだが、要するに「脱力」した状態で演奏ができないと
使い物にならないチェロ演奏になるし、チェロそのものもますます鳴らなくなるのだ。
今思うのは「脱力」の核心部分は、力を抜かないと『毛が弦を噛まなくなる』ことだ。

さて、これまで気づかなかったことに気づけた理由には、10年のキャリアもあるが
はっきりと、脱力の意味を感じた瞬間があった。
それはレッスンで仮称 ”ピノキオ奏法” を体験したときかもしれない。

レッスンの前半では、師匠があの手この手で脱力をさせようとしてくれ、おかげで
ようやく全身から力が抜け、僕が弓を軽く構えてG線に置いたときのことだった。
師匠が突然、僕の右ひじを軽く押したのだ(なんとなく放り投げられた感覚だった)
すると肩から下の腕全体が左にさっと動き、チェロが大きな音で鳴った。
弓が自然に止まったところで、今度は肘の内側を押し返したら、またチェロが大きく鳴った。
つまり、自然なアップボーイングとダウンボ-イングが出来たのだった。

自分は軽く弓を持って構え、弓にほとんど圧力を加えていないのに、
弓の毛が、弦を咥えて行ったり来たりしているだけで チェロが豊かに鳴っている。
「ゼペット爺さん」に操られている「ピノキオ」になった気分で不思議だった。

その後、オケやアンサンブルで”ピノキオ奏法”から学んだ脱力を少しずつ取り入れてみているが
Vnなどの方から、いい音がするようになったと漏れ聞くと嬉しくなる。 

しかしながら、今週末に迫ったオケのコンサートではそんな気づきも通用しない事態に陥っている。

大好きなドボルザークの交響曲第8番などは何とか演奏できまでこぎつけたものの
最後に演奏するストラビンスキーの組曲「火の鳥」には、チェロのソロ部分が多く
今回はトップとして演奏しなければならないが、特に「皇女たちのロンド」では、
美しいオーボエとファゴットに挟まれたソロが不出来で、四苦八苦している。
(オケメンバー全体がチェロを心配しているのがヒシヒシと感じられる・・・)

さすがに見るに見かねているのだろう。これまで、基本練習しかしてくれなかった師匠も
「ソロの練習しましょうか」と言ってくれ、火の鳥の「皇女」のソロの特別指導をしてくれた。

とはいえ大師匠のこと、表現がどうの フレーズがどうのという「細かいこと」ではなく、
ひたすらに弾き始めの2音のみについて「本質的なこと」だけを、丸1時間徹底指導してくれた。

これは大変ありがたいレッスンだったが、その結果分かったのも「脱力」の徹底だった。
要約すると教えていただいたことは下記のようなことだったと思う。
1)肩から左親指までを楽にすることで、ポジション移動が手先ではなく腕先行ができるようになる
2)その結果、指先の重みがスムースに移動する事で、音色が見違えるほど変化する事を実感
3)脱力したボーイングで弾くことで、フレーズをゆっくり始められ、その後の速度も安定(一定)する
4)腕先行のポジション移動で余裕が生まれ、第3音をしっかり叩け、その後も落ち着いて演奏できる

理解したということと、「できる」ことは違うことは百も承知だが、今は実感も伴ってきている。
オケのメンバーも不安に思っているこの「皇女のロンド」部分を残り4日徹底してやってみたい。

みんなが安心し、師匠にも恥をかかせない演奏会になりますように!(祈り?)

 

コメント (4)
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