僕の胸に飼う小鳥



僕は胸に小鳥を飼って居た。
小鳥はいつも僕の胸で優しい声を聞かせてくれた。
僕は大切な小鳥を危ない奴らからずっと守り続けて居た。

小鳥はいつも歌ってた。
小鳥とのおしゃべりは楽しくて、時がすぐに過ぎた。
胸の小鳥の小さな重さが、僕はとても心地よかった。

僕は小鳥が大好きだったし
小鳥も僕が大好きだった。

ある時、春を告げる強い風が吹いた。

僕は、とんでもない事に気がついてしまった。
「僕は、小鳥の言葉を知らない。」

いつもおしゃべりしていた筈だった。
でも、僕は小鳥の言葉をしゃべれない。
小鳥も僕の言葉をしゃべれない。

今までどうやって話していたのだろう?
僕と小鳥・・・
思い出せない。

僕は小鳥を大切に守って来たし
小鳥は僕を大好きだった。

いつしか僕は小鳥を守ることの意味が
分からなくなっていた。
危ない奴らが誰なのか?
それすら思い出せなくなっていた。

僕は思い切って小鳥を外へ出そうと決めた。
僕は小鳥を守る胸の骨をポキッと折った。
「さあ、お行き」
なのに、小鳥は飛ぶ事を知らなかった。
いや、僕のことを心配していたのかもしれない。

春の優しい風が小鳥を呼んだ
小鳥はふわっと僕の胸から飛び立った。

僕は驚いた。
小鳥の姿を見たことが無かったことに
僕は驚いた。
「君はそんな姿をしていたの?」

僕のいつも見ている青い空を
初めて見る小鳥は悠々と飛んでいた。

あんなにも仲良しで、大切な小鳥の事を
僕は何も知らなかった。

青い空の中の小鳥はとても眩しかった。

僕の胸にも風が吹いた。
初めて心に風がいっきに吹き抜けた。
すがすがしい風が通り過ぎた。

僕の小鳥はもう小鳥ではなかった。
僕が守りたいと思っていた小鳥は
広い大きな空を飛び、
何処へでも行ける自由な羽を持っていた。

また風が吹き込んだ。
僕の折れた胸の骨の隙間から
勢い良く自由の風が吹き込んだ。

小鳥は自由になり
僕も少しだけ大人になった。

そして、僕は知った。
少しだけ大人になった僕は知った。
小鳥は臆病な僕の小さな心だった事を・・・

        ・・・おわり・・・

これは、先日、風の丘(セラヴィより車で10分)にての
神岡学先生の個展での木人形を撮影したものです。
いたずらに管理人の想いを書いちゃいました。

セラヴィのお客様もここへ行かれた方が多かったようでした。
どんなお気持ちでこの木人形をご覧になったのでしょう?
みんなそれぞれの想いで風の丘をご観覧なさった事でしょう。

今回もとても素敵な個展でした。
神岡先生ありがとう!!
それから大事な木人形お借りしてごめんなさい。
2度楽しませて頂いちゃいました。

神岡学と神岡衣絵の空想美術館
http://www.k-museum.jp/
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