Diary of Caviargirl

ホラー、ゾンビ、チェコ、虫、ヤドカリ、コマ撮り、ピンクな物事…キャビアガールの好奇心日記。

整形前夜

2009-05-27 01:07:44 | book
いつの間にやら入稿が始まり、そして先程脱稿。
ライターのみなさま、おつかれさまでした!
いつになくスムーズな入稿でした。
しかし、明日の会議の準備を何もしていない…。


入浴時間にちびちび読んでいた穂村弘さんの『整形前夜』をこのあいだ読み終わったのですが、かなり面白かったー。
穂村さんの本は、いままで2冊くらいしか読んでいないので、そんな私が言うのもなんだけど、これはずば抜けていい!
母に貸したら、このところあまり本を褒めない彼女も「面白い」と言っていた。
そして、今日帰りの電車でふと顔を上げたら、前に立っている女子(ちょい地味目な森ガール系)も読んでいた。

穂村さんの本は、以前から周りで人気だったのだけど、なかなか手がのびなかった。
というのも、私の苦手な、男の“俺ってダメな奴なんだよ自慢”系の本だと勝手に先入観を抱いていたから。
自分のダメエピソードを語りながら、“こんなダメな俺ってかっこよくね、逆に?”という気持ちやアピールがはっきりと透けてみえる人は、どうも苦手。ダメなもんはダメなんです。かっこよくはないんです。
ダメをダメとして、自分をかっこよく見せようとせずに語ってくれるなら好感がもてるし、そのエピソードが聞いていてとびきり笑えるものなら許せるのだけど。

穂村さんのエッセイ、最初は草食男子の香りが若干鼻についたのだけど、やっぱり言葉の選び方のセンスとか妄想力が優れている人の文章は面白い。

『整形前夜』でいちばん心に残ったのが、「共感と驚異」の項。
人間は、若い頃は、なんだかわからないものや無謀なものに惹かれるけれど、年をとるにつれて「お天道様にも雑草にも石ころにも感謝」的な穏やかな“共感”思想に傾くようになる、でも、最近は若者たちの間でも「ありのままの君でいいんだよ」といった“共感”を引き起こす言葉が氾濫している、という考察。

“「驚異」を求めて無謀な賭けに出る者がいなくなると世界は更新されなくなる。彼ら(近年の若者たち)の言葉の安らかさは、より大きな世界の滅びを予感させるのだ”(本より引用)

そうそうそう!と強くうなずきました。
身体的&精神的なダメージから自身を守るために、穏やかに穏やかに、波風立てず突飛なことはせず生きていこうとする風潮はあると思う。
社会的な背景もあるんだろうけど、(自分自身のことも含め)それってちょっとどうなのさ、と普段からぼんやり考えていたことを丁寧に文章に綴ってくださったようで、なんだかスッキリ。これからも、ときどき読み返したい一節です。

江戸川乱歩の項も良かった。
書きながら自分がその場面にうっとりしちゃってるって、たしかにっ!
「ああ、なんということでしょう!」とかいう感嘆文、よく出てくるもんなー。
考えてみれば、かなり独特な“乱歩節”。好きです。


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