無精髭

無精者の日記です

希望なくして生きられない・・・南相馬市 桜井市長

2012-03-03 22:12:46 | 日記
 3月1日、南相馬市の桜井市長の講演を聞くことが出来ました。
南相馬市は旧小高町・原町市・鹿島町の1市2町が合併して出来たのですが、原発事故で旧原町市の南部から小高町は20Km圏の警戒区域に、またその外の大半が30Kmの緊急時避難準備区域に入りました。 一番北側に位置する鹿島町は南の一部がこの30Km圏という一つの市が3分される結果となりました。 そんな中での震災発生から今日までの経験をはなされました。

 3.11の地震・津波の対応に追われていた中、12日には半径20Km圏内の住民に避難指示が出され14日には3号機が爆発、その爆発音は鹿島でさえ聞いた人がいたとか。
市では国からも県からも何の連絡、行動指示も得られない中15日から独自にバスを手配し市外への非難誘導を始めたそうです。 市長は市民の被曝の危険が迫る中必死に県との連絡を試みたもののなかなか電話がつながらず、やっとつながっても県の返事は「今対策を協議中」というばかりで誰も判断を下さず結局、市独自でバスの手配から避難先の手配、ガソリンの手配まですべてやらざるを得なかったということです。 住民の危機が迫っているのに誰も責任ある判断をしない国、県に対する強い憤りを話しました。 

 そしてその後市内に残った人々は食料を含め物資不足の危機に見舞われます。 被曝を恐れて誰も物資を搬入してくれないのです。 困った市長はある市民の提案を受けて「YOUTUBE」で世界に訴えます。 これが大きな反響を呼んで外国のメディアが入る、物資も徐々に入るなどして危機を脱したのですが、市長は原発震災後一斉に姿を消したマスコミの対応にジャーナリストの使命を忘れて何をしようとしていたのか、被害地域住民が一番困っている時に何の情報発信もせず、南相馬市から放射能汚染牛が出たとなったら大挙押しかけ被害農民を追及するような姿勢は許しがたい、と。 

 そういえばマスコミは原発事故に際して40Km以内には立ち入らない申し合わせをしたとか。 研究者の木村真三さんらが事故のあと15日ごろから現地(20Km圏内)に入りNHKスタッフとともに車で放射線量を測定したり汚染土壌のサンプル採取などをし道路に沿った汚染地図まで作成していたのにNHKは放送することを自粛し、放送したのは12月になってからでした。 こんな大災害時にマスコミの対応は大本営発表そのもので多くの国民の信頼を失いました。 国民が最も欲している風向きや放射能の汚染予測など日本発の情報が国内のマスコミからは語られず、ドイツやスエーデンなどのメディアを通してインターネットで日本に伝わっていたのです。 原子力安全保安院の海外メディアへの会見場では大本営発表に見切りをつけて誰もいなくなった会場で担当者が発表を続けていたという笑えない事態になっていたのです。

 話を戻します。 市長が最も危惧していることは、市民が避難によって全国にばらばらにされてしまったこと。 仮設住宅に住む高齢者夫妻は嫁さんと孫は県外に避難、息子さんは仕事で残り家族ばらばらにされて、ここ仮設住宅では死にたくない地元に帰りたい、家に帰って自殺したいと訴えられたといいます。 市民は避難地域割りによって警戒区域から30Km外の地域までに3分され、東電の保証金をめぐって分断され、仕事は奪われ、家族はばらばらにされ、個々人は自分の利害に振り回されて周りが見えなくされて相手を思いやる気持ちを失った。 こんな事態を引き起こしたのは東電の原発事故、決して許せない。 

 市の職員は震災後必死で復旧復興にむけて頑張ってきたが、いま100名を超える職員が早期退職を希望している。 その理由は子供の被曝を避けるための避難だったり、家族の介護などの事情もあるのだが、ストレスで多くの職員が精神的に参っている、つらい職務と市民からの心無い非難などで働き続けることが出来なくなっている人も少なくない。 というのです。 

 市は復興予算で今までの何倍もの仕事をしなければならない、ありがたいことに職員を派遣して応援してくれている自治体や、杉並区は5億円もの支援をしてくれ、いまも600人もの子供たちが募金を続けてくれているそうです。 今市民は生きる希望さえ失おうとしているが、希望なくしては人は生きられないし、決して希望がない訳ではない。 数兆円といわれる除染予算、これをゼネコンに渡すのではなく地元の雇用に生かす取り組みや原発をなくし新エネルギー基地として新たな南相馬市をつくりあげる、新しい形の職場をつくろうという取り組みもやれるのではないか。 世界に誇れる南相馬市の再生に力を合わせよう。 と結んだ市長に会場には静かな感動と共感がひろがったように感じられました。



  


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