前回のつづきです。 放射能に汚染されたヤマトシジミの生存率が落ちたり、奇形が発生していたことに前回はふれました。
琉球大学のメンバーはさらにこれが放射線被ばくの影響かどうかヤマトシジミに放射線をあてた実験を行い、生存率が被曝線量に応じて低下していることや、福島で起きたような形態異常率が高くなっていることがわかりました。
さらにメンバーは世代を超えて被曝の影響が出るのか、食べ物による内部被ばくの影響も調べています。 結論は放射能に汚染された食草(カタバミ)を食べたチョウは摂取量が少量でも生物学的影響が出ること、影響が継世代的であることが分かったといいます。
具体的には比較的低線量の沖縄・宇部市・熱海市・柏市が生存率が高く、次に広野町・本宮市が同じくらい、飯館村山間部・平野部・郡山市・福島市と比較的高線量の地域で生存率がさがってくるというように分かれました。 F1世代(子供)の結果をまとめると、汚染食物を与えると、異常率・死亡率が特定の値までは線量に応じて上昇します。 それを超えると、死亡率が横ばいか、やや下がり、ハネのサイズが小さくなる傾向があることがわかりました。
次世代への影響はF1が本宮市、郡山市のどちらのエサを食べていても、F2(孫)が沖縄のエサ(低線量)を食べると生存率が非常に高くなり約77パーセントから90パーセントが生き残りました。
しかし親が沖縄県の食草を食べていても郡山市の食草を食べた子供、または2世代続けて郡山市の食草を食べた場合の生存率はそれぞれ、20,9%、21,2%にとどまりました。 2世代続けて郡山市の食草を食べて育った場合は、生存率が0,8%しかないという結果になりました。
また生育状況をハネのサイズでみると親も子も郡山市の食草を食べた場合と本宮市の食草を食べた場合のオスとメスどちらも明らかに生育状況が悪いことがわかりました。
セシウム134と137の値を単純に加算してみますと非常に高い相関を示しました。
死亡率と摂取セシウムの関係は一定以上で飽和する傾向があり、3割程度は相当高いセシウム量に耐えうるようです。 全部死ぬというわけではないようです。 飯館のカタバミを食べても3割は生き残るということです。 このような生存に関する多様性が自然選択による進化につながって、最終的には耐性個体群を生み出す可能性を示しているのではないかということです。 しかし生き残った3割の成虫群は飛ぶ様子がとてももたもたしていたようです。 これらを異常とカウントすると汚染度の高い食物を食べたヤマトシジミはほぼ100%異常にカウントされるのではないか。
主要なところを抜書きしましたが、是非「DAYS」11月号を読んでください。 人間ばかりでなく自然は大きく傷つけられてしまいました。 この影響は今後も長い間幾世代にもわたって引き継がれて行くことでしょう。 私たちは注意深くこの自然環境の変化を見守っていく必要があります。
下記シンポジウムが開催されます。 上記のヤマトシジミの研究も報告されます。
<<飯舘村 放射能エコロジー研究会シンポジウム in 福島>>
日時:2014年12月7日(日)11:00~17:10
場所:福島県青少年会館 大研修室 (収容人数約200名)
参加費:無料 (どなたでもご参加いただけます)
参加申込:当日受付可 Web事前参加登録歓迎(登録はこちら)
※受付の混雑緩和のため、事前参加登録にご協力ください。
本シンポジウムの開催にあたっては、「公益財団法人大和証券福祉財団 平成26年度「第4回災害時ボランティア活動助成」の予算を使用しています。
※詳細につきましては、チラシ(PDFファイル)をご覧下さい。
プログラム
<開会あいさつ> 11:00-11:05
<第1部> 11:10-12:30 放射能の生物・生態影響
座長: 小澤祥司
◆汚染地域におけるヤマトシジミの異常率の推移(2011-2013)
大瀧丈二/琉球大学
◆放射線汚染地域のため池に棲むコイの健康状態
鈴木譲/元東京大学
◆放射線被曝によるサルへの影響
羽山伸一/日本獣医生命科学大学
質疑応答
<昼食休憩> 12:30-13:30
<第2部> 13:30-14:20 放射能汚染の実態解明と除染
座長:菅井益郎/國學院大學
◆飯舘村農林地の汚染と飯舘・浪江・山木屋の住宅内の放射能汚染の実態(除染後の評価)
糸長浩司/日本大学
◆飯舘村や浪江町赤宇木での放射能汚染調査の報告
今中哲二/京都大学
質疑応答
<休憩> 14:20-14:30
<第3部> 14:30-17:10 補償と生活再建の道を考える
座長: 糸長浩司/日本大学
◆飯舘村民の避難生活と生活再建意向
浦上健司/エコロジー・アーキスケープ、糸長研究室
◆補償と生活再建への思い
長谷川健一/飯舘村民、杉下初男/飯舘村民、市澤秀耕/飯舘村民、國分富夫/原発事故被害者相双の会
◆原発事故におけるADRの意味と展望
保田行雄/弁護士
討論
主催:飯舘村放射能エコロジー研究会/共催:NPO 法人エコロジー・アーキスケープ
協力団体:飯舘村後方支援チーム、京都大学原子炉実験所原子力安全研究グループ、原子力資料情報室、原発事故被害者相双の会、国際環境NGO FoEジャパン、市民エネルギー研究所、日本大学生物資源科学部糸長研究室、BIOCITY、ふぇみん婦人民主クラブ、福島から祝島へ~こども保養プロジェクトの会、福島の子どもたちとともに・湘南の会、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター家田研究室
協賛団体:認定NPO法人自然環境復元協会