昨年末ついに日本にも特定秘密法案が成立しました。
秘密法の先進国アメリカの現状をワシントンポスト紙に25年務めブッシュ政権時代にCIAの秘密収容所を暴いたレポートなどでピュリッツァー賞を2回受賞したジャーナリスト、デイナ・プリーストと元アメリカ陸軍情報局の分析官ウイリアム・アーキンが詳細綿密な調査によってアメリカの現状を暴きだした「トップシークレット・アメリカ」、「最高機密に覆われる国家」という本を出版し、玉置 悟氏が邦訳を発行しました。
「9・11以降テロとの戦いという大義名分のもとに、アメリカでは雨後の筍のように機密機関が生まれ、膨大な「最高機密」を扱うプログラムが立ち上げられた。 1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人以上の人間がなんらかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。 無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化したアメリカの現実を、ワシントンポストのベテラン記者らが精緻な取材によって暴き出す。
いずれ日本もこうなるのか!?」
この本のカバーに印刷された一文です。
9.11のテロによってパニックとなったアメリカは青天井の予算を機密関連機関に湯水のごとく垂れ流すことになったのです。 軍の情報組織、NSA・CIA・DIA・DEA・FBI・国家情報長官府などの情報機関、国土安全保障省、文民の政府組織などが一斉に各々組織の拡大膨張し上記の1200を超える政府組織、85万人以上の人員が機密機関で働くことになったのですから、その混乱ぶりは目をおおうばかりです。 トップシークレットを扱うはずの膨大な数の組織がそれぞれに国内外のあらゆる情報を集め、国内でも外国人はじめ各宗教団体、環境団体、ボランティア団体、動物愛護団体にたいしてのスパイ・監視活動、密告の奨励、インターネット、メール、ツイッター、電話の盗聴・監視、あらゆるところに設置される監視カメラなどなど、犯罪に関係あろうがなかろうがあらゆる個人情報が蓄積されている。
このような状態になるとこのトップシークレット情報にアクセスする資格をもち、情報の受け手となるがわも大変で様々な機関から流される情報の洪水にうんざりして誰もまともに情報を見られないという現状がうまれているという。 そうなるとこの膨大な情報を整理統合する組織が必要になりまた新たな組織が生まれる。 しかしこの組織も個々の組織の壁に阻まれ、またトップシークレットという性格から十分な情報を把握することができない。 もちろんこれら情報機関を監視するシステムをアメリカ議会はもっているが、ごく少数の限られた委員が秘書も補助者もなく特別に用意された部屋で、難解な報告書を読み、コピーはおろかメモもできず、この知りえた内容を他言することが禁じられているので、たとえ疑問が生じてもなんらの行動もできないという事態といいます。
日本でも安倍総理の肝いりで立ち上げた情報保全諮問会議ですが唯一の第3者機関というのに賛成派が過半数で明確な反対派は日弁連の清水氏のみ、しかも委員といえども肝心の秘密情報の内容は見られないというのですからどうにもなりません。
このように大組織を運用し莫大な国家財政と人員を動員して、アメリカは国際社会を巻き込んだ大失態を演じたのです。 本書から引用します。 「・・・そのよい例が「カーブボール」という暗号名で呼ばれたドイツ在住イラク人情報提供者の一件だ。 この男が、「サダム・フセインのイラクが大量破壊兵器を所有している」という作り話をドイツの情報機関に語り、それがアメリカ政府の判断に大きく影響したとされている。 だがこの男の素性は幾重もの厳重な機密に覆われていたため、十分な身上調査ができなかったというのだ。 2011年2月になって、ようやく「カーブボール」はイギリスの「ガーディアン」紙の取材に応じ、サダム・フセイン政権を潰したくてドイツ情報部に作り話をしたことを認めた。」
世界を巻き込み米軍も多数の死傷者をだし、ましてや無辜の数万のイラク国民を殺害したイラク戦争の根拠がこんなことだったなんて信じたくもありません。
民主主義を危うくする秘密保護法をなくすためにも是非ご一読をお勧めします。