国会の情勢が緊迫しています。 大震災・原発震災の対応が悪いという理由で自民党を中心に小沢・鳩山氏など民主党の一部を巻き込んで内閣不信任案が国会に提出され、成否は予断を許しません。
震災に苦しむ数多くの被災者を尻目に権力闘争にうつつを抜かすこの事態にはあきれるばかりです。 いったい倒閣への錦の御旗はあるのでしょうか。 確かに私もこのブログでも原発震災の対応について批判してきましたが、問題の多くは現在の電力護送軍団を築き上げてきた自公政権にあります。 原子力村を作り上げ、批判するものを排除し、電力各社がいかに大金を原発に投入しようが投入した資金に比例した利益を保障し、立地地域の住民や自治体を札束で従わせてきた総決算が原発事故隠し、情報隠しの発覚、から今回の原発震災に至る道筋だったことは今や誰の目にも明らかです。 それは百も承知のうえでその責任を今の政府・菅総理に押し付けることには疑問を感じざるを得ません。
倒閣の本当の理由はもっと別のところにあるのではないでしょうか。 政府は原発事故の賠償責任は東電にあるということを再三表明しています。 また浜岡原発の停止要請から停止へと一歩踏み込みました。 G8では再生可能エネルギーの20%までの拡大を表明しました。 さらにこれらを実現するために送配電部門の分離がまな板に載せられる事態に至っています。 これらの政策が実現に向かえば電力自由化の基盤がととのって自然エネルギー利用や電力の新規参入が本格的に進むでしょう。 そうなると金食い虫でしかも今後次第に運転停止に追い込まれようとしている原発や巨額の資金を投入しながら破綻した核燃料サイクルをかかえる電力各社は厳しい状況に追い込まれます。
今から10年前経済産業省で電力自由化が進められていました。 しかし電力側の巻き返しで形式的な一部の自由化が行われただけで、これを推進してきた経済産業省のプロジェクトチーム全員が左遷?の憂き目に遭いました。 電力自由化陣営の完敗でした。 もっともそもそもこの電力自由化が叫ばれたのは例によってアメリカの圧力でした。 アメリカのエネルギー卸売り会社がアメリカは元よりヨーロッパのエネルギー市場から日本まで触手を伸ばしてきたのです。 ところがこのエンロンが実業から虚業にはしりついに倒産し、それが日本の電力自由化までつぶしてしまったのです。 大きな政策のはじめも終わりもアメリカ頼みという日本らしいことの顛末だったわけです。 しかしこれによって日本のエネルギー政策は世界に大きく遅れをとることになりました。 再生可能エネルギーの進んだ技術力をもちながらも自国ではほとんど普及せずただただ自然エネルギーへの転換が進むヨーロッパのために日本企業は働くことになりました。 日本は原子力発電=高速増殖炉を中核とした夢の核燃料リサイクルの底なし沼に貴重な資金をつぎ込むことになりました。
菅総理の提起は好ましい方向に向かっているように見えます。 しかし問題はその唐突な提起のしかたでしょう。 貿易自由化問題でもそうでしたが重要な問題がろくに議論もなく唐突に提案されてもなかなか理解できません。 大きな政治的問題については時間をかけてじっくり国民全体で議論するような方向に進まないといつまでたっても民主主義は形式だけで、国民そっちのけのアメリカの風向きしだいの自民党流政治がつづいていきます。 民主党は初心にかえって「国民のための政治、生活優先の政治」にもどるべきではないでしょうか。 それを主張しているのが小沢さんというのも皮肉ですが・・・・。