もっと、早く知りたかった・・・

電車の乗り込むと美しい黒人男性と目が合った。

無意識ににっこり微笑んだ。

彼も美しい白い歯を輝かせにっこり微笑み返してくれた。

　

　あら？彼、まだ私のほう見てるような・・・

　目を合わせて、又二人は微笑んだ。
　


　　そして、私はあわてて目を伏せた。


　わたくし、もう3年近く英会話習ってますわよ。
　政治・経済・環境・趣味・哲学なんでも、話せるわ！！・・・・マシュー先生となら・・・・

　私は、マシューとしか英語を話せない・・・感がよくて、優しくて、忍耐強くて、私の事をよく理解して
くれている彼としか・・・・


どうか、神様この美しい黒人男性が私に、何か話しかけてきませんように・・・


あっ、彼立ちあがった、降りるのね・・・・彼を見ると、又微笑んでくれた。
　このまま乗り続ける私は（強気になって）、にっこり微笑み返した。


　彼の後姿を見送っていると・・・彼が振り返った。目が合った。

　彼は少し、歩き又振り返った。私も、彼を見ていた。

　最後、彼は手を振ってくれた。私も振り返した。


　電車のドアが閉まるまでのほんの2・３分。




　あれ？これなんかどっかで、聞き覚えのある場面・・・あれ？これって・・・・

　

”ねぇ、マシューどう思う？”
”完ぺきな、ナンパだよ！！！うわぁーーいちこ悪い子！！　ぼく、ちゃんと教えてあげたじゃない！！
　アメリカ人のナンパの仕方！！なんども見つめあって微笑んじゃ駄目ーー！！”

”話は、これで終わらないんだよねぇ・・・私たち再会してしまったの・・だって私、同じ電車、
　ほぼ同じ時間帯で、同じ車両に毎日乗って帰宅するんだもん・・。”


”うわぁぁぁ、どうしたの？どうしたの！！”
”今度は、彼から微笑んでくれたの。私もつられて微笑んじゃって、でもやばいって思って。
　急いで本を持ち上げて本読むふりしたの、ちゃんと彼に結婚指輪が見えるように。”
”こんどは、振り返らなかったの彼？”
”うーん、分からない・・だって又、見続けたら・・駄目でしょう？？”
”正しい判断だねぇ・・・”



　あーーーなんで、もっと若い頃、結婚する前にこの方法を知らなかったんだろう！！
　　どんなシャイな人だって、これなら出来るよねぇ。


　見つめる、見つめ返す。見つめる、見つめ返す。
　お互いに意思が通じてるのが分かってるなら、アドレス交換するのも楽だよねぇ。

　嫌なら、目をそらして下向けばいいし、そらされた方は、その場を立ち去るだけだよねぇ。


　まだ、マシューお腹抱えて笑ってる・・・
　
　うっぷぷぷぷ・・・・うぷぷぷぷ・・・笑いが止まらない・・・・
　
　”ねぇ、ところでなんで、話しかけられたら困るの？あー電車の中で英語聞きとり
　　難しいよねぇ・・”

　”ちがーーう。私は、あなたとしか話せないイングリシュスピーカーなの”

　”なんでだよーー、大丈夫だよ、沢山の人と会話しなくちゃ！！try!!
　　勇気を出して！！・・・・・・・ナンパは出来るのに！！”