犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

乾燥コオロギ

2017-11-08 23:16:44 | 食べる

 妻が日本語教室で知り合ったフランス人を自宅に招きました。

 その日のために、数日間、錆び付いたフランス語の復習をしました。

 駅に迎えにいったとき、車内で聞いてみました。

「エスク・ヴゥ・ビュベ・ドゥラルコール?(お酒は飲みますか?)」

「プレスク・ジャメ(ほとんど飲みません)」


「オー・デゾレー!(それは残念!)」


 晩餐のためにスパークリングワインや赤ワインを用意しておいたのですが…。

 フランスで蕎麦茶を販売しているというので、蕎麦が好きだろうと思い、蕎麦の実を使った料理や、妻の実家の島根の出雲蕎麦などもメニューに入れていました。

「昆虫食を研究しているんですか?」

「ええ、長野に行ったときに、蝗(いなご)の佃煮を食べて、とてもおいしいと思ったんです」


「ぼくも昆虫はいろいろ食べました」


 韓国のポンテギ、タイのバッタやタガメ、赤蟻の卵などのことを話題に出しましたが、意外にもあまりよく知らないらしい。

「これ、うちで作っているんです」

 差し出されたのは、小さな包み。開けてみると…。干からびた昆虫が現れました。

「コオロギですね」

「そう、コオロギ」


 私はさっそく1匹を口にほうりこみました。すると青年は、ぎょっとした顔つきに。

「そのまま食べても味はないでしょう?」

「確かに。本当はどうやって食べるんですか」


「ケーキなんかにトッピングするんです」


「ケーキに…」


 袋を見ると、カップケーキのようなものにトッピングされたイラストが描かれています。なんか蝿がたかっているように見えましたが。

(でも、これ、売れるのかなあ)

 会話の相手は、主に娘。昨年の語学研修の成果を発揮しています。

 お客様は飲まないのに、私は勝手にワインを飲んでいたので、だんだん酩酊状態に。普通なら饒舌になるところですが、フランス語が思うように出てこなくて、ミャンマー語やインドネシア語が混じったりしてしまう。

「お父さん、ちょっと飲み過ぎなんじゃない」

 娘にたしなめられました。

 娘のために、フランス語の個人教授をお願いしようと思っていましたが、青年は「自分のほうが日本語の勉強になっていい」といって、お金をもらうことは固辞。

 これからもときどきお茶に招待するということになったようです


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