徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

ちょっとおさらい - 気象通報式

 “霧”には幾つかの種類がありますが、そのうちの一つとして「“雲”(こちらも十雲形を基本にバラエティ豊か)の雲低が下がり地表面にまで達した」ことによるものがあります。

以前、“気象通報式”について稚拙な記事を何回か投稿しましたが、部分的ではありますが、ここいらでちょっとおさらいを。

この投稿の motivation は、昨日の広島空港の運航状況を、とある師匠(と小生が勝手に崇拝している御方)の日記で拝読したことからです。

タイトル画像に用いたのは羽田~福岡線で上空から撮影した広島空港ですが、このようにお天気が良ければ苦労はないのですが....。

それでは、先ずは、昨日(2月9日)の広島空港( ICAO Airport Code: RJOA )の気象通報式を以下にダラダラと並べました。
[出所は NOAA Aviation Weather Center, Aviation Digital Data Service(ADDS) です]

RJOA NIL
RJOA 091200Z 31005KT 240V050 3500 BR FEW003 BKN010 10/10 Q1009
RJOA 091121Z VRB03KT 2500 BR FEW000 SCT005 BKN010 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST005 5ST010 A2982
RJOA 091100Z 28006KT 260V330 2500 BCFG BR FEW000 SCT003 BKN006 10/10 Q1009
RJOA 091048Z 28004KT 2000 BCFG BR FEW000 SCT003 BKN005 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST003 5ST005 A2981
RJOA 091035Z 25003KT 1500 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN003 10/10 Q1009 RMK 1ST000 3ST001 5ST003 A2981
RJOA 091029Z 25003KT 0300 R10/P1800N FG -RA VV001 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 091023Z VRB03KT 0600 R10/P1800N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 091000Z VRB03KT 1800 -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN003 10/10 Q1009
RJOA 090947Z 27002KT 0600 R10/0600V1600U FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2981
RJOA 090938Z 25003KT 0600 R10/0550V0900D FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090930Z VRB03KT 0600 R10/0800V1400N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090921Z VRB03KT 0400 R10/0550V0900N FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090912Z 24004KT 180V280 0600 R10/0800V1800D FG -RA VV002 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090900Z 23004KT 190V280 0300 R10/0750VP1800U FG -RA VV001 10/10 Q1009
RJOA 090800Z VRB03KT 0100 R10/0450V0650D FG -RA VV001 10/10 Q1009
RJOA 090717Z 16002KT 0100 R10/0450V0650N FG -RA VV001 10/10 Q1009 RMK A2979
RJOA 090700Z 00000KT 0100 R10/1400VP1800U FG -DZ VV001 10/10 Q1009
RJOA 090645Z 00000KT 0100 R10/0450V0600N FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090631Z 20001KT 0100 R10/0550V1500D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2980
RJOA 090600Z VRB02KT 0100 R10/0350N FG -DZ VV001 10/10 Q1009
RJOA 090548Z VRB02KT 0100 R10/0400V0700D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090534Z VRB02KT 0200 R10/0550V1600D FG -DZ VV001 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090511Z VRB02KT 0400 R10/P1800N FG VV002 10/10 Q1009 RMK A2982
RJOA 090500Z VRB01KT 0800 R10/P1800N FG VV003 10/10 Q1009
RJOA 090447Z VRB01KT 0400 R10/0400VP1800U FG VV002 10/10 Q1010 RMK A2983
RJOA 090432Z VRB02KT 0100 R10/0250V1100D FG VV001 10/10 Q1010 RMK A2983
RJOA 090420Z VRB02KT 0200 R10/0550V1300D FG VV002 10/10 Q1010 RMK A2984
RJOA 090400Z VRB02KT 0500 R10/P1800N FG FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1010
RJOA 090343Z VRB02KT 0700 R10/0700VP1800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1010 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2985
RJOA 090316Z 15002KT 0300 R10/0600V1000U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2987
RJOA 090307Z 15002KT 0100 R10/0500V1100U FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011 RMK 1ST000 3ST001 5ST008 A2988
RJOA 090300Z VRB02KT 0100 R10/0550N FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1011
RJOA 090234Z VRB02KT 0500 R10/1000VP1800D FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2990
RJOA 090230Z VRB02KT 1000 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2990
RJOA 090200Z 12002KT 1400 R10/1200VP1800U -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1012
RJOA 090145Z 14003KT 0600 R10/0750V1200N FG -RA FEW000 SCT001 BKN008 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5ST008 A2992
RJOA 090100Z VRB01KT 1500 R10/P1800N -RA BCFG BR FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013
RJOA 090034Z 00000KT 0700 R10/0550VP1800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2993
RJOA 090031Z 00000KT 0700 R10/0500V0800U FG -RA FEW000 SCT001 BKN015 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5CU015 A2993
RJOA 090015Z VRB02KT 0600 R10/0350V0550N FG -RA FEW000 SCT001 BKN010 10/10 Q1013 RMK 1ST000 3ST001 5CU010 A2993
RJOA 090009Z 00000KT 0500 R10/0350V0500N FG -RA FEW000 SCT001 BKN005 10/10 Q1013 RMK 1ST000 4ST001 5ST005 A2994
RJOA 090000Z 00000KT 0300 R10/0350V0500U FG -RA VV002 09/09 Q1013
RJOA 082300Z VRB03KT 0100 R10/0250N FG -RA VV001 08/08 Q1013
RJOA 082200Z VRB02KT 0100 R10/0400V0550N FG VV001 08/08 Q1013
RJOA 082148Z 13004KT 110V220 0100 R10/0350V0650D FG VV002 07/07 Q1013 RMK A2992
RJOA 082145Z 16004KT 110V290 0100 R10/0400V1300D FG VV002 07/07 Q1013 RMK A2991
RJOA 082120Z 32006KT 0300 R10/0500VP1800U FG FEW000 SCT001 BKN050 10/10 Q1012 RMK 1ST000 3ST001 5SC050 A2991
RJOA 082110Z 31005KT 0300 R10/0500V0800D FG FEW000 SCT002 BKN050 10/10 Q1013 RMK 1ST000 3ST002 5SC050 A2992
RJOA NIL

広島空港 RJOA は、国土交通省航空局 CAB が管理する第2種空港で、標点 ARP: Airport Reference Point 標高は331m( 1086 feet )と中国山地の山岳部にあります。運用時間は〔日本時刻で〕07時30分~21時30分、気象観測の運用時間は〔日本時刻で〕06時00分~21時30分です。

(大阪航空局提供の広島空港の紹介は こちら

さて、昨日の気象通報式では日中の卓越視程は、午前10時( 090100Z )と午前11時( 090200Z )および同30分( 090230Z )に、それぞれ 1500m, 1400m, 1000m と 1000m 以上が報じられていますが、その他は全て 1000m 未満です。

卓越視程,方向視程,滑走路視距離のいずれかが 1600m 以下の場合には、気象光学観測機器を用いた滑走路視距離の観測が実施されます。
※観測装置は大別すると「透過率方式」と「前方散乱方式」の二種類があります。

昨日の卓越視程をみると、午後7時( 091000Z )には 1800m、また同48分( 091048Z )に 2000m 、午後8時( 091100Z )に 2500m、それ以降は 2500m 以上を報じていますが、その他は 1600m 以下ですから、滑走路視距離 RVR の観測結果が報じられています。

卓越視程と現在天気の間に報じられているのが“滑走路視距離”です。

“滑走路視距離”とは、
  滑走路中心線上にある航空機のパイロット(パイロットの目線位置 Pilot Eye Level は滑走路面上5mを想定)が滑走路面の標識または滑走路の輪郭を示す灯火を見ることができる最大距離

  Runway visual range (RVR). The range over which the pilot of an aircraft on the center line of a runway can see the runway surfece marking or the lights delineating the runway or identifying its center line. [ ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation CHAPTER 1. DEFINITIONS より]

ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation - Fifteenth Eddition


と定義されており、実際に着陸に使用されている滑走路の接地帯を代表する値が通報されます(通報されるのは最大で4群まで)。

 Rに続いて滑走路番号、斜線(/)、4桁で示した10分間の平均RVR値、変化傾向を表す記号

により表されます。

昨日の広島空港は、精密進入方式による Runway 10 が着陸滑走路として使用されていたため、RVRの通報は
 R10/[P or M]nnnn[V[P or M]nnnn][U, D or N]
の形式をとります。

斜線(/)の直後に P または M が記されて4桁の数字が報じられる場合があります。

この P または M は、観測値が観測機器の性能範囲から外れている場合に報じられ、
 -性能範囲の上限を上回っている場合には、Pに続いて測定範囲の上限値
 -性能範囲を下限を下回っている場合には、Mに続いて測定範囲の下限値
が示されます。

  R10/P1800 と報じられている時刻が幾つかありますが、この通報より広島空港 Runway 10 に設置されたRVR観測機器の上限値が1800mであり、当該報告がなされているときの観測値は、1800mを上回っていた、ということになります。

RJOA 082110Z の通報式のように、四桁の観測値の直後に V を伴い [P or M]nnnn の値が通報されている場合が多く見うけられます。

この [P or M]nnnnV[P or M]nnnn は、RVRの観測値が安定していなかった(定常的でなかった)場合です。

具体的には、観測時刻前10分間における1分間の平均値の極値が、10分間の平均値よりある一定値(=50mまたは10分間の平均値に0.2を乗じた値のどちらか大きいほう)を超えて変動している場合には、
 10分間の平均値ではなく、1分間平均値の最小値と最大値が報じられます。

つまり、RJOA 082110Z 31005KT 0300 R10/0500V0800D は、

2100Z(午前6時)から 2110Z(午前6時10分)までの10分間の観測において、1分間の平均値の極値が10分間の平均値よりも一定値を超える変動を示したので、1分間平均の最小値は500m、最大値は800mであったことを示しています。

【例】仮に10分間の平均値が600mであった場合、0.2を乗じた値は120mとなり50mよりも大きいので、120mが判定基準値となり、1分間の平均値の変動幅が120mを超えていた場合には、
 [P or M] 一分間平均の最小値 V [P or M] 一分間平均の最大値
と通報をしなければなりません。

昨日の広島空港、[P or M]nnnnV[P or M]nnnn のフォーマットが多かったということは、「定常的に視界が悪い」というよりは「RVRがころころと変る、見えたり見えなかったりが激しい状況」であったと言えます。

“滑走路視距離”の最後の項目は、「変化傾向」です。

RVRの変動が激しいことと共に、RVRが“悪化傾向”にあるのか“回復傾向”にあるのか、それとも“さして変化無し”なのかは、運航上の考察・判断において重要なファクターになります。

RVR通報の最後に、UD または N を付加して、RVRの変化傾向を報じます。
※末尾に U, D, N が付加されていない場合、それは変化傾向が不明であることを示しています。

具体的には、 観測時刻前10分間を前半の5分間と後半の5分間に別け、それぞれ5分間の平均値の差に応じ;
 -N:それぞれの差は100m未満。
 -U:後半5分の平均値は前半5分のそれより100m以上上昇した(良くなった)。
 -D:後半5分の平均値は前半5分のそれより100m以上下降した(悪くなった)。

これらの知識があれば、昨日の広島空港の“滑走路視距離”を読み取れると思います。



「おさらい」ついでに、“現在天気”の項についても少々。

“現在天気”は、雷電等の特殊な気象現象を除き、
  飛行場とその周辺(半径約10km以内)の運航上重要な気象現象について、
   天気略号を適切に組み合わせて、重要な順に最大3群まで通報されます。
  ※天気現象が天気略語のいずれにも該当しない場合には省略される。

昨日の広島空港では、「視程障害現象」に区分される FG (Fog) “霧”は当たり前ながら多いですね。

-b) Obscurations (hydrometeors)
 FG (Fog) :“霧”、視程1000m未満
   Reported when visibility is less than 1000m, except when qualified by "MI", "BC", "PR" or "VC".
 BR (Mist) :“もや”、視程1000m以上5000m未満
   Reported when visibility is at least 1000m but not more than 5000m.

「降水現象」としては RADZ が報じられています。

-a) Precipitation
 DZ (Drizzle) :霧雨
 RA (Rain) :雨

 降水現象には「強度」を組み合わせて示すことが出来るので、それぞれの記号の前に - が付いている場合は当該現象が“弱( light )”であることを示し、無記号のときは“並”( moderate )であることを示しています。

[ICAO Annex 3 Meteorological Service for International Air Navigation Appendix 3 より]
Recommendation.In local routine and special reports and in METAR and SPECI, the relevant intensity or, as appropriate, the proximity to the aerodrome of the reported present weather phenomena should be indecated as follos:
 (local routine and
special reports)
(METAR and SPECI)
LightFBL
ModerateMOD 
HeavyHVY

Used only with DZ, GR, GS, PL, RA, SG and SN (or in combinations involving these present weather types; in these cases, intensity refers to precipitation in accordance with 4.4.2.6); DS and SS (in the case of DS and SS, only moderate and heavy intensities to be indicated).

BCFG との通報がありますが、その BC は「特性記号」に該当します。

 BC (Patches) :散在している
   Fog patches randomly covering the aerodrome.
 MI (Shallow) :地表面浅く
   Less than 2 m (6 ft) above ground level.
 PR (Partial) :部分的な
   A substantial part of the aerodrome covered by fog while the remainder is clear

本文の文字数も9900文字を超え、限界が近いのできょうはここまでです。

Comment ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« ヨーロッパの...PAXの「み... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。