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MPO内のチロシルラジカル

2013-03-04 15:31:57 | ESR

MPO内のチロシルラジカルが初めて観測されたのはそんなに古い話ではない。ペルオキシダーゼは骨髄で産生される顆粒球系および単球系の細胞質に含まれる酵素であり、骨髄のmyeloをperoxidaseの頭につけてmyeloperoxidase(MPO)と呼ばれる。MPOはH2O2を細胞質内のハロゲン化合物halide(KCIやKIなど)に反応させてペルオキシダーゼ作用を発揮し、

        MPO
KCl+H2O2  →  K++ClO-+H2O

のようにClO-(次亜塩素酸塩)をつくる。

 

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図1  Three-dimensional structure of a myeloperoxidase (MPO) homodimer. Highlighted are the heme centers (red), α-helices (green) and β-sheets (yellow) (modified from Zeng & Fenna, 1992, deposited in PubMed).

 

ClO-は強い酸化・漂白作用を示し、貪食や殺菌の生理的機能を営む。ヒトではMPO遺伝子にコードされている。この酵素は好中球に多く存在する。リソソームタンパクの一種であり、好中球ではアズール顆粒に蓄えられる。MPOはヘム色素を持ち、大量に分泌されると膿や粘液を緑に染めることがある。MPOタンパクはおよそ150kDaで、15kDaの軽鎖2本と、グリコシル化され、補欠分子ヘムが結合した重鎖2本からなる二量体である。重鎖の大きさのみが異なる3つのアイソフォームが存在する。7配位、五方両錐形をとるカルシウム結合部位を持つが、このカルシウムは酵素活性に重要である。配位子の内1つがAsp96のカルボキシル基であり、活性中心のHis95に隣接しているためである。MPOは好中球の呼吸バースト中に、過酸化水素と塩化物イオンから次亜塩素酸(HOCl)(またはそのハロゲン等価体)を生産する。このとき補因子としてヘムが必要である。また、過酸化水素を用いてチロシンをチロシルラジカルに酸化することもできる。次亜塩素酸やチロシルラジカルには細胞毒性があり、細菌などの病原体を殺菌する。アジ化物は長い間MPO阻害剤として使われてきたが、4-アミノ安息香酸ヒドラジド(4-ABH)はさらに特異性の高い阻害剤であることが分かった。ヒトでは17番染色体に乗っている(17q23.1)。

 

ミエロペルオキシダーゼ欠損症はこの酵素の遺伝的欠損であり、免疫不全の症状を呈する。最近の研究により、MPOレベルと冠動脈疾患の重症度が相関することが分かった。これは、ミエロペルオキシダーゼが動脈硬化の病変と粥腫の不安定性に重要な役割を持つことを示唆する。2003年の研究で、胸痛のある患者に対する、鋭敏な心筋梗塞の予測因子としてMPOを用いる、という可能性が示唆された。それ以来、MPOテストの実用化に向けて100以上の論文が発表されている。Heslop等による最近の研究によると、MPOレベルの上昇は、その後13年間での心疾患による死亡リスクを2倍にする。また、MPOとCRP(C反応性蛋白)を同時に評価することで、CRP単体よりも正確なリスクの予測が可能だった。MPOによる免疫染色は急性骨髄性白血病の診断において、細胞が骨髄由来であることを示すのに用いられる。だが、最近はより簡便な方法としてフローサイトメトリーがある。また、骨髄性肉腫はMPO染色陽性だが、リンパ腫は陰性である。この2つの疾患は見かけ上類似しているため、この鑑別にMPO染色は重要である。

 

PDB1D7W; Blair-Johnson M, Fiedler T, Fenna R (November 2001), “Human myeloperoxidase: structure of a cyanide complex and its interaction with bromide and thiocyanate substrates at 1.9 Å resolution”, Biochemistry 40 (46): 13990?7, doi:10.1021/bi0111808, PMID 11705390。

 

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