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今日もArt & Science

写真付きで日記や趣味を勝手気ままに書くつもり!
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しのぎを削る有機EL最前線

2016-01-10 10:12:43 | ラジカル

しのぎを削る有機EL 最前線

日経は昨年末12月11日、Apple社が3年後にはiPhoneに有機ELディスプレーを採用と報じた1)。韓国のLG社とSamsung社が有機ELディスプレーの供給メーカーとしてその動向が注目されている。LG社はテレビ向けの大型有機ELパネル、腕時計型のウエアラブル端末「Apple Watch」がある。Samsung 社は、スマホ用の有機ELパネルで圧倒的な実績を持つ。Galaxyは世界で最も販売台数の多いスマホであり、規模ではiPhoneをしのぐ。やっと、有機ラジカルの時代が到来した感がある。ビラジカルを発光子として用いると、有機ELの飛躍的な機能向上が期待される。まず、長波長発光が実現できる。一重項閉殻種の炭化水素を発光子とした有機EL 素子は長波長発光を得ることが難しい。解決法としては蛍光よりもより長波長の燐光を利用して、発光材にIr 錯体などを用いる。または、単純に大きなp電子系を利用し,HOMO‐LUMO のエネルギー差を小さくする。さらに,Stokes シフトが大きい系を採用して,LUMO のエネルギー準位を下げる方法もある。図1に、大阪府大池田研の研究成果を紹介する。発光子1aの特徴は32a・・*を,繰り返し発生できることにある。一方, 32・・*のように基底状態が三重項(T0)(ビラジカル)の場合には,その励起状態の励起三重項(T1)と T0 間のスピン許容遷移による蛍光をELとすることが可能で,最大100%の内部量子効率も期待できる。通常の有機EL 素子で起こるホールと電子の再結合では,一重項励起子と三重項励起子がそれぞれ25%と75%の割合で生成する。励起一重項(S1)→基底一重項(S0)のスピン許容遷移を利用する蛍光型有機EL では,燐光を無駄にしている。32・・*のように基底状態が三重項であるビラジカルの場合には,T1→ T0 のスピン許容遷移による蛍光をELとすることが可能で,最大100%の内部量子効率が期待できる。有機ELの最大の課題は耐久性であり,発光低下の原因としてOREL発光材の分解反応が挙げられる。1 の分解反応には1・+のほかに,2・+32・・*32・・が介在するため,分解反応が多岐に亘る。しかし,1の転位反応には,32・・*の発光後に生成した32・・1を再生する。即ち、32・・の下半分のアリル部のラジカルは上半分のジフェニルメチル部のラジカルと再結合し,1aを再生する。ORELは発光子である励起ビラジカル32a・・*を必要なときにだけ繰り返し生成することができる。今後、国内外でどのような展開が待ち受けているか楽しみである。

http://www.chem.osakafu-u.ac.jp/ohka/ohka5/ikeda/13_kagakutokougyou_ORLED.pdf

(図1) ORELの反応機構1)。(上)OREL素子中で起こる1の化学反応(メチレンシクロプロパン転位)のイメージ図。(下)ジフェニル体1a32a・・*の構造

 

 

参考文献、1)池田浩、松井康哲,化学と工業、Vol.67 4月号、335(2014)

 


有機ラジカル電池は大化けするか?

2015-06-22 15:11:14 | ラジカル

2001年、早稲田大とNECは種々の安定ラジカルの電気化学評価を基にして、お馴染みの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N -オキシル(TEMPO)が、酸化還元の安定性に優れていることを見出した。TEMPOはラジカル状態とオキソアンモニウム(NOカチオン)間で安定して酸化還元を繰り返すことができる。酸化還元電位もLi/Li + 比で約3.6Vと、リチウムイオン電池に近い高い値を示す。また、電気化学速度論的研究で、TEMPOが極めて大きな酸化還元速度を持つことも見出された。これはTEMPOが、一度に大きな電流を放電できる可能性、言い換えれば高出力電池の電極材料になる可能性を示した。NECでは高出力電池の開発を目的に、TEMPO構造を持つ材料を、主に有機ラジカル電池用電極材料として検討している。電極材料には電解液に不溶であることが求められる。しかし、市販されている安定ラジカル材料はすべて低分子であり、電解液に容易に溶解するという性質を持っている。そこで、TEMPOが電解液に溶けないようにするため、TEMPO構造を有するプラスチック(ポリマー)を合成した。これは、ポリマーが一般に低分子に比べ低い溶解性を示すためである。合成したのは、ポリメタクリレート骨格を有するポリ(4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン- N -オキシル)(PTMA) である。PTMAは、比較的安価な原料から少ないステップで合成できる。つまり製造コスト面でも有利である。通常ラジカルは極めて不安定であるが、PTMAのラジカルは極めて高い安定性を示した。ESRにてポリマーのスピン濃度(ラジカル濃度)を測定することにより、ラジカルの経時劣化を評価したところ、室温大気下において半年放置してもスピンの減少はまったく見られなかった。実際の PTMAの熱分解率曲線[昇温速度10度/分]及び1分間加熱後のラジカル残存率としてもPTMAは年単位で安定しており、合成後3年以上経過したものを電極活物質に適用しても、充放電が可能であり電池特性の劣化も見られなかった。熱重量分析よりポリマー骨格は220℃まで安定であり、また1分間加熱後のESR測定でもラジカルの失活は200℃まで見られなかった。PTMAは長期の保存性と熱安定性に優れていた。ラジカル材料の蓄電は分子中のラジカル構造の部分で行われる。リチウムイオン電池用電極材料LiCoO 2 の容量密度140mAh/g。1ラジカルあたりに1電子を蓄電したときのPTMAの理論容量は111mAh/gである。リチウムイオン電池の正極材料の約8割の容量を蓄電できる能力を持つ(http://www.nec.co.jp/press/ja/1203/0504.html)。何時、市販されるか長らく心待ちにしていたが、やっと、14年目にして、有機ラジカル充電器が市販されることになったhttp://gigazine.net/news/20150217-lightors/)。

 


有機薄膜太陽電池は大化けするか(日経より抜粋)

2015-06-18 10:25:45 | ラジカル
 有機薄膜太陽電池は大化けするか
野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2013/09/27 05:00

有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池の技術開発が加速している。この数年で最も変換効率が向上した太陽電池の一つになった。現時点では、ドイツHeliatek社と三菱化学が変換効率でそれぞれ約12%を実現し、開発競争でトップ・グループを形成している。同社の半透明のフレキシブルな有機薄膜太陽電池シートを用いた実証実験が行われた。三菱化学の有機薄膜太陽電池の場合、大面積のシートの変換効率は当初5~7%だとみられるが、従来の太陽電池に比べて非常に軽く、価格も将来的に大量量産が進んだ際には大幅に安く製造できる見通しである。軽くて安ければ、これまで置いたり貼ったりできなかった場所に設置できるようになり、太陽電池の使い方が爆発的に多様化する「太陽電池のユビキタス化」が起こるであろう。ホームセンター等で、“すだれ”の代わりにこうした太陽電池が売られる可能性もある。有機薄膜太陽電池を開発しているのはこの2社だけではない。日経の取材では、主に日本のメーカー数社が変換効率10~11%の有機薄膜太陽電池を既に開発しており、先行する2社を猛追しています。いわば「第2グループ」です。その中の1社である東レは最近、高分子(ポリマー)を利用した有機薄膜太陽電池で変換効率10.6%を達成したと発表した。Heliatek社や三菱化学の有機薄膜太陽電池は低分子材料を利用し、製造時に真空プロセス、あるいは塗布プロセスでも一定温度に加熱するプロセスが必要です。一方、東レの場合は加熱がほとんど必要ない「非加熱塗布法」で製造でき、既にその非加熱塗布法で変換効率10%台を実現している。「塗るだけ」のプロセスで変換効率10%の太陽電池が量産できるなら、その社会的インパクトは、今の「メガソーラー」を超えるかもしれません。世界を見回すと、この高分子系太陽電池の開発を進めるメーカーや研究機関が目白押しで、「第3グループ」を形成している。彼らの太陽電池は変換効率こそまだ8~9%であるが、太陽電池の変換効率を決める重要なパラメータである曲線因子(FF)では、0.8前後という高い値を実現する例がいくつか出てきた。0.8以上のFFは、高効率な結晶Si型太陽電池やGaAs系化合物太陽電池では実現されているが、これまでの有機薄膜太陽電池のFFは高い例でも0.6台であった。例えば、東レの変換効率10.6%の太陽電池のFFは0.641である。最近の研究成果をみると、有機材料の選択とFFは必ずしも依存関係になく、素子構造の工夫で高いFFの値を実現できる例もあるようです。仮に東レの太陽電池で短絡電流や開放電圧の値を維持したままFFを0.8にできると、変換効率は13.2%となり、一部の結晶Si型太陽電池に迫る値になります。有機薄膜太陽電池にはまだまだ伸びシロがあるようです。


やっぱり、次は高くても日本製を買おう

2015-05-20 10:58:17 | ラジカル

中国調達:「やっぱり、次は高くても日本製を買おう」という残念な結末

2014-07-08 14:0

誰も知らない中国調達の現実(227)-岩城真

中国で製造した部品の検査に使うゲージ、みなさんは日本製を使っていますか、それとも中国製ですか?もちろん図面指示がJISであれば、JIS規格のゲージを使わなくてはならない。JISに準拠しているものならば、中国製であっても理屈のうえでは良い。しかし日本に持ち込む部品であれば、筆者は日本製を使っている。通常は日本製ゲージを中国のサプライヤーに貸与し、日本製のゲージで出荷前検査をさせ、合格品を出荷ということにしている。ところが、中国製のゲージを中国で購入し貸与したということがあった。理由はふたつ、検査の対象となるおねじは、位置決め用のナットを締結するだけの重要部でないこと。それに日本製と中国製では、価格差に5倍ほどの開きがあったことだ。   問題が発生したのは、ゲージを貸与してから1年半ほどのこと。日本の工場に入荷した部品を日本で検査すると、ネジ不良なのである。日本製のゲージが通らないばかりか、ラフに作られているはずのナットさえ通らない。そのままでは、まったく使えない状態である。真っ先に疑われたことは、「現地で検査してないんじゃないか」ということだった。結論を先に書くと、現地では全数検査していた。むしろ全数検査していたから、このようなことになったのである。ところで、1年半の間にどの程度使用したのかというと、500回にも満たない計算になる。日本では500回未満の使用でゲージがダメになるなど考えられない。定期更正期間にも満たない。しかし、件の中国製ゲージを中国から送らせて確認すると、日本製のゲージが通らなかったネジに、中国製ゲージはするりと通ってしまったのである。   原因は何か?ゲージが摩耗してしまったという以外に考えられない。元々中国製ゲージの精度が悪かったということはない。貸与当初から現在までの何ロットかは、まったく問題なく良品が送られてきている。即座に筆者は原因を推定できた。原因はふたつ、ゲージの耐久性に難があること、それにゲージの使用方法に問題があることである。   まず、ゲージの耐久性。これは、筆者は工具商に以前確認したことがあった。メーカー間の価格差に疑問を持った筆者は、営業マンに「この価格差の原因は何ですか?」と訊ねた。彼は丁寧に説明してくれ、焼き入れが違うと教えてくれた。つまり検体のネジ山と接触するゲージのネジ山の硬さである。ちょっと話がそれてしまうが、焼き入れ、つまり熱処理というものはノウハウの塊みたいなもので、出来あがったものを分析しても、コピーできるものではない。製品を分解してスケッチすればコピーできてしまう機構部品と違うのである。要するに、中国製と日本製では耐久性が、まったく違うのである。ゆえに新品を比べてみても差異は認められない。   ふたつ目の原因であるゲージの使用方法である。ネジゲージというものは、三本指で握るのが基本である。この基本が守られていない。掌で握って腕力のある人が力任せにねじると、ゲージがダイスやタップの役割を果たし、検体のネジ山を削ってしまうからである。実際に中国の工場を観察していると、やっているのである、まさにそれを。検査員がゲージをねじ込んで入らないと、工場内でもっとも力のありそうな大男を呼んできて、力任せにねじ込ませる、それでゲージが通ると、「OK了、OK了(OKになった、なった)」と言って検査合格、一件落着である。これじゃぁ、すぐゲージがいかれてしまう。   このように、元々耐久性の劣る部品を荒っぽく扱う、しかし、価格差を考えれば、まめに買い替えてもペイする。これって、まさに中国の産業機械の使われ方と同じではないか。初期投資の小ささを考えると中国スタイルも捨てたもんじゃない、とも言えなくもないが、ゲージであれば品質を担保する確実性、産業機械であれば操業の安定性を考えると、やはり日本製を選び、日本らしく正しく使いたくなる。筆者は日本の国粋主義者ではないが、「次からは、高くても日本製を買おう」という結論になってしまう。グローバル調達を推進している立場からすれば、検査機器も早期に現地調達化するというのが、職務上の使命でもある。真に残念な結末である。(執筆者:岩城真 編集担当:水野陽子)


外から来たDNAの細胞内侵入を感知するDNAセンサーを発見

2015-05-19 11:11:40 | ラジカル
細胞内に入ったDNAビーズの電子顕微鏡写真(赤は核膜に似た膜、緑はオートファジー関連の膜を示す。)

PDFリリース全文 
(656KB)

2015年5月19日

外から来たDNAの細胞内侵入を感知するDNAセンサーを発見

2015年5月19日

国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)

外から来たDNAの細胞内侵入を感知するDNAセンサーを発見
~DNAセンサータンパク質BAFの働きで外来DNAはオートファジーから免れる~

【ポイント】
■ 細胞内に侵入したDNAはBAFの働きでオートファジーからの攻撃を回避することを発見
■ これまでブラックボックスだった細胞内での反応を可視化することに成功
■ 細菌感染やウイルス感染過程の理解や遺伝子デリバリー・遺伝子治療法開発に貢献

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 坂内 正夫)は、未来ICT研究所において、細胞の有用な仕組みを発見しました。その仕組みとは、DNAセンサー分子BAFの働きで、ウイルス感染や遺伝子導入の際に持ち込まれる外来DNAが細胞内に侵入した時にオートファジーの攻撃から免れるというものです。今回、これまでブラックボックスだった外来DNAが細胞内に入った時の生体反応を明らかにし、BAFというタンパク質が核膜に似た膜構造をDNA周辺に作ることによって、オートファジーを抑制することを発見しました。
 この成果は、将来、埋め込み型の通信媒体を生体・細胞内に導入することを想定した新たな通信方法の創生に大きなブレークスルーとなります。また、DNAセンサー分子の発見が期待されていた免疫学の分野や、細菌感染やウイルス感染で起こる外来DNAの細胞内反応過程の解明が望まれている感染医学分野、遺伝子デリバリー・遺伝子治療分野などに貢献する成果です。
 なお、本研究成果は、2015年5月18日15:00(米国Eastern Time)に国際的科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」オンライン速報版で公開されます。
http://www.pnas.org/content/early/recent

【背景】
 NICT 未来ICT研究所 バイオICT研究室では、ヒトを構成する約37兆個の細胞に働きかけを行う『究極のICT技術』の創出に向けて研究開発を行っています。様々な物質や情報が飛び交う細胞の仕組みや動作原理の解明についての研究はもとより、埋め込み型の通信媒体の開発を想定して、細胞内に生体‐非生体ハイブリッドマテリアルを導入し、細胞内に人為的に制御可能な微小空間を創生する取組を行ってきました。免疫学の分野では、外来DNAの侵入を感知するDNAセンサー分子の発見が待たれております。また、細菌感染やウイルス感染などの感染症の治療分野では、感染した細菌やウイルスのDNAが細胞内で、どのように処理されるか、長年にわたって不明のままとなっています。さらに、遺伝子治療の分野では、安全かつ高効率なDNAの細胞核伝送技術の早期開発が待ち望まれている状況にありました。

【今回の成果】
 今回、研究グループは、細胞内に侵入した外来DNAを検出する新たなDNAセンサー分子を発見しました。このDNAセンサー分子は、バリアーツーオートインテグレーションファクター(通称、BAF)と呼ばれるタンパク質です。DNAを取り付けたビーズ(DNAビーズ)を細胞内に取り込ませることによって、DNA侵入時に起こる生体反応を観察し、今までブラックボックスだった細胞の内部を可視化することに成功しました。
 これにより、我々は、BAFが外来DNAの周辺に核膜に類似した膜構造を集合させることで、オートファジーからの攻撃を回避するという仕組みを発見しました。
 これらの発見は、今後、免疫学の分野や、感染医学分野、遺伝子治療分野などに貢献するものと期待されます。

【今後の展望】
 今後、細胞内に制御可能な微小空間(「細胞核」を想定)を創る研究開発を行っていきます。BAFがオートファジーを抑制する仕組みを明らかにすることにより、安全かつ高効率な遺伝子デリバリーの実現を目指します。