「南シナ海の危機は商機」。ロシアが再びベトナムに本格登場
カムラン湾にロシア艦船寄港、最新鋭の潜水艦供与を話し合う
ロシア艦船がベトナムのカムラン湾に寄港した。
複数の西側メディアと華僑系メディアが報じている。「失地回復を狙うロシアは武器供与拡大をテコにふたたび東南アジアでの重要な役割を担おうとしている」。
「領海争端不息 中美我巻入南海旋渦」と『半月文摘』(6月25日号)も書いた。
在米華僑の有力紙『多維新聞』は「ロシアの狙いはベトナムをテコに南シナ海における中国の軍略『速戦速決』(速攻で早期の勝利)を覆すことである」(同誌6月23日号)と分析した。
またベトナム国営石油(ペトロペトナム)は、ロシアの石油開発企業(ロスネフチ)との間に何本かの契約をかわし、とくに富慶盆地125号と126号の共同開発プロジェクトに署名したとし、ロシア艦船三隻のカムラン湾寄港は6月20日だったという。
ことほど左様にロシアの巻き返しが顕著であるうえ、ベトナムが米国の武器支援を促し、日本のてこ入れも促そうという計算づくの魂胆も同時に見て取れる。米国はベトナムへの武器援助再開になお慎重である。
これらの推測の根拠は2013年二月に公表されたロシアの「外交政策構想」で、「2020年までにロシアは新型空母の寄港地を必要とする」と謳っているからだ。
「その最適地はベトナムのカムラン湾であり、この引き替えにロシアはキロ級の最新鋭潜水艦をベトナムに供与するだろう」と西側の軍事筋もみているようである。
プーチン大統領はすでに三回、ベトナムを訪問しており、最新は2013年11月12日のことだった。チアン・タン・ソン大頭領と抱き合って「友好」を演出した。
中国のベトナム領海における海洋リグ建設やパラセル諸島侵略、フィリピンのスカボロー礁占有などを横目に米中の外交的な確執をロシアはひややかにみてきた。
しかし将来の軍事バランスを見越して、このあたりからベトナムへの梃子入れが有利でありながらも、いまロシアがかかえるウクライナ、クリミア問題で中国の支援の必要があって、目前の領海問題への介入を見送ってきた。
▲狐と狸、いや狼と虎の殺伐とした関係が露呈
だが状況は激変した。
フィリピンが国際法違反と中国を提訴し、ベトナムは激しく中国を攻撃し、海洋ルールと航海の自由の鉄則を前にして米国はベトナムとフィリピンへ肩入れし、日本と豪もアセアン支援を鮮明にする。
むしろ中国が四面楚歌の状態となった。
ここでベトナムをロシアが支援しても国際的な批判はおこらないだろうとプーチンはしたたかに計算したわけである。まさに狐と狸ではなく、狼と虎だ。
「中ロ同盟」なるものは強固に結ばれた時期と、脆弱に崩れる時期とが交錯しており、1949年から1970年までは中ソ同盟が堅実、とりわけ中ソ対立が表面化する60年代央まで中ソ関係は蜜月と見られていた。
1972年に米国が中国と関係を回復し、79年に米中が国交を回復するや、ソ連は立場を失い、アフガニスタンに深入りしてしまった後は、むしろ中国が米国寄りとなってソ連が孤立し、89年のソ連崩壊へと到る。
以後、四半世紀近くの歳月が流れ、中ロ関係はふたたび蜜月を迎えているかに見えるが、ガス、原油をめぐる資源供給が両国の利害に一致するだけの関係であり、しかもウクライナ問題を抱えて孤立をふかめたロシアを中国は協力関係強化と謳って同盟再構築をはかったにすぎない。
この中ロ同盟はまもなく蜜月を終えるだろう。
中国の西砂、南砂海域における強圧的な資源開発は当該海域に300億トンから700億トンの石油とガスが埋蔵されていると推量されているからである。
第一列島線、九段線という中国の一方的な地図への線引きは軍事戦略をからめての資源確保戦略に結びついている。
ベトナムは当該海域にすでに1380ヶ所に油田井戸を掘って、その石油生産はベトナムGDPの30%をしめるに到っている。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)6月20日、河野談話検証結果についての米国務省サキ報道官の発言が日本の各紙に報道されていました。この前後、各1週間分の国務省記者会見トランスクリプトを読み直しましたが、不思議なことに、韓国が竹島周辺で軍事演習をしたことに関して米国のコメントを求めた記者は一人もいませんでした。
日本の記者達が何故、米国政府への問題提起を控えたのか、ご存じですか?
(東京在住 ワタナベ)
(読者の声2)国務省の会見は世界中のジャーナリストが出席しますから、日本の特派員に質問の機会が回ってこなかったのでは?
むしろ大事なのは国防総省の記者会見でしょう。ヘーゲルがなんと言っているのか、知りたいところです。
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(休刊のお知らせ) 小誌は海外取材のため6月27日―7月3日が休刊となります。
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★ 7月3日まで宮崎先生のメルマガはないということでしたが・・・。これだけはということなのでしょうか。