教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

不動産投資で全額失うしくみ

2010-04-20 00:06:06 | 経済/経済/社会
米ゴールドマン、不動産ファンドがほぼ全資産失う=FT
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14856720100416

米Mスタンレーのファンド、54億ドルの損失出す可能性=WSJ
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnJS867112720100414



最近なんだかこの手のニュースがネット上で騒がれている。
それを読んだふつうの人は
「不動産投資で全額失うのはあり得ない」
と思い、
「どうやってほぼ全資産を失う羽目になるんだ?」
とフシギに思うらしい。
少なくとも多くの掲示板についたレスにはそう書いてある。

ちなみにこれはフシギなことでも何でもない。
ごくあたりまえに起こり得る。
その仕組みを書いてみたい。



不動産は持っているだけで安定的な収益を生む。
マンション経営でいうところの家賃収入である。
家賃相場が突然ゼロになるなんて事はあり得ない。

これは会社経営とは違う。
会社の儲けは景気に左右されるから本質的に安定しないものだ。

そして会社はそれ自体の価値も安定しない。
収益が安定しない以上、会社の価値も安定しないのも当然だ。

しかし不動産はそうではない。
建物はちょっとづつボロくなっていくから価値は下落していくが、姉歯物件でもないかぎりいきなり価値がゼロになるということはあり得ないわけで、価値の下落は予めある程度の試算ができる。
土地にいたってはボロくなって価値が下落するという事はあり得ない。

しかし不動産には致命的な欠点がある。
単価が高いことだ。

株であればそれこそ1万円から投資できる。
不動産は最低1000万円くらいは用意しないと何もできない。

そこでどうするか?

自前で用意できない分は借りてくればいい。
1000万円の投資なら、300万円だけ自前で用意して、700万円は銀行から借りてくればいい。
収益が年50万円だとすると、自前で1000万円出したら5%の収益だが、自前で300万円出して残りの借り入れ利息が2%だとすると、なんと収益は12%にまで増える。

会社経営でも借金して金策することはよくあるが、先に記したように会社経営は不安定であり、あまり借金を増やすと後で首が絞まることになりかねない。
しかし不動産は安定的な収益を生むため、入金より利払いのほうが少なければ少々借金しても後で首が絞まることになりはしない。

・・・というのがハマりパターンなのだ(笑)。



で、なぜこれでハマるかというと。
不動産は安定的な収益を生むとはいえ、多少の変動はある。
特にオフィスビルとかは顕著だ。
景気が良くなれば事業拡大をしたい企業が増えてくるため、オフィスビルの需要が増え家賃が増加傾向になる。
家賃が増えれば利回りが良くなるため、物件価格が上昇する。

・・・ということなら万事うまくいくのだが。
景気が悪いときにはその逆パターンになる。

オフィスビルの物件価格が2007年の最高値と2009年の最安値で3割違うとかいうことはあり得る。

1000万円の投資のうち700万円は銀行から借りてきたはいいが、物件価格が3割下落してしまって元本がパアになった・・・というのがこの現象の本質だ。

さらにもう1つ事情が悪いことがある。
ファンドの場合は運用期間をあらかじめ決めてある場合も少なくない。
例えば、2005年にファンドを設定し、5年間は物件を運用し、2010年に物件を売却して銀行からの借金を返すことに決めている・・・というようなパターン。

こういった場合は市況がいくら悪かろうが必ず物件は売らざるを得ない。
とはいっても予定を変更して続けようにもうまくいかない。
最初に貸してくれた銀行も、5年で返してもらうつもりで借り換えに応じないつもりで貸している場合も少なくない。
だからじっとしていれば安定収益をもたらすものの、イヤでも全損になるのが目に見えていても売らざるを得ない場合もままある。
不動産なんてカンタンに換金できないため、そもそも不動産ファンドは途中解約不可になっているケースも少なくなく、途中解約不可なのに運用期間20年とか言われてもお客は困るからせいぜい5年くらいしか設定できず、そういう環境もまた全損を生む土壌にもなっている。

もちろん、自腹で全額出して長期運用するつもりで不動産に手を出すなら、そういう全損の心配などする必要はない。
そういうことを前提に考えていたら、不動産で全損するなんてありえない異常に運用ベタなように思えてしまう。

問題はこれには限らない。
不動産に限らずたいがいのものは、後から見ると失敗したものでも当時の状況を分析すると妥当に見えたとしてもしかたがないような何らかの理由がある。
そういうのを理解せずに運用ベタあつかいすると自分がやるときも同じようにハマる事になりかねない。
サラリーマンのマンション経営だって、気付かぬうちにハマりパターンに陥っていて20年後に大損こいている事にようやく気付くことだって十分ありうるだろう。

昨今のリーマンショックにおいて欧米の大手金融機関が大失敗した理由を観察しているとじつに興味深い。
サブプライムローンの問題だって、ただ単にバカだったから起きたのではない。
ちゃんと理論があってツジツマを1つづつ理解していって、当時そう考えてもしかたがないという理由を自分で理解できるところにまでなるとおもしろい。

これは最近になってようやく経済はおもしろいと感じるようになった理由でもあるのだ。