今日はNHK BS-2で【土曜シアター山川静夫の新・華麗なる招待席『前進座創立75周年記念公演』】が放送された。
今年5月の国立大劇場公演の録画である。
舞台を観られなかった人たちにはありがたい番組である。
また、一つの記録としての価値がある。
こうした舞台中継録画を観ていつも思うのだが、
やはり生で観なくては、本当の良さはわからない。
撮影したカメラマンのセンスやディレクターのカット割り次第で
観客として見たいものが見られなかったり、あまりにアップになるために見たくないものまで見えてしまったり…
特に舞踊など、踊り手の足捌きはたいてい見えないものである。
舞台を撮影する場合、記録として拘るか、ドラマ性に絞ってカメラワークを演出するか…
大変難しい問題である。
今回の自分を観て、動きの癖や表情や台詞まわしや…
まったく嫌になってしまう。
テレビドラマの様に計算が出来ていない。
全てが見えてしまう舞台の恐ろしさだ。
生のお客さんには、こういう風に見えているのだろうか…
自分の未熟を思い知るから、勉強にはなるが
舞台中継は嫌いだ。
しかし、今やこの世に存在しない昔の名優たちの名演は、こうした映像記録が残っていればこそ見る事が出来る。
自分が演じる時など、名優の演技を何度も何度も観るものだ。
そういう意味では確かにありがたいものである。
実はテレビ録画本番の日は、得てして出来が良くなかったりするものである。
不思議とアクシデントがあったりする。
大体は役者が意識してしまうのが原因だ。
それはそれで生な味わいであり、かえって完璧な記録より人間味を感じて嬉しいこともある。
名優はいかに調子が良くなくても、流石に素晴らしいものを残している。
翫右衛門も、NHKのスタジオで録画した『魚屋宗五郎』の出来を生前ずっと悔やんでいた。
指定された短い録画時間に合わせて芝居をかなり早めたために、理想の芝居運びが出来なかったのである。
でも我々から観たら、それでも素晴らしいものである。
確かに芝居は早いが、深い中身が凝縮されていて隙が無い。
よくぞ残してくれたものだと思う。
味わい方は人それぞれ。
まずは生を観て
それから録画でまた楽しみ
また生を観る。
色々な楽しみ方が出来る現代。
一期一会の有り難さが失われない様に
その時その時に命をかけたい。
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