「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           シリア親子二人の大統領の弾圧

2012-02-12 07:12:32 | Weblog
シリアのアサド政権の反政府勢力への武力弾圧が依然続いている。国連安保理での決議案がロシア、中国二か国の拒否権発動によって、その弾圧は逆に"正当化”された形である。アラブ連盟と西欧一部の国による水面下での鎮静化への模索もあるようだが、このままでは内戦状態である。昨年1月チュニジアから始まった”ジャスミン革命”だが、1年たってもシリアには春は訪れない。

半世紀前の1962年(昭和37年)僕は新聞社の中東移動特派員として、ベイルート(レバノン)から陸路ダマスカス(シリア)を訪れた。いま反政府勢力への弾圧が行われている国境のホムスも通過した。当時の情勢は1958年、エジプトと合邦して出来た「アラブ連合共和国」(UAR)からがシリアが離脱した直後であった。この離脱を決めたのは、61年のクーデーターで実権を握ったハーフィズ・アサドで、現シリア大統領バシャール・アサドの父親である。

当時から50年もの歳月が流れた。しかし、シリアでは依然アサド一家が実権を握っている。北朝鮮とまったく同じ構図なのだ。この間1982年、父親のハフィーズ時代、イスラム教内部の対立から、反対宗派への武力弾圧が行われ、1万人が殺されている。

シリアの場合、他のアラブ諸国と違って国民の大半を占めるイスラム教スン二派対アサド一家の信仰する少数派のシーア派の対立が絡んでいるから複雑だ。アッシリア、バビロニア、ペルシャ、ローマ時代からシリアは歴史の舞台に登場する。チグリス・ユーフラテスの古い文明の地でもある。武力弾圧がさらに激化して内戦にでもなり、同国内にある歴史遺産の破壊にでもなれば大変である。日本でできることがあれば、よいのだが、残念ながら今のわが国の外交力ではどうだろうかー。