海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

辺野古有志の会とティダの会による県への申し入れ

2020-03-25 23:55:46 | 米軍・自衛隊・基地問題

 25日は那覇市の沖縄県庁へ行き、新基地建設問題を考える辺野古有志の会とティダの会による沖縄県への申し入れに参加した。この日は〈キャンプ・シュワブ周辺地域の環境問題についての申し入れ〉と〈名護市安和区の琉球セメント旧桟橋の使用を停止し、すみやかに撤去するように行政指導を求める申し入れ〉の2件を行った。ここでは後者について触れたい。

 昨年の11月から本ブログで琉球セメント旧桟橋の問題についてくり返し書いてきた。老朽化により本来の姿を失い、破損、劣化が進行している旧桟橋でセメントの積み込みを行い、労働者に危険な作業を強いていることを写真で示し、批判してきた。

 すでに触れたように「新桟橋の公共用財産使用許可書」によると、〈既設桟橋については、新設桟橋へのセメント出荷設備設置(時期未定)まで使用する〉となっている。メディアやインターネットで公開された新桟橋の空撮写真を見ると、2018年の11月にはすでに〈セメント出荷設備〉が設置されているのを確認できる。

 つまり、それ以降今日まで続けられてきた〈既設桟橋〉の使用は、上記「使用許可書」に反する行為だったのだ。琉球セメントは確信犯として危険な旧桟橋の使用を継続し、セメントの出荷を行ってきた。理由は明白で、新桟橋を辺野古に土砂を運ぶガット船に使わせるためだ。

 実は、新桟橋に設置されていた〈セメント出荷設備〉は当初、現在ガット船が土砂積み込みのため接岸している付近にあった。そのため、そこでセメントの出荷=積み込みを行うと、その日は土砂の積み込みができなくなる。琉球セメントは本来業務を後回しにしてまで新桟橋をガット船に使用させ、辺野古の埋め立てに積極的に協力してきたのである。

 しかし、旧桟橋の問題が指摘され、継続使用を沖縄県も認めそうにないことが分かってきたことから、琉球セメントは〈セメント出荷設備〉の位置を変え、パイプを新桟橋の先端まで伸ばし、沖側のバースにセメント運搬船を接岸して作業を行わせようとしているようだ。下の写真を見てほしい。

 新桟橋の先端部、沖側のバースの様子だが、上の2枚が今年の1月14日、下の2枚が今年の2月28日に撮影したものだ。黒いホースが新たに設置されているのが分かる。セメント出荷=積み込み用の圧送ホースと思われる。

 このような〈セメント出荷設備〉をめぐる一連の動きを県の担当者は知らなかったのか。知ったうえで業者と馴れ合い、出来レースを演じていたのではないか。最初にそう質問した。県の担当者も港湾施設のプロなのだから、〈セメント出荷設備〉の有無は一目で分かるはずだ。県の担当者は〈出来レースではない〉と否定していたが、質問には非公開の情報が含まれているので、はっきり答えられない、と言葉を濁していた。

 次に、新桟橋の先端部のバースにはどの程度の大きさの船が接岸可能なのか、と尋ねたが、手元に資料がないので答えられない、とのことだった。

 続けて、新桟橋での土砂積み出しを〈その他資材〉として認めているが、〈その他〉とは副次的なものであり、主たる積み出し資材としての骨材はどれだけ出荷されたのか、セメント副原料としての〈石膏、酸化物、リサイクル品〉はどれだけ荷揚げされたのか、と訊いた。県の担当者は、非公開の情報が含まれているので答えられない、と逃げの一手だった。

 なので、こちらから本部町島ぐるみ会議の観察を紹介した。石炭の荷揚げと辺野古埋め立て土砂の積み出し以外にこれまで新桟橋が使用された事実はない。そのうえで、新桟橋が実質的に辺野古埋め立ての専用桟橋と化していること。琉球セメントは新桟橋をガット船に優先的に使わせるため、セメントの出荷だけでなく、セメント副原料の荷揚げもあえて行っていないと思われること。この現状を県としてどうとらえ、指導していくのかを問うたが、質問には非公開情報が含まれているので答えられない、とくり返すだけだった。

 要するに、県民に重要な情報を非公開にすることで、琉球セメントの不正を押し隠し、県の指導力のなさも押し隠してきたわけだ。琉球セメントが3月いっぱいで旧桟橋でのセメント出荷を止めるにしても、それは新桟橋にガット船とセメント運搬船を2隻同時に接岸させ、土砂積み込みとセメント出荷を並行して行える目途がついたからだ。

 県が琉球セメントに対し、「新桟橋の公共用使用許可書」に基づき厳しく指導していたら、もっと早い段階で旧桟橋の使用を止めさせ、新桟橋のガット船利用を制限できたはずだ。この1年余、それを怠った県の責任、職員を統率する玉城知事の指導力が問われる。旧桟橋の使用継続によって労働者の安全も脅かされたのだ。県の担当者、玉城知事はそのことを反省すべきだ。

 3月も残りわずかだが、現在でもなお旧桟橋が使われていることは、でたらめ極まりない。このような業者を放置している県の指導の弱さ、甘さが、首里城火災や豚熱、久米島の牛の種付け問題など、多方面で表れているように思える。これでは玉城県政への県民の信頼が揺らぐだろう。

 旧桟橋と新桟橋の使用状況がどう変わるか、新桟橋に2隻同時に船が接岸したとき、船の動きや周囲の環境はどう変わるか。それに対しどう抗議していくか。4月以降の状況を想定して対処策を考えておく必要がある。

 県への申し入れは午後2時から4時過ぎまでかかったが、そのあと県庁前広場に行って午後5時まで、本部港塩川区へのベルトコンベア設置や旧桟橋の更新に反対する街宣行動に参加した。

 那覇に行く途中、瀬嵩や辺野古によって工事の状況を見た。午前10時38分頃、瀬嵩の海岸から大浦湾の様子を見ると、K9護岸では土砂の陸揚げを行っていた。K8護岸は土砂の陸揚げが行われていなかったが、1回目が終わったあとだったのかは未確認。

 ガット船は第八藤進、栄雄丸、聖祐の3隻が大浦湾に入っていて、ランプウェイ台船に土砂の載せ替えを行っていた。

 午前10時58分頃、豊原の高台から辺野古側埋め立て工区の様子を見た。K9護岸からダンプカーで運ばれてきた土砂は、K4護岸の内側に投入されていた。N5護岸とK3護岸の両側から投入されてきた土砂は、もうすぐつながろうとしている。

 K4護岸では消波ブロックの設置も行われていた。K4護岸の内側に土砂の投入を続けているのは、大型クレーンが移動する足場を造るためだ。K4護岸は外洋に面しているので、台風シーズンが来る前に消波ブロックを設置し終えたいのだろう。

 コロナウィルスの感染拡大が与える打撃はどれだけのものになるか。こんなバカげた工事のために、予算を浪費している場合ではないのだ。


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