C・JORDANとJ・COOKの‘TWO TENOR WINNER’(Criss Cross)が目に留まった。曲目を見ると大好きな‘Song of Her’が。意外にも、作曲した本人、C・マクビーが入っていた。
‘Song of Her’と言えば、ロイド。久し振りに‘FOREST FLOWER /At Monterey’と‘THE WATER IS WIDE’(ECM)を続けて聴く。‘THE WATER IS WIDE’ではロイドのオリジナル‘LADY DAY’も凄く良い。
もう歯止めが効かなくなり、ECMの第一弾‘FISH OUT OF WATER’を引っ張りだした。タイトルは意訳すると、どうやら「落着かない・・・・」らしい。ロイドとECM、意外な組合せで、当時の心境、そのものだったかもしれません。
パーソネルは、
Charles Lloyd (ts)、Bobo Stenson(p)、Palle Danielsson(b)、Jon Christensen(ds)
録音は1989年7月、オスロ。リズム・セクションはもう説明無用ですね。
1968年、人気絶頂のロイド来日公演(キースは兵役問題で来日できず)を些細な理由で聴き逃し、ずっと胸にトゲが刺さったままだったが、もうかなり前、G・ピーコックとのデュオ・コンサートを聴き、長年のトゲがとれた。
異様なステージだった。小さなホールで避難誘導を示す灯りの他、最低限のライトのみ、二人のシルエットが辛うじて分かるほど暗い中、知らぬ間に始まり、いつの間にか終わった。一言もなく。これが「メディテーション」なのか。
本作は、まるでロイドの世界観をJAZZというフォーマットで朗読しているようだ。全てロイドのオリジナルで固められ、一曲一曲のクオリティもさることながらアルバムを通して「起・承・転・結」が見事に整っている。特にA-3の‘The Dirge’からグッと惹きこまれ、ラストまで一気に。しかも自然の流れで。
‘The Dirge’はコルトレーンが生き返ったかのようなスピリチュアルなバラードだが、ベタにならない所がロイドの魅力、完全にロイドの世界。
作曲の才能は折り紙付きで、本作でもラストの‘Mirror’を始め良い曲を書いている。
一滴のしずくが渓谷を経て、川幅を広げ時には急流となり、やがて穏やかに海にそそぐ清流の如し。
「いかさま商売人」とか「フォレスト・フラワーだけのB級テナー」と思い込んででいる人達には到底、届かぬ境地。
巷の噂では「意外と知られていない隠れ名盤」とか。それでいいんです、「知る人ぞ知る名盤」ほど、確かなものはない。
なお、どうでもいいことだが、W.Germany初版プレスLP(↑)と現在流通しているCD、再発LPではカヴァの中の絵が微妙に違う。違いを探すゲームみたいですが、直ぐ分かります。それと、Bobo以下のメンバーの列記方法が異なっている。
C.ロイドは実はあまりよく知りません。でも、ECMならとっつきやすいかも、です。
注意して探してみます。
しかも隠遁生活が長いと尚更ですね。
当時、ロイドに罵声を浴びせたジャーナリスト達はECMの諸作をどう聴いたのでしょうか? 所詮、ロイドのセンスに付いていけないでしょうけど。
この作品はECMらしいけどECMぽくありません。そこが聴き所のような気がします。どこまでもロイドですから。
恐らく同世代の方で、同じ想いをお持ちと推測され嬉しく思います。
少し前、JAZZ TOKYOのロイドのステージの一部をTVで観ました。老いたと雖も感性の若々しさにあの頃を思い出しました。何もかも刺激的だったあの頃、青春の象徴の一つのとしてロイドは決して色褪せない存在です。