jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

ONCE UPON A SUMMERTIME / CHET BAKER

2021-10-07 | ジャズ・tp

(1977.2.20)

 

大好きな映画の一つに、もう、かれこれ30数年前に公開された‘ONCE UPON A TIME IN AMERICA’があります。主演はロバート・デ・ニーロ、監督は、あのセルジオ・レオーネ、そして遺作です。日本では当時、単なるギャング映画として紹介され、しかも、上映時間が短く編集されていたためか、初めて観た時、途中で解らなくなるシーンも少なからず有り、それほど評判にならなかった。それでも、レオーネ監督が描こうとした複雑な人間模様を核として壮大にしてノスタジックな世界はミステリー・タッチも手伝い感動的ですらありました。なお、後年、完全版が出され、正当な評価が得られるようになりました。

このベイカーの作品は、「栄光と挫折」といったベイカー自身の軌跡の一つとして、自分の頭に中では映画と妙に符丁が合う。カヴァの写真も、デ・ニーロがラスト・シーンで見せた意味深な笑いと何故かダブってくる。


チェット・ベイカー、かって、あのマイルスでさえ足元にも及ばなかった大スターである。因みに、ダウンビート誌の1954年のtp部門・人気投票を見ると、第1位がベイカー(882)、以下、ガレスピー(661)、H・ジェームス(449)と続き、9位にマイルス(126)、11位にブラウン(89)となっている。

ゲートホールドの内カヴァには、ベイカーのヒストリーが貴重な写真と共に掲載されていて、ディスコグラフィーのリーフレットと合わせベイカー・ファンには見逃せない一枚です。


さて、本作の聴きものは、ラストにセットされたルグランの‘Once Upon A Summertime’ですね。ダンゴのイントロに続いて、ベイカーのミュートが呟くようにテーマをなぞる。初めのワンフレーズを聴いただけで、そのハーマンの音色に魅了されるでしょう。マイルスと異なり、響きに俗っぽく言うと、「色気」がある。
アーティスト・ハウス盤は総じて好録音で、テクニカル・データも詳細にクレジットされていますが、このハーマンは抜群に「音」が生々しい。

ただ、他の曲の出来が今一つなのが残念です。

この頃、ベイカーは既にビックリするほどシワ顔になっていたが、この‘Once Upon A Summertime’で聴かせるハーマンには一筋のシワもない!!! 

そして、誰しも心の奥底にそっと仕舞い込んでいる若き日の切ない「夏の想い出」を、ベイカーは無遠慮に蘇らす。
11:20、ミラクルなのか、それともミステリーなのか? 両方だろう。

 

“Bluespirits”(2010.12.6)



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