「隅田川花火大会後のゴミの山に呆れ声多数 「マジで恥知らず」「酷すぎる」(AOLニュースの記事より)
毎年、花火大会の時期になると思い出す出来事があります。
高校生の頃、ぼっちだった僕はどこへ行くにも一人でした。
元気だけはあったので、地元の海岸まで独り自転車を走らせ、夏の花火大会を見に行った帰りのことです。
砂浜にごった返す人の波の中、帰ろうと立ち上がりふとポケットを探ると、自転車の鍵がありません。
焦って必死に暗い砂浜を探しますが、一向に見つかりませんでした。
思案の結果、ともかく近くの交番まで持って行って助けてもらうことにします。
そこで、鍵の掛かった後輪を持ち上げて運ぶのですが、それがなかなか難儀でした。
どうにか交番に辿り着き、おまわりさんに相談すると、その答えは冷たいものでした。
「鍵を持っていない以上、持主かどうか証明できないから鍵は壊せない」と『嘘つきのクレタ人』みたいなパラドックスを言ってきます。
ならばと「せめて一日置かせてもらえないか」とのお願いにも「盗まれたら責任取れないから無理」とのことです。
正直ひどいと思いましたが、諦めて今度は駅の駐輪所まで持って行くことにしました。
そこまでがまた結構長いのですが、他に方法も考えつきませんでした。
その途中、駅前の線路をくぐる地下道でのことです。
往来の好奇の目にさらされながら一人自転車を抱える僕の手がふと軽くなりました。
と、同時に「こうすればいいですか?」との声がかかります。
見れば、とても誠実でまっすぐな眼差しが印象的なショートカットの女の子でした。
おそらく当時の自分と同じ高校生くらいだったと思います。
とぼとぼと自転車を運ぶ僕の姿に、同情して一緒に持ってくれようとしたのです。
うっかり恥ずかさが勝ってしまい、お礼も言わずにあわてて断ってしまいました。
ですが、気持ちはとても軽くなりました。
※web小説‐伝承軌道上の恋の歌‐初めから
明治期の浮世絵師小林清親。明治以後の浮世絵も江戸期をしのぐほどの名作揃い
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