浅井久仁臣 グラフィティ         TOP>>http://www.asaikuniomi.com

日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

公立がダメなら私立があるさ

2006-11-24 11:28:30 | Weblog
私の視点「いじめを語る有名人賛江」の欄でもご覧になれるが、「ゴクゴクさん」という読者からこんなコメントが寄せられた。

「いじめを完全に絶やすことは難しいとは思います。でも、先日の福岡の事件をはじめ、学校や教育委員会がいじめの事実を隠蔽し、事なかれ主義の体質を貫いていることにはとても不快感を覚えます。自分が警戒するのはこのまま、このような体質を続けている限り、常識のある家庭(親)は、公立の学校に行かせる事をますます拒むようになるかもしれません。学校選択制が導入され、PTAをやる人がおらず地域が崩壊しているというマイナス面も起きていると聞きます。学校に行かせて子供を殺されるくらいならと初めから私立、もしくは塾だけで学校には出さず、給食費や学用品などの必要経費を払わない親も増えることに繋がりかねません。これから子供を産む人、未就学の子供たちのことも考えると事なかれ主義を貫くのはいかがなものかと首を傾げます。隠蔽を繰り返した結果をよく考えて欲しいものです」

 ゴクゴクさんの憂慮されることは、もっともだと思う。だから、これから書く事は、ゴクゴクさんのコメントを引いてはいるが、反論ではなく、その一部分から話を広げさせていただいただけであること先にお断りしておく。

 「公立がダメだから私立に」という風潮は、年々広く浸透している。親たちがそこに救いを求める気持ちも分からぬでもない。現実に、中には公立に行かずに私立に行って楽しい毎日を過す子供たちもいる。だが、あまり広く知られていないことだが、私の知る限り、私立学校の場合にもいじめは公立学校同様に存在するのだ。

 ところが、私立におけるいじめなどの問題は、ほとんど新聞紙上を賑わすことはない。だから、いつの間にか、世間では、「私立にはいじめなどの問題がほとんどない」と言われるようになった。

 それではなぜ私立では大きな問題にならないのか。それは、私立が企業だからだと私は考える。公的機関である公立学校に比べて私企業である私立学校では、様々な面で自由裁量が許される。まず、情報公開だが、これは、事件でも起きない限り明らかにされることはない。それと、「停学、落第、退学」という伝家の宝刀を持ち、それをちらつかせることで事件を未然に防ぐことができる。

 それでも思うようにならなければ、私立ではいじめが外部に漏れる前に、問題の生徒を排除してしまう。そう。「臭いものに蓋」をしてしまうのだ。そして、作られたイメージを前面に押し出して学校の評判を保っている。

 そんな私立学校に比べて、公立は教育委員会や保護者会のプレッシャーにもろに晒されなければならない。情報を隠蔽していると言われるが、私に言わせれば、私立に比べたら透明性はかなり高い。

 私の周りには、私立に行って“潰れた”若者が少なくない。私立から排除された子供たちは、地元の公立に入ったり、他の私立に引き取られるが、上手く受け入れられず、やがて入退学を繰り返して引きこもりになってしまう。これを私は「学校難民」と名付けている。

 最近の例では、ミッション系の私立小学校に通ったもののうまくいかず、地元の小学校に行き始めたが、これまた同級生たちから排除され、今度はインターナショナル小学校(と言っても、児童の大部分は日本人)に転校した。この時点で、私の助言がうるさく感じられるようになったようで、それからは疎遠になってしまった。

 結局、その男子は、風の便りではインターナショナル・スクールも退学し、海外に機会を求めて渡ったとのこと。でも、それもまたうまくいかず、今は埼玉ではない県に住んで、地元の学校に通っていると聞いた。

 もちろん、子供によっては、公立学校に向かない場合もある。おっとりとした競争原理を受け入れられない子供など、特にそうかもしれない。だから、私は、私立への通学を全て反対するつもりはない。だが、公立がダメだから私立に、という風潮だけはなんとか止めたいと思う。そのような空気が支配的になれば、地元の公立校はますますだめになり、その地域社会そのものがやがては機能不全を起こしていくことになる。