北朝鮮・寧辺の核施設にある実験用黒鉛減速炉に付属する冷却塔が27日夕、米国務省関係者も見守る中、爆破された。
爆破の模様は6カ国会議参加国のTV局7社(米国だけ2社)だけに取材が許され、日本ではTBSが報じた。
それを受けて「8カ国主要国外相会議」の出席のために来日したライス米国務長官は同日、日米外相会談後の共同記者会見で、「稼働していた原子炉だということを忘れてはならない」と述べ、北朝鮮の核放棄プロセスにとって爆破は大きな意義があるとした。
同長官は冷却塔について、「2006年の(核)実験に使われたものを含む爆弾数個を作るのに十分なプルトニウムを生産した原子炉だ」と指摘した。
また、「プルトニウム生産をやめさせるだけでなく、核拡散や高濃縮ウランなどの核開発をやめさせる必要がある」とも述べて今後も核廃棄に向け、北朝鮮に働きかけていく方針を強調した。
この報道に不快の念を隠さないのは、永田町の自民党のセンセーたちだ。
「アメリカはまた頭越しに事を進めた。拉致問題どころか、日本の事なんか念頭にないんだろう」
「あんなの政治ショーだよ。残りの任期が7か月となったブッシュと追い詰められたキム・ジョン・イルの共同パーフォーマンスだ」
「(日米)同盟がぎくしゃくするようになればですね、それはある意味では北朝鮮側の思うつぼになってる。そのことも、十分に踏まえなければいけないと思います」
確かに、センセー方の言うように、残りの任期がおよそ7か月となったブッシュ政権にとっては、高さ300メートルの冷却塔を爆破するという見た目に派手なやり方は、北朝鮮の非核化に成果をおさめたことを国民に示すには絶好のパフォーマンスだ。
また一方、金正日体制にとっても、核放棄に向けた積極的な姿勢を世界にアピールする絶好の機会となる。
だから、今回の「公開爆破」は米朝の思惑が一致した共同パフォーマンスと見て間違いはないだろう。
私は以前から米朝関係は実質的には米中関係だと力説してきた。北朝鮮問題は金体制を後ろで糸を引く中国が鍵を握っており、拉致問題を含めた日朝間の問題を解決に導くには、中南海(中国政府)の諒解を取り付ける必要がある。
中国はそんなにひどい国なのかと、ここでそういった中国のやり方を批難するのは簡単だ。だが、大国の覇権争いというものは、中国に限らず、こういうものなのだ。自国を守るためには衛星国家の利益は蹂躙される。だから、ここはコトの善悪を論じるよりも情勢の分析に限定したい。
中国にとって北朝鮮は対米、対日戦略の重要なカードである。だから北朝鮮が次々に起こす問題も中国の諒解を得てのことだ。
核開発ひとつを取ってみても分かることだ。北朝鮮が独力で核開発を行なってきたなどと考えることは現実的ではない。メディアでは、これまでの報道を信じてパキスタンの協力があったからこそできたことなどと力説する評論家もいるが、そのような情報をまともに取らない方がいい。
まず、パキスタンの核開発を誰が助けたかだが、それは中国だ。ソ連の援助で核開発したインドに対抗して、中国はパキスタンに核を持たせたのだ。だから、カーン博士が「パキスタンの核開発の父」とされているが、所詮は中国の作ったシナリオ通りに演出したまでのこと。カーン博士が仮に北朝鮮に技術提供をしたとしてもまず間違いなくそれは中国の指示である。
では、中国が北朝鮮に核開発をさせて何のメリットがあったのか。
先ず考えられるのは、日本への核の脅威だ。軍事的にみれば水鉄砲のような小型ミサイルの発射訓練でさえ日本は大騒ぎをする。ましてやそれがミサイルに搭載する核弾頭となれば、その脅威は“水鉄砲”の比ではない。
それと同時に日本の危機対応能力の分析・評価もできた。核実験を含む核開発のニュースが駆け巡るごとに日本政府は大慌てで対応策を検討するが、それを中国政府は冷静に観察していたとみていい。
今回の核施設爆破ひとつとっても分かるように、日本は北朝鮮の揺さぶりに一喜一憂、あたふたする。これは、中国にとったら思う壺である。日本はそう、中国に試されているのだ。
一方、対米関係の観点から見ると、アメリカは中国にとって東アジアの覇権争いにしのぎを削る相手だ。保有する交渉カードは多ければ多いほど有利になる。北朝鮮に核を持たすことの意味は当然計算していたはずだ。そして、アメリカはそれにまんまと乗せられた。核開発の断念の見返りに北朝鮮をテロ支援国家のリストから外させただけでなく、多額の北朝鮮側への援助を約束した。
アメリカが“同盟国”のニッポンを裏切ってまで北朝鮮に歩み寄ったのは、単に核の脅威を取り除くためというよりも北朝鮮の豊富な天然資源(ウランやレア・メタル)の開発に関わりたいからだとの見方がある。
本当に北朝鮮が言われているようにそのような天然資源に恵まれているかどうか、その真偽のほどは分からぬが、もしそれが噂されている通りだとすれば、それも中国にとっては強力なカードになる。
中国の深謀は、アメリカの力を利用しながら日本の影響力を東アジアからそいでいき、単独でEUに対抗する超大国になることであろう。それができなければ、アメリカ又は日本とパートナーシップを組み、東アジアに一大共栄圏を築こうとするものだ。いずれにしても中国が遠くない将来、アメリカに追い付き超大国の仲間入りするのは間違いない。
核施設爆破や拉致問題など一つひとつのことに目を奪われていると、いつの間にか時流を見失い、気が付いた時には中国やアメリカから取り残されていることになりかねない。そうならないためにも大局を見て舵取りをする政治家が出てこないとこの国の将来はいよいよ危険水域に入る。
爆破の模様は6カ国会議参加国のTV局7社(米国だけ2社)だけに取材が許され、日本ではTBSが報じた。
それを受けて「8カ国主要国外相会議」の出席のために来日したライス米国務長官は同日、日米外相会談後の共同記者会見で、「稼働していた原子炉だということを忘れてはならない」と述べ、北朝鮮の核放棄プロセスにとって爆破は大きな意義があるとした。
同長官は冷却塔について、「2006年の(核)実験に使われたものを含む爆弾数個を作るのに十分なプルトニウムを生産した原子炉だ」と指摘した。
また、「プルトニウム生産をやめさせるだけでなく、核拡散や高濃縮ウランなどの核開発をやめさせる必要がある」とも述べて今後も核廃棄に向け、北朝鮮に働きかけていく方針を強調した。
この報道に不快の念を隠さないのは、永田町の自民党のセンセーたちだ。
「アメリカはまた頭越しに事を進めた。拉致問題どころか、日本の事なんか念頭にないんだろう」
「あんなの政治ショーだよ。残りの任期が7か月となったブッシュと追い詰められたキム・ジョン・イルの共同パーフォーマンスだ」
「(日米)同盟がぎくしゃくするようになればですね、それはある意味では北朝鮮側の思うつぼになってる。そのことも、十分に踏まえなければいけないと思います」
確かに、センセー方の言うように、残りの任期がおよそ7か月となったブッシュ政権にとっては、高さ300メートルの冷却塔を爆破するという見た目に派手なやり方は、北朝鮮の非核化に成果をおさめたことを国民に示すには絶好のパフォーマンスだ。
また一方、金正日体制にとっても、核放棄に向けた積極的な姿勢を世界にアピールする絶好の機会となる。
だから、今回の「公開爆破」は米朝の思惑が一致した共同パフォーマンスと見て間違いはないだろう。
私は以前から米朝関係は実質的には米中関係だと力説してきた。北朝鮮問題は金体制を後ろで糸を引く中国が鍵を握っており、拉致問題を含めた日朝間の問題を解決に導くには、中南海(中国政府)の諒解を取り付ける必要がある。
中国はそんなにひどい国なのかと、ここでそういった中国のやり方を批難するのは簡単だ。だが、大国の覇権争いというものは、中国に限らず、こういうものなのだ。自国を守るためには衛星国家の利益は蹂躙される。だから、ここはコトの善悪を論じるよりも情勢の分析に限定したい。
中国にとって北朝鮮は対米、対日戦略の重要なカードである。だから北朝鮮が次々に起こす問題も中国の諒解を得てのことだ。
核開発ひとつを取ってみても分かることだ。北朝鮮が独力で核開発を行なってきたなどと考えることは現実的ではない。メディアでは、これまでの報道を信じてパキスタンの協力があったからこそできたことなどと力説する評論家もいるが、そのような情報をまともに取らない方がいい。
まず、パキスタンの核開発を誰が助けたかだが、それは中国だ。ソ連の援助で核開発したインドに対抗して、中国はパキスタンに核を持たせたのだ。だから、カーン博士が「パキスタンの核開発の父」とされているが、所詮は中国の作ったシナリオ通りに演出したまでのこと。カーン博士が仮に北朝鮮に技術提供をしたとしてもまず間違いなくそれは中国の指示である。
では、中国が北朝鮮に核開発をさせて何のメリットがあったのか。
先ず考えられるのは、日本への核の脅威だ。軍事的にみれば水鉄砲のような小型ミサイルの発射訓練でさえ日本は大騒ぎをする。ましてやそれがミサイルに搭載する核弾頭となれば、その脅威は“水鉄砲”の比ではない。
それと同時に日本の危機対応能力の分析・評価もできた。核実験を含む核開発のニュースが駆け巡るごとに日本政府は大慌てで対応策を検討するが、それを中国政府は冷静に観察していたとみていい。
今回の核施設爆破ひとつとっても分かるように、日本は北朝鮮の揺さぶりに一喜一憂、あたふたする。これは、中国にとったら思う壺である。日本はそう、中国に試されているのだ。
一方、対米関係の観点から見ると、アメリカは中国にとって東アジアの覇権争いにしのぎを削る相手だ。保有する交渉カードは多ければ多いほど有利になる。北朝鮮に核を持たすことの意味は当然計算していたはずだ。そして、アメリカはそれにまんまと乗せられた。核開発の断念の見返りに北朝鮮をテロ支援国家のリストから外させただけでなく、多額の北朝鮮側への援助を約束した。
アメリカが“同盟国”のニッポンを裏切ってまで北朝鮮に歩み寄ったのは、単に核の脅威を取り除くためというよりも北朝鮮の豊富な天然資源(ウランやレア・メタル)の開発に関わりたいからだとの見方がある。
本当に北朝鮮が言われているようにそのような天然資源に恵まれているかどうか、その真偽のほどは分からぬが、もしそれが噂されている通りだとすれば、それも中国にとっては強力なカードになる。
中国の深謀は、アメリカの力を利用しながら日本の影響力を東アジアからそいでいき、単独でEUに対抗する超大国になることであろう。それができなければ、アメリカ又は日本とパートナーシップを組み、東アジアに一大共栄圏を築こうとするものだ。いずれにしても中国が遠くない将来、アメリカに追い付き超大国の仲間入りするのは間違いない。
核施設爆破や拉致問題など一つひとつのことに目を奪われていると、いつの間にか時流を見失い、気が付いた時には中国やアメリカから取り残されていることになりかねない。そうならないためにも大局を見て舵取りをする政治家が出てこないとこの国の将来はいよいよ危険水域に入る。