浅井久仁臣 グラフィティ         TOP>>http://www.asaikuniomi.com

日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

団塊党?冗談じゃないぜ、菅さん

2006-02-28 11:25:40 | Weblog
 「送金メール問題」がいつの間にか「永田問題」になった感がある。そして、その永田問題も、私が一番恐れていた「落とし所」に収められようとしている。

 一時は議員辞職会見までしようとした永田議員がなぜ翻意したのかと思い調べてみると、なんとその“妙案”作りに関与していた幹部の中に菅直人氏の名前がある。

 これまで何度も選挙民に夢を与えては裏切ってきた菅氏だが、いまだにこんな姑息な手段に関わっているとすれば、裏切り行為の後に謝罪したりお遍路の旅に出たりしたのは、やはり選挙民を欺いていたことになる。そう言えば、不倫騒動や年金問題の時の“脇の甘さ”は、永田議員に相通じるものがある。

 そんな菅氏がこのところ各地で呼びかけているのが、「団塊党」の立ち上げだ。戦後のベイビー・ブームで団塊の世代と呼ばれた人たち(と言うか、私もその一人)も、後数年で退職を迎える。まだまだエネルギーも使い果たしておらず、隠居させるのはもったいないからという声があちこちから上がり、その辺りの世の流れを読むことの得意な菅氏が、支持層開拓の一環として考え付いたのが「団塊党宣言」だ。

 ヴォランティアやNPOの世界でもこのことが最近話題になる。団塊の世代が退職を機に“やりがい”を求めてこの分野にどっと参入する勢いなのだ。もう既にその傾向は出ており、問い合わせがこのところ急増している。
 メディアがそんな動きを察知して奨励記事を書いているのも大きく影響をしているのだろう。また、その分野のトップにいる人たちの多くが同世代であることも「退職組」を勇気付ける。

 だが、これまで地道に活動をしてきた若い世代の人たちにとっては、今のところ、正直に言って迷惑な存在のようだ。それは、団塊の世代の人たちが長年厳しい競争社会を生き抜いてくる中で培われたと信じる経験や知識・知恵を、まるで世の中のお手本であるかのように大上段から振り下ろしたりするためだが、このような関わり方は、迷惑のほかに言葉が見つからない。

 昨日の朝日新聞の「オピニオン」欄で、東京大学教授の松原隆一郎氏が、「知恵・経験を捨ててから地域参加を」と題してその辺りを指摘している。これは、団塊世代に引退後、社会経験を生かして、地域でコミュニティー作りに取り組んで欲しいとの「世間の願望」があることに対しての警告だといえる。

 松原氏が49歳という、団塊の世代の下で、常にその“重さ”に押し潰されそうになって育ってきた世代だけに言葉の一つひとつに重みが感じられる。提言自体は3段扱いで目立たないが、社会経済学者ならではの、全体をきちんと把握しての分析だから説得力がある。

 松原氏は提言の中で、消費社会やバブル経済を演出してきた団塊世代が一般に持つ価値観は、商店街の建て直しやまちづくりにはもっとも向かないものだと断じているが、私は大賛成だ。

 松原氏はそのような団塊の世代の特徴を踏まえて上で、下記のように呼びかけている。

 「各地で今、30代の若手がまちづくりに成果を上げている。団塊組みが後からそこに参入するなら、自らの価値観を反省する作業が要るだろう。社会で身につけてきた知恵や経験を捨てる覚悟。それができれば、他世代とつながる糸口は見えてくる」

講演会のご案内

2006-02-28 00:11:01 | Weblog
このほど、東京で3月25日、下記のような内容で講演会を行なうことになりました。興味のある方は、私のほうにご連絡ください。

浅井久仁臣


講演会:「循環型社会に戦争はいらない」
~80代、50代、20代が語る戦争体験と戦争観~

戦後60年。戦争体験者が高齢化し、過酷な体験を話すことなく、胸にしまったままこの世を去る方が多いと聞きます。それらの体験者にとって残された時間は、後わずか。日々刻々と少なくなってきています。

「いつか来た道」を歩まないためにも今私たちに課せられた事の一つは、少しでも多く貴重な証言に耳を傾け、それを語り継ぐこと。

戦時中、陸軍の特務機関員として南京周辺で活動をし、捕虜の斬首などに立ち会ってきたという中谷孝さん(80代)、ジャーナリストとして30年間にわたり各地の戦(紛)争を追い続けてきた浅井久仁臣さん(50代)、戦争を知らない私たちが語り継いでいかなくては、と元日本兵の聞き取りを一人で行い、その想いを被害にあった国の犠牲者の方々に届ける活動をする神直子さん(20代)がそれぞれの戦争を語ります。

●日 時:3/25(土)14:00~16:00
●場 所:環境パートナーシップオフィス(東京都渋谷区)
     http://www.geic.or.jp/geic/intro/access.html
○参加費:800円(資料代含む)
○要申し込み:naoko_j@hotmail.comまたはFAX:048-837-1793まで、
お名前と参加人数をお知らせください。

主催:ピースメディア塾
共催:NPO法人BeGood Cafe    
   Bridge for PEACE

救助の現場から

2006-02-28 00:06:07 | Weblog
 週末の夜、4月から消防大学の救助担当教官になる永堀満氏と一献を傾けた。そこには、現在東京消防庁で救助隊員として活躍する菅隆一郎も同席、4時間もの間「救助話」だけで盛り上がった。

 永堀氏は「埼玉に永堀あり」と全国にその名を知られる男で、昨年埼玉で行なわれた「全国消防救助技術大会」の中核となり、成功に導いた功労者である。そして、私が立ち上げた「ACTNOW救助隊」の指導教官を3年近く担当してくれた方でもある。

 菅隆一郎は、私のもとに3歳から出入りするようになり、ACTNOW救助隊に入ったのをきっかけに、パイロットへの夢をきっぱり切り捨て、消防士になった青年だ。

 話はまずは、IRT-JF(国際消防救助隊)の活動から始まった。フィリピンの土砂災害にもなんら動きを見せなかったIRTには、2人とも呆れ顔であった。そう。消防の現場の人間は、大災害を聞きつけると、自分の普段磨いてきた技術と心意気を発揮できないものかと、アドレナリンを普段の何倍も分泌している。だから、政府や行政の動きが悪く派遣が決められないと、個人的に居ても立ってもいられず、中には「9.11」の時のように個人行動を起こしてしまう熱い者もいるのだ。その辺りを理解できない事務方が被災地と折衝しているのだからいつまで経ってもその温度差は埋められることはないであろう。

 その他、多くの興味深い話が出たが、そのほとんどが公に出来るものではないと判断するので今回は披露できないが、今後折に触れてネタ元が割れないように細工を施した上で皆さんにもお伝えしていこうと考えている。いずれにしても、こんなにも熱い男達が、日夜我々の安全を確保しようと頑張ってくれているかと思うと嬉しくなってきた。

 お開きになりちょっと持ってみた菅のリュックは相変わらずずっしりと重かった。その中には、「いざ」という時のための最低限の救助用資機材とサヴァイヴァル(サバイバル)・キットが入っているのだ。それを彼は愚直なまでに365日、どこに行くにも持ち歩いている。

モノの価値

2006-02-27 16:10:59 | Weblog
 先日、近くの質屋に足を運んだ。

 「ついに浅井も金に困ったか」と思われるであろうが、私の台所事情を正直に明かすと、私には金の有無を言う前に質草になるものが身の回りにない。それは、パートナーも同様で、同年代の女性たちが身に付けるブランドや高級品とは無縁の生活だから「いざ」となっても、昔の芝居のように、糟糠の妻が夫に内緒で質草を風呂敷に包んで質屋の裏口からこっそり出入りして、「ハイ、あんた、これで何とかしといで」とカネを差し出す姿は望むべくもない。

 私が依然として質屋への「後ろ向きな」印象を持っているためか、実を言うと、この店に入るのは何となく気が進まなかった。それは、「知人に見られているのではないか」という変な想いがあるためだが、かといって「質屋に来るほど困っていませんから」と言い訳しながら入っていくのもおかしな話だ。結局、開き直りしかない、と昔ながらに「質」と書かれたのれんを勢い良くくぐった。

 そこまでして入っていった質屋であったが、ほぼ“門前払い”であった。それは、私の“質草”があわやの期待も空しく、何ら価値を認められなかったのだ。

 何だやっぱり金が欲しくて行ったじゃないかと皆さんの“期待通り”の話の展開だが、実は、ヴォランティア・グループで使っていた電話の名義が私になっており、その会員権を買い取ってもらおうと、街の「電話買取屋」として知られていた質屋に足を運んだ、というのが実情だ。

 ゼロ円と言われて、「10年前は…」と、言い出した私を制するかのように、質屋の主人は、

 「買った時は会員権が7万位した、とおっしゃりたいんでしょう?」
 と、続ける。

 そう。確かその位のカネは用意したはずだ。

 「でもね、携帯が普及したこともあって事情が一変してしまったんですよ。申し訳ないですね」

 それ以上その場に居続けることもない。私は店主に礼を言うと、店を出た。一夜にしてゼニを失うと言うが、今回は、一瞬にして損をしたとの想いに駆られた。 

 「思いがけない“入金”(創設当時、グループにカネはなく、私のポケットから出たカネで会員権を購入していた)」を当てにして、かつてのメンバーと飲み会でもと思っていた目論見は泡と化した。しかし、店を出る時、肩を落としていたのでは、ご近所の噂の種になる。背筋をピンと伸ばして明るい表情を作った。

 そして昨日。パートナーが部屋の模様替えをしようとこのところ張り切っており、数少ない家具の一つのソファー・ベッドとスチール家具、それに小物を何点かリサイクル屋に売ろうということで査定に来てもらった。このソファー・ベッド、狭い我が家にはどうにも厄介なのだ。

 雨の中を2人で来たリサイクル屋が出した査定が、ナント500円。それも、ソファー・ベッドと電気釜は無料での受取りすら断られる始末。

 査定担当の若い男性は、「良いソファーだと思うんですが、小さい傷や汚れが…。ウチの在庫事情を考えると、(買い取りも引き取りも)難しいですね。電気釜は、製造から5年以内でないと値が付かないんですよ」と、恐縮の表情。ソファーは、売りに出す人が多いとのことで、よほど程度の良いものでないと引き取らないらしい。

 事情を聞けば、こんな雨の中をわざわざ来てくれた2人にかえって申し訳なかったという気分に私の方がなってしまう。2人の態度もとても好感が持てて次回には必ず良いものを出しますからなどとわけの分からないことを言って2人を見送った。

 その後、部屋に残されたソファー・ベッドを見て思ったのは、私が取材で走り回る地域のことであった。パレスチナなどに持って行けば、まだまだかなり程度の良い家具として喜ばれる代物だ。それが、日本では何ら価値を持たないどころか、ゴミとしても疎んじられる。市場経済では当然と言えば当然かもしれないが、何か解せない。実を言うと、買った時の金額を考えて、2,3万にはなるかな?と思っていたのだ。捕らぬ狸の皮算用とはまさにこのことを言うのだろう。



宮内庁の雅子バッシング

2006-02-25 01:14:17 | Weblog
 週刊文春が2週連続で皇太子夫妻の「影」を書いている。
 読者がどのような理解をしているかは分からないが、電車の中吊り広告を読む乗客の反応を耳にする限りでは、「雅子様、かわいそう」とかなり不評だ。
 私はこの新聞広告を目にした時、まず頭に浮かんだのは、宮内庁の夫妻特に雅子さんへの「逆襲」が始まったとの感想を持った。
 記事は、雅子さんがいかに自分勝手で、天皇を含む周辺を振り回してきたかが書かれている。天皇に対してさえ失礼な言動があったし、朝寝坊の彼女が皇太子や娘と朝食を共に摂る事はないとまで書かれている。
 これは、まず間違いなく、宮内庁が皇太子夫妻の離婚へのカウントダウンを始めたと見ていいだろう。
 しかし考えてみれば失礼な話だ。皇太子とその妃という立場でなかったとしても他人にそんなことを言われる筋合いはない。宮内庁というところは、昔から天皇の威を借りて世間を騒がしてきたが、もういい加減、そうした陰湿な動きを止めないとその内、とんでもないことが起こりかねない。

土砂崩れの現場からの声

2006-02-24 10:20:54 | Weblog
 フィリピンの土砂崩れ災害の現場に入っている人間から昨夜、連絡が入った。その者によると、日本政府のお粗末な対応はひどいもので、災害発生から現場を訪れる日本大使館員の姿はなく1週間経った昨日、ようやく現れたと思ったらいきなり大使だったとのこと。
 米国は、海兵隊員約千人を現場に投入したこともあり、事故直後、報道担当官が現場入りしたという。海兵隊員の黙々とただひたすらに土砂を除去する姿を見ていると、私の語る「災害支援大国構想」が良く理解できたようだ。
 読者からの「森林伐採が原因なのでは」との問い合わせについて確認してみたが、現場入りした専門家は否定的な見方をしているとのことだ。そういう一因があったかもしれないが、今回の大規模な土砂崩れは断層のずれと大雨によるものとの見方がされているという。

民主党幹部を哂う小沢一郎

2006-02-24 09:53:46 | Weblog
 「永田議員騒動」を見ていると、民主党の体たらくこれに極まれり、である。
 先日お伝えしたように、「爆弾発言」には、充分な裏付けや展開想定、法的裏付けが必要なはずなのに、その辺りを怠っていたのだから、大政党としては失格だ。いや、これは、政党の問題ではない。「Law Maker」である国会議員としての資質の問題だ。
 永田議員が辞職するのは当然のことだが、問題のメイルの真贋を確認せずに「確証がある」などと選挙民を欺き続けた幹部連中も全て辞職すべきだ。それも、党内で上がっている党の要職からの辞職ではなく、議員バッジを外すのが筋だろう。
 国の骨格である法律作りをする国会議員にはその位の資質や責任が求められて当然、と私は考える。
 なのに、だ。昨日予定されていた永田議員の「辞職会見」はキャンセルされ、昨夜9時頃になって、党執行部からなんと「永田氏は精神状態が不安定で進退を冷静に判断できない」との発表がされた。
 これも嘘だ。赤坂のホテルに隠れていた(隠していた?)永田議員の部屋に行き、ルーム・サーヴィスで取り寄せたサンドゥウィッチを口に押し込ませながら病院に連れて行って入院させたのは誰だというのだ。それを、「本人が冷静に判断できない状況」とする党幹部の頭の構造が私には全く理解不能だ。
 それを聞いた若い同党議員達は怒りまくっているが、それは当然だ。今永田議員が辞職すれば、野田国対委員長どころか、下手をしたら前原代表の辞任にまで発展しかねないからと、こんな「時間稼ぎ」をしているのだろうが、こんな姑息なやり方で国民の理解が得られるはずはないし、卑怯そのものだ。
 そんな中、ほくそえんでいる御仁がいる。小沢一郎氏だ。
 昨年の衆院選の大敗の責任を取って辞任した岡田代表の後を受けて次期代表選びが行なわれていた際、私は小沢氏の思惑に触れた。小沢氏は、党内の「小沢待望論」を笑うかのように、あの時微動だにしなかった。それは、彼が党内事情を冷静に分析、「火中の栗」を拾う時ではないと判断していたからだ。多くの記者達や民主党の事情通と言われる人たちは、前原代表はこれまでの「お家騒動」に関与しておらず、党内改革の切り札に成り得るなどと持ち上げたが、私の目には小沢氏に「露払い」を命ぜられた前原氏が代表戦に出馬して菅直人氏の代表復帰を阻止するように動いたとしか見えなかった。あの時、前原氏が自分の力で代表戦を勝ち取ったかのように言う評論家も少なくなかったが、小沢氏のバックアップがあったから菅氏に勝てたのだ。
 かつて、「自民党のキング・メイカー」との異名を取った小沢氏は、焦って動く政治家ではない。彼が動く時は、「天下」を取りに行く時だ。それはつまり、彼の狙いが民主党の代表に止まらず、一国の首相にあることを意味する。小沢氏は、民主党だけでなく自民党の足並みが乱れ「小沢待望論」が党内はもとより国民の間からも沸き起こるのを虎視眈々と狙っている。

私の視点 災害支援大国構想 ―自衛隊を解体し救助隊に―

2006-02-23 03:16:44 | Weblog
 フィリピンのレイテ島における大規模土砂崩れは、現場に入った救助隊もその規模に圧倒され、また足場が悪く重機を持ち込めないことから救助は難航している。

 今回、発災して3日経っても現場には地元の救助隊の他には、台湾とマレイシア、それに米海兵隊が駆けつけただけで、世界各国の対応の悪さが目立った。それはマスコミが最初から現場のあきらめムードを強調したことも関係しているように思われる。これまでの大災害に共通することだが、一部の国を除いてほとんどの国が国際的なマスコミ報道を見て動き始める。だから、時機を逸すると、「もう今から行っても仕方がないから」と少額の救援物資を送ってお茶濁しをしようとするのが通例だ。

 日本政府も例外ではない。今回、朝日新聞は発災当初から大きく紙面を割いて的確に報道していたが、他の報道機関はというと、相変わらず危機感が伝わらない伝え方をしている。それに影響されたのだろう。IRT(国際緊急援助隊)を送ることなく、2500万円の救援物資支援で済まそうとしている。

 だが、日本はこれまで多くの自然災害に見舞われてきた、いわば「災害大国」だ。そして、阪神大震災の時には、世界各地から救助隊が駆けつけたり、巨額の支援が送られてきた。それだけに、日本はそのお返しをする意味でも他の国と同じでは済まされないと私は思う。世界のどこかで大災害に見舞われる国や地域があれば、どこの国よりも早く駆けつけ、篤い支援をすべきである。そして知識と経験を生かして被災地の復旧だけでなく復興までも手助けするのが「筋」というものだ。

 ところが、残念ながら「喉元過ぎれば…」の得意技を持つ日本人は、あの時受けた恩を記憶の中に長く留めておくことができず、大規模災害が他国で起きても「近所付き合い」程度の支援しかしなくなっている。一年前20数万人の命が奪われたスマトラ沖地震がその好例で、未曾有の大災害であったのにIRT-JF(国際消防救助隊)を出動させることなく、送ったのは同じIRTでも医療班だけに止まった。支援額に関しても、最終的に40億円の支援をしたが、最初に決めたのはその10分の1以下。F1ドライヴァーのシューマッハ氏が個人で10億円を超える寄付をしたことに刺激を受けたと言われても仕方がない体たらくであった。
 
 今回の土砂崩れでもIRT-JFの派遣はなかった。外務省や消防庁の人間の中には、マスコミ情報を派遣しない理由にする者がいるが、それは出動をしなかった言い訳に過ぎず、本来なら発災直後に現地との連絡と隊員の召集を同時にかけるべきであった。それでなければ、IRT-JFの「発災から24時間以内に出発」という謳い文句はただの絵空事だ。これは何が問題なのかと言うと、まずIRT-JFが全国からの寄せ集めで当番制になっているから、外務省の担当者は、「もし現地に送っても必要とされなかったら」などといった心配が先にたつことになる。また、民間機に席を探してそこに潜り込ませることも担当者を悩ますシステムである。

 担当者には、たとえ誰も救助できなかったとしても、被災国や被災者から門前払いを食らってもいいから積極的に判断しろと言えば、もう少し違う対応ができたはずである。「現地政府との交渉は外務省」「IRTはJICA」「IRT-JFは総務省」などとお役所的縦割り系統をここでも作ったことが救助活動が思うようにできない原因の一つと言える。

 その辺りのことは、週末に消防大学の救助部門の教官と一献傾ける事に(ただし私は下戸)なっているのでまた報告させていただきたい。

 こういう体たらくを断ち切るためにはどうしたらいいか。それは日本が「災害救助大国」への道に歩みだすことだと私は考える。「災害大国」日本だけが模索できる、いやしなければならない道があるはずである。それは結果的に、我が国で将来必ずや起きるであろう大災害に役立つ形で返ってくるはずだ。
 
 私の構想はひと言で言えば、自衛隊を解体して救助隊に変わってもらおうというもの。20万人の自衛隊員の迷彩服を救助作業服に着替えさせ、武器を救助用資機材に持ち替えて世界で活躍してもらいたいのだ。

 私の構想を聞いて即座にうなずく人は少ないだろう。いや、それどころか荒唐無稽の“平和ボケ”が考える理想論と決め付ける人も多いはずだ。だが、この場ではそう決め付けずしばらくは私の主張にお付き合いいただきたい。

 日本の自衛隊は、陸海空合わせて20数万人規模の人員を抱え、「防衛関係費」だけで約5兆円、「後年度負担(複数年度に渡って契約する艦船などの装備費)」に1兆数千億円が使える。予算規模だけで言えば、世界の中でも指折りの軍隊である。ところが、幸か不幸か、その戦闘能力は自衛隊の諸君に失礼になるが、予算規模に見合うものではない。いくら最新防衛網を整え、ミサイルを揃えても現在の「仮想敵国・中国」相手にまともに戦える戦力を有しているとはとても思えないのだ。それは、隊員一人一人の戦闘能力というよりも「想定」「プラニング」を担う中枢が、中国に比べて大きく見劣りすることが一番の要因だ。これは、米軍関係者の中でも昔から言われている。

 「だからと言って、それがなぜ自衛隊解体論につながるのか」と思われるかもしれない。「非武装で外国から攻められたらどうするか?」と言う声も聞こえてくる。

 そういう方たちに私は問い返したい。自衛隊で本当に国を守れるとお考えですか、と。

 「いや、頑張っていれば、アメリカが駆けつけてくれる」とその人たちは答えるだろう。

 こうなると、そのノー天気ぶりにアハハ、である。そして私は言う。

 「あなたはイラクで何を見たのですか」と。

 米軍は2003年3月19日に対イラク戦争を始めてから約5週間で勝利を確信し、空母「リンカーン」の艦上で同年5月1日、「戦闘終結宣言」を高らかに読み上げたものの、そこから一気に戦況は悪化、ゲリラと化したイラク軍の決死の攻撃の前にたじたじとなった。自爆攻撃を恐れるあまり、精神障害を発症した兵士の数も少なくない。そのような理由から米軍兵士達は今やできる限り人的損害を少なくしようと、警備や巡回の任務は新イラク軍や警察に任せ、自分達は要塞化した基地や駐屯地に閉じこもっている。そんな米軍を見てまだ「頼れるアニキ」と思っているとしたら、その人は政治、経済といった分野を問わず、重要な地位に就くべきではない。

 米軍は、いざ中国と交戦する様な事態になれば、自国の利益を優先するあまり日本を切って捨てることも充分考えられる。もちろん表面上は、日本を支援する側に回るだろうが、米本土に影響が及ばぬように日本を主戦場にするはずだ。中国とて米本土を攻撃して戦火を広げる道は恐らく選ばぬだろう。そうなれば、日本が焼け野原となり、「陽はまた沈む」結末を迎える。

 そんな末路を迎えるよりも、私は自衛隊を解体して世界でも例を見ない救助隊に仕立て上げるほうに力を注ぎたい。防衛予算を半分に削っても予算規模数兆円の世界に例を見ない救助隊ができる。人員をたとえ段階的に削っていって半数にしても10万人だ。輸送手段は豊富だから、世界数箇所で大規模な災害が同時に発生しても素早く大胆な行動ができる。想像するだけでわくわくするような活動ができるはずだ。役割は被災現場だけにあるわけではない。全世界の国々で救助活動の技術を教える役割もある。植林や砂漠の緑化活動支援だって考えられる。そういった活動を積み重ねていけば、日本もやがて海外で高く評価されることになるだろう。

 防衛予算の大幅削減は、今日本が抱える大幅赤字の解消にも役立つ。日本政府は口をつぐんで国民に説明しないが、国全体の赤字額は気が遠くなるような数字になり、さきほど「リアルタイム財政赤字カウンタ」をのぞいてみると、1040兆円を超えていた。

 最後になるが、最悪を想定して日本が外国軍隊に攻め込まれたらどうするかとの問いには、私はズバリ、「そんな救助隊を持って世界に貢献する日本は攻めてこないって」と答える。でも最悪の事態になれば、と迫ってくる人には「無血開城」をすると答える。そして続ける。

 「侵略軍には徹底的なゲリラ戦を行なうのです。その時、私は何をするかって?もちろんその時は愛する家族や街を守るためにもゲリラになりますよ」

 これまで見てきた「現場」での知恵を生かして侵略者を悩ます活動を進んでやることは断言する。たとえ、世界中から「テロリスト」の汚名を被せられても戦い抜くつもりだ。だが、そんなことは最悪の事態だ。そうならないために今、我々は何をすべきか知恵を絞り、他国と協力関係を築いていくのだ。

筆者からお詫び

2006-02-22 11:33:11 | Weblog
 私の視点「救助大国構想」を見直したところ、間違えて草稿中のものを皆さんに提供していたことに気付きました。今書き直している時間がありませんので、今夜時間を見つけて最終版をUPさせていただきます。それまでは、一旦この原稿をブログから削除しますのでご了承ください。

土砂災害について

2006-02-21 02:04:05 | Weblog
 フィリピンの大規模土砂崩れの記事に関して、読者の方から「森林伐採原因説」の指摘が寄せられました。これはマスコミ報道にも散見できる情報ですが、もう少しまとまった情報が現場から入り次第、皆さんにお伝えしてまいります。

フィリピン土砂崩れ 救助隊は出動せず

2006-02-20 16:01:20 | Weblog
 フィリピン・レイテ島で17日に起きた大規模地滑りでは、数千人の行方不明者が出たと言われているが、足場の悪さもあり、捜索活動は難航している。

 そんな中、米海兵隊員数百人と台湾からの救助隊(55人)が場所によっては6メートルもの厚さの土砂と闘って一人でも多くの生存者をと懸命の救出作業を行なっている。台湾の救助隊は「99年の大地震では世界の人たちに助けられた。今度は私たちの番だ」と地元の人たちに言ったということだ。被災者も、最新捜索機器を装備した台湾チームをどれだけ心強く迎えたことだろう。

 台湾がそこまでしたのだ。我が国ニッポンは、阪神大震災で世界各国から熱い支援を受けたというだけでなく、アジアのリーダーを自負する立場だ。「経済大国」の名に恥じぬ対応をしたはず、と言いたいところだが、調べてみると今回もまた恥ずかしくて書きたくない内容だった。まず、ご自慢の「IRT-JF(国際消防救助隊)」の出動だが、外務省は今日になっても私の取材に対して「今のところ考えておりません」と答えるのみ。そして、「緊急物資を送ることにしましたから」と自慢げに言った支援の内容もお粗末なもので、約2500万円の緊急援助物資(テント、毛布、プラスチックシート、スリーピングマット、ポリタンク、浄水器、簡易水槽、発電機)を供与することを決定したにとどまる。

 これまで何度も書いているから読者の中には「もう同じことを読みたくないよ」と言われる方もおられるかも知れないが、私は口をつぐまない、ペンを折らない、キーボードを叩くのをやめない。IRT-JFは、世界の大規模災害に向けて、「24時間以内に集結・出発」を謳い文句に結成された緊急救助隊だ。なのに、一昨年のスマトラ沖地震による大津波災害や昨年のハリケイン災害の時もそうであったが、まるでその役割を果たしていない。これではまさしく絵に描いた餅だ。

 作ってはみたもののどう運営して良いのか分からないのならいっそのこと一度解散してしまったほうが懸命だ。そうでないと、IRT-JFに登録している消防士たちが可哀想だ。彼らは大災害が起きる度に、「いざ、出番だ」とその気になっている。ところが肩透かしの連続にそのやる気もその内そがれていくだろう。

 出動の判断を外務省に任せていることがシステム上の大きな間違いであることは誰の目にも明らかだ。総務省消防庁は外務省からの出動要請を受けて動き始めるわけだが、はっきり言って昔から危機意識に欠けることではお役所の中でも常に「トップクラス」である外務省に、そんな大役を任せること自体おかしいと考えるのだが、皆さんはどうお考えになるだろう?

民主党内にざわめき

2006-02-20 11:53:27 | Weblog
 17日に「3000万円献金疑惑」について書いた中で、民主党の脇の甘さに言及したが、爆弾発言以降の永田議員のうろたえぶりや「二の矢」が放たれないことから来る不安から民主党内にざわめきが起きている。

 確かに、16日の国会予算委員会で暴露したものの、次の質問に立った時には、のらりくらりとはぐらかす小泉首相に、永田議員は「だったら事実ではないことを証明してくれ」と詰め寄った、と言うか、泣き付いた(?)。

 この永田議員、これまでにも詰めの甘い質問をして恥をかくことが何度もあったが、今回の件に関しては、調べが甘かったでしたでは済まされない。自民党、民主党共に党の命運をかけた戦いにまでコトは進展しようとしている。

 不可解なのは、「二の矢」と前述したが、こういう場合、攻撃する側は二の矢どころか三の矢までは用意しておくものだ。つまり、追求する側は相手を立証責任に追い込むために事前に緻密な「情報の裏取り」「展開想定」「法的裏付け」をしておく。ところが、永田議員や民主党幹部のその後の発言を聞いていると、その辺りがどうも危なっかしい。そこで、民主党内からも「本当に大丈夫かよ?」と訝る声が上がりはじめているのだ。中には、「国政調査権の発動に追い込むって意気込んでいるけど、調査して何も出てこなかったらどうするんだろうね」とまで心配する者もいる。

 永田議員のしどろもどろな態度や他の民主党幹部のどこかおどおどした言動が演技である可能性がないわけではないが、もしそうだとしたらそのような作戦は「大きな間違い」だ。固唾を呑んでその成り行きを注目している選挙民を欺く行為である。

 「永田町」でこれまで何度も行なわれてきた「政治的幕引き」も今回は絶対に使って欲しくない。このやり方は、古くは自民党と社会党の間で、今では民主党が社会党に取って代わって行なわれる駆け引きだ。与野党が対立して両者引くに引かれぬ展開にはまった時に互いが傷つかないようにと考えられた裏取引が今回も行なわれれば、選挙民の政治不信は極限にまで達することになる。

 永田町では今、春一番どころか噂の嵐が毎日吹き荒れている。与野党議員が入り乱れての“合コン”があちこちで行なわれ、情報交換が盛んだ。その凄さは、長年の「永田町住人」をして、ひょっとすると政界大改編にまで発展するかもと言わしめるものだ。

 検察側の「次の一手」や「最終的な詰め」が奈辺にあるや気になるところだ。捜査の標的によっては、本当に与野党が分解して「ガラガラポン」と新党結成といったところにまで行ってしまうかも知れない。

 

ため息列島

2006-02-19 11:50:58 | Weblog
 日本列島がため息に包まれている。街を歩いていると、あちらの民家から「ア~」こちらのアパートから「あ~あ」と、漫画の吹き出しのようにため息が漏れてくるのだ。そして、電車に乗れば、「昨日のXX見た?」「見た見た見た。でもがっかりだよね」と女子高生たちまでもがため息混じりに話している。
 以前何かの宣伝で「ため息の数だけ幸せが逃げていく」というような内容のものがあったと記憶しているが、もしそれが事実としたら、この1週間で逃げていった幸せの数はそれこそ計り知れない。
 ため息の原因はイタリアのトリノで行なわれている冬季オリンピックにおける日本人選手の成績だ。これまでのところ獲得メダルの数がゼロと、国民の期待を裏切る結果となっている。
 昨夜行なわれたスケイトのショート・トゥラックでも女子選手が7位という結果に終わり、メダルへの期待はまたもや断ち切られてしまった。試合後の会見で、目に涙を一杯ためて健気に質問に答える彼女を見ていて、彼女への憐憫の情が湧いたのは当然だが、それと同時に何か背筋に不快な感覚をおぼえた。
 それは何かと自問自答してみると、国威発揚という言葉が浮かんできた。競技会場に陣取る日の丸と「必勝鉢巻」の応援団への不快感が強いためかもしれないが、そこにゆがんだ愛国心を見たのだ。スポーツの元来持つ健全性や明朗性とは全く異なった醜い感情が、選手達にプレッシャーを与え、彼らの能力を半減させていることに我々は気付いていない。
 私は根っからのスポーツ好きなだけに、こんな不純な見方をされる状況には異論を唱えたくなる。私は相当なへそ曲がりである。「ドーハの悲劇」と言われるW杯予選の試合の時、日本チームは勝つなとTVに向かって念じていたひねくれものだ。それはひとえに、日本のサッカーの将来を考えての“応援(?)”の仕方だったが、周りからはブーイングの嵐を浴びた。今でもあの時選手やファンが味わった悔しさが、その後の日本サッカーの発展の原動力になったと私は確信している。
 競技者の素晴らしいパフォーマンスを抜きにして、順位ばかりにこだわる騒ぎ方をするのであれば、私は日本選手がメダルを獲得できないことに“応援(?)”したい。そして、うなだれて成田に降り立つ選手団に「よくやった」と声を掛けてやりたい。女子フィギュア・スケイトで誰もメダルに届かなくてもがっかりしないかと言われれば、日本選手が転んだり、こけたりすれば恐らく条件反射的に「アッ」「残念!」と声を上げることは充分あり得る。でも、まあ、ただその部分は、私も人の子ということでお目こぼしいただければ幸いだ。

アホ大臣

2006-02-19 00:31:00 | Weblog
 ANSA(伊)通信によると、ムハンマドの風刺漫画を印刷したTシャツを着てテレビ出演したイタリアのカルデロリ制度改革相が18日、辞任した。
 まあ、この写真を見れば分かるように、間の抜けたアホ面の大臣だ。今回のことがなくても何か不祥事を起こして辞任していたかもしれない。落語の世界に「豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ」とか「うどんで首をつりゃあがれ」と、阿呆に最適なセリフがあるが、この御仁に最適な表現だ。
 イスラーム世界が敏感に反応しないことを願うばかりだが、このような無神経な輩が社会を、そして政界をだめにするのだ(アジアのある国にも同種同類は結構生息している)。イタリア世論が厳しく断罪することを遠くから見守りたい。

お主、いったい何者だ?

2006-02-18 11:57:52 | Weblog
 蛇のように障害物をよけながら進んだり、水中を自由に泳ぎ回るヤツがいるかと思えば、垂直に近い階段を上る蜘蛛男のようなヤツもいる。また、トリノ・オリンピックに出場すれば、間違いなく岡崎選手の悔しい思いを晴らしてくれるであろうスケイトが得意なヤツもいる-そこはもう得意技をいくつも持つヤツらの“隠れ家”であった。東京にこんな場所があったのか。これは日本も捨てたものではないぞと日本の将来に光を見た思いがした。

 一体ナニゴト?それはどんな人の集まり?-読者の皆さんの頭の中は疑問符で一杯になったかもしれない。

 実はこれ、ロボットの研究室の話だ。昨日、東京は大岡山にある東京工業大学に出かけ救助用ロボットの研究を見させてもらった。日本のロボット研究は世界でもトップクラスなのは言うまでもないが、中でも救助用ロボット開発では広瀬研究室(広瀬茂男教授)の活動が今注目の的だ。

 広瀬教授は現在、クロアチアに自作の「地雷探知ロボット」のテストに出かけており、この日は私の若き友人、ミケレに案内をお願いした。Guarnieri Micheleさんはイタリア人。来日6年。ロボット研究にはまって今ではヴェンチャー企業を立ち上げて研究者であると共に経営者となっている。

 このミケレ、こいつがまた素敵な男だ。そして、熱いのだ。ロボットを操作しながら語るロボットへの想い。これが尋常ではない。そして、彼の師である広瀬教授を語る時の情熱も聞いているこちらが嬉しくなってくるほど、まさにほとばしっている。

 「広瀬教授は、ひと言で言えば天才です。アイデアの宝庫です。そして、リーダーとしても最高です。私たち研究生が新しいアイデアを出すと、常に前向きに取り組むように励ましてくれます」

 「イタリアの大学院修士課程にいる時、広瀬教授に師事したいと思いました。周りの人たちは、『あのヒロセさんのところは世界中の若い研究者が狙っている。無理だよ』と言いました。でも、直接連絡を取って思いを伝えると、あっさり受け容れてくれたのです」

 そんな話を聞きながら、冒頭で紹介したような三次元の動きを含めて複雑な機能を披露するロボットを見ていた。

 その後、近くの居酒屋で昼食を摂ったが、そこで交わす意見も楽しくて時間を忘れてしまうものだった。彼の伴侶は日本人女性だが、恐らくこのミケレの人間性に「イチコロ」だったのではないだろうか。

 食後、トイレに行って席に戻り、会計を済まそうとすると、店員から「もういただきましたから」とミケレの方を見て言われてしまった。

 私に昼を奢ってどうするのだ。さらにその後に言ったセリフが泣かせる。

 「もし、失礼なことをしたらごめんなさい」だと。ええええっ、一体こいつ何者だ。