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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

飛行機に乗らないススメ

2005-08-22 13:00:49 | Weblog
 このところ日本を含む世界全体で航空機事故が多発している。報道の中には、航空機事故が不思議なことに連続して起こるために、「細木数子の世界」に話しを持っていくものも見られる。その辺りの話には、私はあまり詳しくないので、ハイハイと聞き流すしかないが、今回の航空機業界の“異変”はそのような「雲をつかむような話」ではなく、原因は見えている。
 航空業界に関しては流れは三つに大別される。
 一つは、4年前の9.11だ。米同時多発テロは、まさしく前代未聞の航空機事件で、多くの人が飛行機に乗るのをためらうようになった。一時的な乗客数の増加は見られたものの全体で見れば、右肩下がりである。
 それに追い討ちをかけたのが石油価格の暴騰だ。NY原油価格を見ても、4年前に比べれば、1バレル27ドルから2.5倍上昇して今や65ドルになっている。日本の場合、円高とエネルギー対策効果もあり、欧米に比べて上昇率は比較的緩やかだから大騒ぎになっていないが、世界的に見れば大変な状況なのだ。
 ならば、航空業界は、「空気を運ぶ(空席を多くして運行する)」よりも値引きして競争する。そうなると、どこにしわ寄せが来るか。
 ヒト、つまりは人件費だ。それと、モノにかけるコストだ。人件費に関しては、最近一般的になったが、航空会社は社員として採用をせずに契約雇用をするところが増えた。それは、われわれが直接目にする客室乗務員だけではない。整備の人間も同様なのだ。ただ、整備に関しては、契約雇用をするというよりも下請けに作業を請負わせる形だ。請負わせておいて、その値段を徹底的に叩くらしい。無理難題を吹っかけられても呑まざるを得ない整備会社は、整備の手抜きで対応するしかなくなってしまう。だから整備現場の状況は、日本だけでなく世界的にかなりズサンだと聞く。10年前であれば絶対に飛ばさなかったケースでも最近は飛行機会社に急かされるままに整備を終えたとして差し出す整備会社も少なくないそうだ。また、飛行機に使われる部品も、今までは耐用年数や回数に余裕があっても代えてきたが、最近はぎりぎりまで使うように指示が出されているという。
 皆さんが生活費を切り詰めて楽しみにして出かける旅行だが、実はこのようにとても大きな危険と隣り合わせである事がお分かりになるはずだ。
 では、どうしたらいいか。どのような対策が考えられるのか。
 それに対する妙案は残念ながら今のところは考えられない。こうなれば答えは一つしかないのだ。それは、今世界の空を飛んでいる飛行機の数を大幅に削減するのだ。NY往復5万円だとか、世界一周10数万円などという数字にわれわれが飛びつかず、2回飛ぶところを1回にするのだ。そうすれば、航空業界の健全化のみならず、環境問題にも結果的に寄与することになる。

“天使”が差し出すもみじの葉

2005-08-22 00:36:59 | Weblog
 千葉に行った帰りの電車の中で人の倒れる音がした。距離にして5,6メートルのところであったので家人に持ち物を預け、音のした方に駆け付けた。
 ドアのところに60代と思われる男性が倒れていた。ほぼ同時に電車は、JR武蔵野線の南越谷駅に停まった。私は彼を背負いプラットフォームの奥に連れて行きその場に座らせた。周囲の人に救急車の手配を頼み、意識の反応と脈拍を取った。名前や住所、現在どこにいるかといった質問にもきちんと答えられ、目の前にいる孫も確認できた。脈拍は1分間にして120近くあり、少々不整脈気味でもあったが、私の応急手当を必要とするものではなかった。
 救急車を呼びに行ったと思っていたのが、駅員を呼びに行ったらしく、駅員が駆けつけてきた。呼びに行ったのが倒れた男性の娘だった。娘の話では、男性は肝臓を患っており、定期的に検診を受けているとのことであった。
 娘は、父親の姿にショックを受け、涙を一杯目にためていた。すると、それまでは気丈にしていた男性は突然、泣き出してしまい、座り直そうとその場で懸命にもがいた。態勢を整えたいのかと身体を支えてやると、男性は私に対して「どうもすみませんでした。ご迷惑をおかけしました」と土下座をするのであった。
 恐らくガンコで堅気な性格なのだろう。懸命に謝ろうとする。私は当然のことだが、謝罪が必要なことではないと落ち着かせようとした。祖父の異変に気付いているのかどうか分からないが、ベイビー・キャリアの男の子が満面の笑顔で男性にもみじの葉のような小さな可愛い手を差し出した。その1歳にも満たない孫の表情の可愛いことといったら「天使の笑顔」としか形容の仕様がないほどのものであった。
 後になって家人から聞いたことだが、この時、周囲に群がっていた見物人の中の中年のオヤジ2人が、「近くにいるからあの2人はパートナー同士かね」「でも、それにしても若いからどうかなあ」「いや、でも奥さんじゃないかな」と噂話をしていたそうだ。
 私がそれをもし聞きつけていたら、2人を離れた所に連れて行き、「ほんと、オメーサンたち、程度が低いぜよ。人を助けることも考えずにそんなくだらねえこと言う奴は下衆っていうんだよ」と“可愛がって”やっただろう。もちろんその後に、「あんたらが喜ぶような年の離れたカップルは、実は俺達さ」と付け加えるサーヴィスも忘れなかったに違いない。
 10分近くして消防の救助隊が駆けつけてきた。警察官も来た。救助隊員に状況を簡単に説明する私に、男性は私の氏名と住所を聞いてきたが、気を遣う必要がないことを告げ、長居は無用とその場を離れた。

筆者注:前に書いたかもしれないが、私は一年に1,2回、このような現場に出くわす。それは、以前浦和(現さいたま)市消防本部で救命救助訓練を受けたことが自信となり、街で異変を感じると時間の許す限りそこに首を突っ込むようにしているからだ。私が受けたような訓練は無理としても、各消防署では市民に「救命講習」を提供している。少しでも多くの皆さんが、そのような講習を受けられることをおすすめする。