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私の視点 英国の人種差別

2005-08-01 12:54:31 | Weblog
 7月7日のロンドン同時多発テロの直後に、英国人の「落ち着きの源」を紹介したが、どうやらそれは「1回限定」だったようで、2週間後の同時爆破には、現場が相当混乱したらしい。それは当局や市民達も同様で、冷静さを失った警察は、“怪しい者(イスラームとは無縁のブラジル人であった)”を撃ち殺してしまうし、市民達も「犯人」と同じモスクや集会所に行ったというだけで警察に「告げ口」するようになった。警察への通報は、5,000件を超えている。
 そして、その後の捜査当局の「ナタを振るう」というよりも「ナタを振り回す」と言った方がふさわしいと思われる常軌を逸したやり方や、街に蔓延した有色人種への冷たい対応を見ていると、「古きよき英国」はどこへやら、2回の同時爆破が英国社会の根底にある人種差別意識を呼び覚ましたように思える。
 140万人とも150万人とも言われる英国在住のイスラーム教徒がどれほど肩身の狭い思いをしているか、現地の新聞やTVを見ていると、その辺りの雰囲気がひしひしと伝わってくる。今朝BBCTVを見ていたら「有色人種を見たら疑え」などという聞く者の耳を疑うような発言が紹介されていたが、どうやらそれはホンの一部の過激な人種差別主義者だけではなく、一般市民にも浸透し始めた見方のようだ。
 市民の間にこのような空気が定着した時、私が恐れるのは、そんな空気に勢いを得たネオナチなどの民族主義に凝り固まったグループが騒ぎ出すことだ。これまで彼らは、市民の支持を得るどころか、どちらかと言えば冷たく見られることも多く肩身の狭い思いをしてきたが、「時は来たり」とほくそえんでいるかもしれない。 そういったグループの中でも国際的にも広く知られている「National Front(以下、NF。民族戦線)」は、人種主義を前面に堂々と打ち出し、移民の影響を受けやすかった貧困層から支持を受け、70年代には全国で2万人の活動家を抱え、地方議会に議員が選出するほどの影響力を有していた。その頃から街中をスキンヘッドで歩く集団は異様な雰囲気をかもし出していた。ロンドン市内で一度彼らとにらみ合いになった事があるが(私も若くて血気盛んだったのです)、幸いにして間に割って入る大人がいて事なきを得た。
 NFはその後、様々な内部抗争を経て分裂と組織改変を繰り返し、1982年に「British National Party(以下、BNP)。英国民族党」が誕生した。NFは現在も存続するが、BNPの傘下の「活動部隊」ような存在である。
 現在の党首であるニック・グリフィン氏は、NFの代表であったが、95年にBNPに入党、4年後に現職に選ばれた。卓抜した指導力とアイデアでBNPは勢力を地道に伸長させている。政界への参加も積極的に行なっており、地方議会にも24人の議員を送り込んでいる。また、PR活動には特に力を入れており、自らのウエブサイトでは、インターネットTV放送も行なっている。TV放送はまだアマチュアレヴェルだがアクセス数はかなり多いとのことだ。時間があれば、ウエブサイトをご覧頂きたいが、今回の同時爆破事件については、当然のことながらかなり激しい表現が目立つ。これまでは聞き流されてきたこれらの過激な発言が、テロに怯える市民達、特に白人住民にとって受け入れやすくなっていることは間違いないだけに、今後の展開に目が離せない状況だ。
 同じような状況に東京が晒されたらどうなるかと考えてみた。ここのところの日本の右傾化は誰の目にも明らかだが、同様の事件が起きれば、そういった動きがより一層加速されることは間違いない。「外国人排斥運動」も起きるだろう。それだけに、「自分のところでは起きて欲しくない」というのが、まことに身勝手であることは重々承知しているが、それが私の正直な気持ちだ。それは、繰り返しになるが、人命がテロで失われることに加えて、この国でも反外国人運動のような動きが起きてしまいやすいからだ。
 「9.11」や「7.7」を東京で起きないようにするには、今考えられる手はただ一つ。自衛隊をイラクから撤退させて、日本政府が、イスラーム社会との関係を「正常化」することしかない。それを実現するにはどうしたらいいか。まず、今噂されている「解散ー総選挙」で勝利を収めることだろう。でも、それでも気になる。民主党が今ひとつ信用ならんのだ。岡田さん、本当にあなたを信用して大丈夫だろうね?