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猛暑から彼の地を考える

2005-08-06 12:05:15 | Weblog
 連日の暑さだ。しかし、周りの人たちは、私の元気に動き回る姿を見て「暑さは大丈夫?」と声をかけてくることはない。私がよほどの暑さ知らずと思っているようだ。
 そんなことはない。私は、35度を超えると暑いと感じるし、熱帯夜は好きではない。どんなに暑くても夜さえ多少の涼風があれば大丈夫なのだが、陽が落ちてからも30度近く気温があると、鬱陶しさを感じる。
 「これまでに体験した気温は?」と聞かれる事がよくある。暑さと聞くと、インド、イラク南部、エジプトの砂漠地帯と国の名は浮かぶが、なんと言ってもイラン南部の砂漠地帯の暑さは格別だ。きちんと温度を測った訳ではないが、気温は確実に50度を超えて、その暑さは肌を刺すというよりも、露出した肌の細胞を一つひとつ破壊していくと言った方が正確か。
 そんな熱さだから軍用車両に乗る取材は地獄の体験となる。ほとんどの戦車や装甲車は旧式のものが多く、エアコンを装備していない。ペンダントやメガネなどで金属製のものを付けていようものなら熱くて5分と装着していられない。トラックや運搬車でも、多少はましだが、暑さはさして変わらない。最初にトラックに乗ったとき、窓を開けようとしたら慌てて止められた。熱風で火傷をしてしまうからだ。だから、窓を閉めたまま移動せざるを得ない。車中はさながら「高温サウナ」だ。当然のことだが、全員無言となる。
 彼の地の猛暑は今サマーワで駐屯する自衛隊の諸君を想起させる。イランより多少はましだとは思うが、それでも日中の気温は50度前後にまで上昇する。まあ、隊員は唯一の仕事であった「水配り」をする必要がなくなり、最近は宿営地の外にほとんど出ていないから、本当の「地獄の苦しみ」は味わっていないが、周囲は日増しに不穏な空気が不気味なものになりつつある。いつなんどき、襲撃を受けるやもしれぬ。万が一、そのような状況に置かれれば、エアコンが使えなくなるし、死への恐怖とあいまって暑さが身体の芯にまで染み渡ってくるはずだ。そうなる前に撤退することになればいいのだが、小泉さんが政権を握っている限り、早期撤退はありえない。
 7月に自衛隊の車列に仕掛け弾が襲ってから隊員の間に不安な表情とひそひそ話が増えたという。そのひそひそ話の話題は今、日本で「解散総選挙」が行なわれるかどうかだそうだ。隊員の少なくない人たちが、民主党が政権を握り、自衛隊の早期撤退が実現されることを内心望んでいると聞く。
 ただ、サマーワの自衛隊員には悪いが、ここのところの言動を見ていると、たとえ「岡田政権」が誕生したとしても自衛隊の即時撤退が実現するようには私は思えない。岡田さん、ブッシュ政権の圧力に悩まされ、政権内の意見の違いにおたおたして舵取りをどうして良いか分からなくなる可能性が高いからだ。
 まだまだ続く猛暑に自衛隊員諸君は、ただひたすらに任務完了日を指折り数えるのが唯一の仕事という屈辱的な役割をただ黙々とこなしていただくしかない。