夢と希望と

そして力と意志と覚悟があるなら、きっと何でも出来る。

細切れの気持ち悪さ。

2015-04-02 | 中身
 これまた私の礎の一つであるファイアーエムブレムというゲームに初めて接したのは、小学生の頃です。購入したのは兄で、凄まじまい集中力を発揮して熱中になって遊んでいたものですから、私としては寂しくなかったと言えば嘘になります。しかしこちらを見て欲しい、私と遊んで欲しいなどと喚き立てても鬱陶しいだけで詮無き事だという程度は、いくら幼くても自明の理として弁えています。そこで、他ならぬ兄が好きなものならば私とて面白いだろうと察しをつけて、兄の横に座り眺めてみた……というのが馴れ初めでした。思えばあまり純粋な動機でもありませんね。兄と共通の話題が欲しかった、並び立てる自分でありたかった、というだけですから。
 何はともあれ、いざ触れてみるとファイアーエムブレムは素晴らしいゲームでした。今となっては星の数ほど溢れているシミュレーションRPGというジャンルの草分けであり、そして初代の時点で既に卓越した完成度を誇っていたのです。もちろんファミリーコンピュータのゲームですから、現在の目で見ればグラフィックはチープです。しかしそんな事は今も昔も、全く問題ではありません。コントローラを握って画面に向かえば、騎馬の嘶きが間近に聞こえ、剣戟が散らす火花まで見えるかのようでした。これは申し上げるまでもなく遊び手の想像力によるものですけれども……それだけ想像力をかき立て、どんな緻密精細なムービーも及ばない、自分だけの戦場を体感できたのは、ファイアーエムブレムにというゲームの持つポテンシャルが尋常ではなかったからです。
 そんなファイアーエムブレムは続編が幾つも作られました。初代とストーリーが繋がったものも、そうでないものも。出来が良い作品も、悪い作品も。私の評価としましては、シナリオならば最高なのは烈火の剣、次点が暁の女神。ゲーム性としては最高がトラキア776、次点が聖戦の系譜といった位置づけになりますけれども……まぁ聖魔の光石と覚醒以外なら、どれも良作秀作以上の出来栄えで、胸を張ってお友達にお勧め出来るものばかりです。

 と、いうような経緯で私はファイアーエムブレムシリーズが大好きであり、これが出るだけでハードウェアごと購入する事に何の躊躇いもありません。そして、今年の6月にこういう新作が発売されるようです。
 ……生活には特に困っていませんし、好きなゲームにお金をかける事は、むしろ望むところ。二万だろうと三万だろうと、喜んで払いますとも。しかし、このような分割商法はシリーズの名を汚すもののように、私には思えてなりません。当然ながらスペシャルエディションを予約しましたが、追加エピソードも含め全て切り売りせず最初から一つのソフトにまとめ、クリアすることで順次解禁されて遊べるようにしてくれたなら、もっともっと気分良く楽しめます。それこそ、お値段の桁が一つ上でも構わないくらいに。
 営利企業ですもの、利益の追求は当然なのでしょう。商売の方法も時流というものがあるのも理解出来ます。私が考え方の古いオールドタイプなのだろう、とも認識しています。オールドタイプばかりを相手にしていてはシリーズは裾野が広がらず、やがて立ち行かなくなるのだろう、とも。
 それでも。こういう商法の作品は、出来栄え以前の問題として作品というより商品の色がより濃くはならないでしょうか。この新作を兄妹で遊び、夢中で語らいやがて己の礎と為す子供が生まれるでしょうか。新作は嬉しいですし、期待もしていますけれども、昨今のこのようなゲームの売り方というものは、ちょっぴり悲しく、寂しく感じたりもするのです。