María Juliana Leone, Mariano Sigman, Diego Andrés Golombek (2020)
『Effects of lockdown on human sleep and chronotype during the COVID-19 pandemic』Curr. Biol. 17;30(16):930-931 (DOI: 10.1016/j.cub.2020.07.015)
動物の体内時計の同調因子としては、光や温度が主なものであるが、哺乳動物やラットなどでは、社会的コンタクトもその一つとして考えられる実験結果がある。
たとえば、ラットやマウスを複数同じゲージで育てると、それぞれの自由継続リズムが相互作用をおよぼして変化する例が知られている。
人の場合は、学校生活、仕事、集団作業などが体内リズムに影響を与えている(下図)。光や温度など本来の同調因子 (Zeitgeber)よりも、むしろこれらが生活のリズム性を支配している。そのために、文明社会では若者のほとんどが、太陽出入りと関係なく夜中の12時過ぎまで起きている。
中国発のCOVID-19(コロナ禍)は、世界中でロックダウンや活動自粛をもたらし、深刻な社会問題を引き起こしている。それによるライフスタイルの変更、外出自粛、自己隔離、社会的距離のために、人々は今までにない生活を送らざるをえない。
こういった社会的脱同調が体内時計にどのような影響を及ぼすか、厳しいロックダウンをしたアルゼンチンで調べたのが、上掲の論文である。それによると、正常な睡眠阻害、就寝や起床時間の遅延、活動中央時間のずれが観察された。
体内時計は人の生理的、精神的健康におおいに関わっている。これの乱れは、免疫力の低下を誘発して、病気のリスクを高める。こういった観点からの対応も今後必要である。
追記 (2022/02/05)
バイオリズム(Bioryhthm)は体内時計を表す科学的な現象であるが、占星術と関連した用語でもある。本屋のコーナーにこの手の本がずらりと並んでいる。会社や工場での労務管理にはどの時刻に身体活動が盛んか、あるいは低下するかを知ってラインの動きを調整する事が重要になってくる。それゆえに生理学としてのバイオリズムの知識は大事なことだ。ところが、鎌田慧著「自動車絶望工場」(講談社文庫2005)には、豊田(トヨタ)自動車の組み立て工場において、占星術のバイオリズムで各労働者の「要注意日」を「計算」して勤務時間を割り当てていたと書かれている(p168)。1970年代の話だが、いまでもそんな事がそんなことしてるのだろうか?
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