京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

COVID-19と各国政策の違いの背景

2020年09月01日 | 環境と健康

 世界中でCOVID-19(コロナ禍)は、深刻な社会問題を引き起こしている。このパンデミック以前の世界が抱えるリスクは、実体経済と乖離した金融経済の破綻、すなわち世界大恐慌、地球環境変動による異常気象、突発的な大国間の戦争などであった。

感染症によるパンデミックは、可能性としては考えられたが、今世紀になってSARS、MARS、ブタインフルエンザなどを押さえ込んできた“実績”もあって、すぐにおこるものとは考えられなかった。1908年のスペイン風邪のようなパンデミックは、科学や医療が進歩した現代世界では起こりえないという幻想のようなものがあったのだ。要するに想定外事項。

 しかし、中国発のSARS-COV-2によるCOVID-19は、世界中で次のような深刻な社会問題を引き起こしている。

ライフスタイルの変更(ロックダウンのよる門限、外出自粛、自己隔離、社会的距離、検疫)

情報過多(陰謀論、起源、規模、徴候、症状、伝染、予防および治療に関する誤報とストレス)

世界的な社会経済危機 (流通阻害、生産停止、渡航制限、職場の危険、スポーツ、文化、娯楽のイベントの延期と中止、パニック買いと買いだめ)

政治外交危機(米中軋轢、独裁国家の権力集中、アジアアフリカ諸国の貧困)

差別問題 (外国人恐怖症、感染者差別、偏見、心理的圧力、疎外、暴力)

医療危機(医療センターや医療機関の崩壊、不信)

 これらの問題は、コロナ禍以前から存在していたが、これを契機に一気に矛盾が吹き出したと言える。Covid-19の感染防止のために、人と物流を止めるロックダウン(欧米諸国)や活動自粛(日本)を行ったたために、経済も文化、教育活動などが止まった。いわば身体の血流を止めたために、潜在的な病巣が悪化して症状として、一挙に出始めたのである。COVID-19はウィルス感染による直接的な健康被害よりも、社会が被った間接的被害がむしろ問題になっている。

直接被害 =Ni x Y+ Nd x X + M

ここで、Niは全感染者数、Yは感染者一人あたりの平均の社会的被害額。

    Ndは全死者数、Xは死者一人あたりの平均の社会的被害額。

         Mは全感染者の治療に要した社会の費用

間接被害 = Nt x Z

           Ntは全人口、Zは国民一人当たりの平均被害額

 近代資本主義社会のリスク学では、この直接被害と間接被害のバランスの上で政策を決定せよという。ロックダウンや自粛をして感染者を減らし直接被害額を抑えると、経済や社会が止まり間接被害が大きくなる。どれぐらいに見極めて制限をかけるのかは、決まりはない。その国の状態によって、為政者が恣意的に決定しているわけである。感染症の捉え方や哲学によっても違ってくる。国によって対処法が違っている背景の構造はこういったところである。実は正解は誰にもわからないのである。

何故なら、政策決定で重要なパラメーターはNiやNdであるが、ウィルスは気ままで場所により、時により、変幻自在で定まる事がない。人間はいつまでこれに振り回されるのであろうか?


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