庭で畑の整地をしていたら、どこからともなく出てきたクサカゲロウ(写真)。指で刺激すると翅を動かして飛ぼうとする。この季節に緑色の動く昆虫を見ると不思議な気持ちになる。
クサカゲロウは成虫で越冬すると言われているが、緑の体色のまま変化なしで越冬するカオマダラクサカゲロウ(Mallada desjardinsi) の可能性が強い。今冬は寒く気温が零下になる晩が多いのに、こんな細い体でよくぞ凍らずに過ごせるものだと感心する。
写真のクサカゲロウの翅は少し土で汚れ、片方の触角が欠損しているが、英語ではgreen lacewingと呼ばれる優美な虫である。もっとも幼虫は背中にゴミを載せて擬態しアブラムシを補食する獰猛な肉食昆虫である。外国のクサカゲロウの一種(Chrysopa slossonae)は被食者のアブラムシが出す綿毛様の物質を掻きとり自分の体に着け変装し、それによってアブラムシと共生するアリの攻撃を逃れて補食効率を高めているそうだ。
クサカゲロウの卵は葉裏などに着いて、憂曇華(ウドンゲ)と呼ばれる柄に植物の種がぶら下がったような奇妙な形をしている。これが何の擬態なのかわからないが、特色のある生活史を示す虫である。庭に放した写真のクサカゲロウが無事に春を迎える事を祈りたい(N3I1)。
月に飛び月の色なり草かげろふ 中村草田男
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