だってだってのおばあさん 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2009-01 |
さきごろ亡くなった佐野洋子さんのコーナーが子ども室にできていて、その棚で借りました。
佐野さんの絵本といえば『100万回生きたねこ』。でもちょっとビターな部分もありますよね。
この絵本は可愛らしい、ホッとできる本でありました。
あるところにおばあさんとげんきな男の子の猫が住んでいて、おばあさんは98歳。
猫は毎日魚つりに出かけて、「おばあさんも さかなつりに おいでよ」と誘いますが、おばあさんは、「だって わたしは98だもの、98のおばあさんがさかなつりをしたら にあわないわ」とことわります。
「だって わたしは98だもの。だからできない」というのがおばあさんの口癖なのです。
ところがおばあさんの99歳の誕生日の日、ちょっとした事件が起こります。
ケーキを焼くのが得意なおばあさんは、手作りケーキを焼いた後、ケーキに立てる99本のろうそくを買ってくるように、猫に頼みます。
ところが、猫は泣きながら帰ってくる。ろうそくを川に流してしまい、残ったのは5本だけだったから。
おばあさんは、「5ほんだって、ないよりましさ」といい、ろうそくをケーキに立ててもらいます。
そうして、ろうそくが5本だから、「5さいのたんじょうびおめでとう」と言って祝います。
そうして、次の朝猫におばあちゃんもつりにいこう、と言われて、いつもの口癖を言いかけて「だって わたしは 5さいだもの……」と口に出たので、そうね、5歳なんだから行ってみよう、と心も変わるのです。
おばあさんはその日、本当に久しぶりに遠くへ行って、いちにち猫と遊ぶのです。5歳の幼い女の子のように。
ああ、たまには5歳の女の子になるのもいいな、と素直に思える本でした。
あとがきに、“たくさんのたくさんのおばあさんに、この絵本を贈りたいのです。でもこれ子供の絵本でしょうって?だって、おばあさんは一番たくさん子どもの心を持っているんですもの”とありました。
でもおばあさんだけにではなく、人生の折り返し地点に立つ私のような年代の女にも、この本は心に響きました。
実際の年齢も、まわりからみる年齢も、変えることはできない。
でも、こころは、ときには自分で年齢を決めてもいいのじゃないかな、と思えたのでした。