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「授業でいえない世界史」 9話 古代オリエント メソポタミア文明~ヘブライ王国

2019-02-03 19:33:27 | 旧世界史3 古代オリエント

※この記事の更新は、「カテゴリー(新世界史1~15)」の記事で行っています。


【メソポタミア】
 今度また、2000年戻ります。どこに戻るかというと、メソポタミアです。
 メソポタミア文明が栄える地域は、三日月地帯と言われます。ここが非常に豊かな地域です。麦が取れるからです。

 でもまっさおとした緑の草原ではない。日本人から見ると、砂漠じゃないのと思うくらいのところです。この周辺は砂漠です。日本のような緑の多いところから見ると、ここは砂漠に見えるけれども、本物の砂漠から見ると、草がポコポコ生えているぐらいのこの三角地帯は天国のように見える。砂漠から見たらここは豊かな土地なんです。日本人から見ると寒々とした荒野のように映るけど、砂漠の民からすると、ここは蜜がしたたる土地です。
 ここを流れる川が二つ、チグリス川とユーフラテス川です。川があるところ水がある。水があるところ文明が発生する。農耕ができるという循環、この二つの川に挟まれた地域が豊かなんです。この地域をメソポタミアという。川に挟まれた地域という意味です。

 一気にまた5000年前に戻ります。紀元前3000年ころです。
 ここで初の国家ができる。作った民族はシュメール人。発音しか分かりません。どんな民族なのかわかりません。シュメールという名前が伝わるのみです。


【都市国家】 国の始まりは中国とほとんど同じです。小さな都市の形をとる。これを都市国家という。ギリシアもそうです。周りを城壁で囲む。
 有名な都市国家として、ユーフラテス川下流のウルがあります。紀元前2700年頃には、そこにウル第一王朝ができます。しかしそれはまだ小さな都市国家です。
 国ができる時には必ず神様が発生します。神様によってまず守られている。これが国家です。守ってくれる神がいない国は恐くて恐くてとても住めない。国と神は深いつながりがあります。
 都市国家の神の象徴がジッグラトという高い塔です。神様はなぜか高いところが好きです。日本の神様だって、鯉のぼりののぼり竿は、もともとは神様が降りてくる竿です。神様はそういう高いところに降りてきます。
 ジッグラトとは聖塔と日本語では訳します。その塔の上に神の住まいを作る。神様が住むところが神殿です。だから塔の上には神殿があります。イラクにはこのウルのジックラトが復元されて建っています。今は砂漠ですが、当時は河口が近く水があったようです。
 この神の言葉を聞くことができる人・・・そんなのウソだろうと思わないでください・・・そう信じられてきた、という話をしているんです。
 これが王になる。だから王の原型は、神様の言葉を聞ける神官です。そして神様は王の言葉しか聞かない。だから神の言葉を聞けたら王になれる。そこで最高神官は神の代理人となりやがてとなります。神様の権威によって王様が発生するということです。政治は政りごと(まつりごと)です。神を祭ることだったんです。
 そしてその神様が神殿とその周りを守ってくれる。そう信じた人たちが都市を城壁で囲む。こうやってやっとひと安心するんです。神が守ってくれる上に、城壁までつくった。これで敵が攻めてきても安全です。
 つまり敵が想定されていたのです。そういう敵の中にいる人間だからこそ、人は集まって住まないと不安で不安で仕方がない。敵がいるから城壁をつくる。平和なところでは壁をつくりません。この時、人間の敵になっているのは獣ではなく人間です。人間が人間の敵になっています。壁ができるのは、人間と人間が争うところ、つまり戦争があるところです。今から1万年前に人間は南米の南端に到達し、他に行くところがなくなりました。
 そんな敵がいるところにオレは住まないと言っても、どこかに敵がいるわけですから、ますます自分だけが不利になるだけです。1人の人間はすぐに敵に襲われてしまいます。孤立したら人間終わりです。だからここに集まって住むしかない。

 こういう都市国家が文明をつくります。その一つの重要な条件が文字の発生です。中国はかなり早く文字を発明し、さらにそれを書く紙を発明した。でもここらへんは乾燥地帯だから紙が発明されません。だから文字は粘土に書く。書くというより、粘土板に刻むんですね。ギザギザをつけて。こうやって書かれた文字を楔形文字といいます。楔はくさびと読みます。粘土を板状にして、それに△□みたいな模様を押す。これが文字になる。

 1年は人間が決めたわけじゃない。これは太陽の運行だから。1ヶ月も人間が決めたわけではない。これは月が地球の周りを回る周期だから。
 でも1週間は人間が決めたものです。7日である必要はない。6日でも、10日でも本当はいいんです。

 では誰が決めたか。はっきり歴史に現れてくるのは、ここからです。7日区切りの人間の生活をリズムとして採用する。1週間はここから発生して、それがキリスト教の母体である旧約聖書に取り込まれます。
 日本には1週間の制度は江戸時代にはありません。だから日曜休みもありません。日曜日は明治になってからです。代わりに多くの祭日がありました。日本に1週間ができたのは、明治政府がヨーロッパの制度の多くを真似していったからです。ヨーロッパが1週間は7日としていたから、明治の日本がそれを真似したのです。
 ヨーロッパはキリスト教です。ヨーロッパの核には宗教があります。それがキリスト教です。キリスト教の聖典である旧約聖書に1週間7日の観念が取り込まれるのは、ここにルーツがあります。



【アッカド王国】
 こういうシュメール人の国家は、500~600年で別の民族に滅ぼされます。日本のように四方を海で囲まれた国と違って、陸づたいに山からAという民族、川の向こうからBという民族、海からはCという民族がやってくる。言葉も違うアッカド人という人々が侵入する。

 シュメール人はどういう人だったか全くわからない謎の民族ですが、アッカド人はセム系だといわれます。セム系・ハム系は世界史でよく出てくる。セム系は大まかにいうとアラビア人です。ハム系がエジプト人です。
 シュメールの国家は紀元前3000年頃ですが、このアッカド王国の征服は紀元前2400年頃です。このアッカド人の王サルゴン1世によってメソポタミアは始めて統一されます。

 では征服されたシュメール人はその後どうなったか。彼らは紀元前2100年頃に一時的に国家を再興し、ウルにウル第三王朝を建てます。創始者はウル=ナンムです。彼は最古の法典であるウル=ナンム法典をつくります。アッカド後のメソポタミアを再統一しますが、次に登場するアムル人によって滅ぼされます。

 その後のシュメール人は、わかりません。全部殺されたのか。多分そうではなくて、被支配階級となってあとは同化していったのでしょう。同化というのは、別の民族と混血しながら民族としては消滅していくことです。しかしそれは予想であって、実際のところはわかりません。

 ただここでは、こういう民族の興亡・混乱を、中国と比較してください。中国のように漢民族によって殷が誕生して、同じ漢民族によって周が生まれ、さらに秦によって統一されるというようには、すんなりいかないということです。国家をつくってもそれは一時的で、次にどんな民族によって滅ぼされるか分からない。油断も隙もないような場所です。
 こういう安定しない国家です。こういう安定しない国家では、国家の滅亡とともに神も殺されていきます。だから神様のありようも違います。



【バビロン第一王朝】

 このシュメール人・アッカド人のあと、3度目にメソポタミアを統一していくのが、セム系民族のアムル人です。
 彼らはバビロン第一王朝をつくります。首都は今のイラクの首都のバグダッド近郊です。バグダッドではないけれども、その近くにあった古代都市バビロンです。シュメール時代のウルから約200キロぐらい上流です。これは神の門という意味です。今は廃墟ですが、そこを首都にして王国を建てた。紀元前1800年頃です。約300年ぐらい続きました。

 建国して100年ぐらい経った紀元前18世紀つまり紀元前1700年代に出てきた王様がハンムラビ王です。

▼古バビロニア

 
 旧約聖書を書いたユダヤ人、ユダヤ人のことはまたあとでいいますが、少数民族ですけど、世界史では非常に重要な民族です。ユダヤ人がわからないとなかなか世界史は分からない。
 ユダヤ人はこの文明を見てびっくりした。庭が空中に浮かんでる、と書いています。バビロンはそんなすごい都であった。よく意味が分からないけれども。
 たぶん高いジッグラトがあって、その上に宮殿を建てている。それを見て、宮殿の庭が空中に浮かんでいるとか、そういう表現をしたんじゃなかろうかということです。これは旧約聖書に記述があります。ユダヤ人と旧約聖書の関係? それは追い追い言っていきます。

 このハンムラビ王は法律を作った。世界初じゃないけれども、非常に早い法律です。これをハンムラビ法典と言います。
 この法律の原則は何か。相手から被害を受けたら、その加害者にも同じ被害を与えてよい。目を潰されたら相手の目を潰してよい。歯を折られたら相手の歯を折ってよい。これをもっと縮めて「目には目を、歯に歯を」という。今こんなことしたら、両方とも傷害罪で刑務所行きです。
 しかし法律の原則はここに記されています。まずはこうなんです。殺されたら殺してよい。憎しみのあまり倍返しなんかしない。これでおあいこです。おあいこのことを難しく言うと、同害復讐と言います。倍返しはダメです。
 この時代は、お巡りさんがいない、裁判所がない。それでどうやって決まりを作るかが問題になる。そのルールが同害復讐です。

 黙っていると悪ははびこるんです。それをどうやって防ぐか、というのが人間の知恵なんです。目をつぶされたら相手の目をつぶしていい。これが正しいと決まったら、次はどうなるか。目をつぶさなくなる。こうやって正義を保つ。

※ 都市が自立性を持ち民族の交流が盛んなメソポタミアでは古くから交易が発達し、都市の神殿が利子を取って『お金』の貸し付けを行っていた。(宮崎正勝 お金の世界史)

※ ハンムラビ法典の第89条は、銀を貸したときの最大利息を2割と規定している。(宮崎正勝 お金の世界史)

※ ハンムラビ法典では、大麦を貸したときの利子は年33%とされ、奴隷の価値も銀の重量単位のシュケルで表示された。(宮崎正勝 お金の世界史)

 このハムラビ法典が書かれた石碑はバビロンに建っていましたが、1902年にフランス人がこれを発見したときにはバビロンから約400キロも離れたスサという場所で・・・のちのアケメネス朝ペルシャの首都ですが・・・ここで発見されました。これはバビロン第一王朝が滅んだとき、滅ぼしたのがカッシートですが、これはカッシートを滅ぼしたエラム人がハンムラビ法典の石碑を持ち去ったからです。
 このハンムラビ法典の石碑には、法律の条文だけではなく、この決まりをハンムラビ王が国の守護神から受け取る絵が描かれていたのですが、それの神様が気にくわなかったのです。神を殺す必要があった。だからエラム人は石碑もろとも持ち去った。
 これは神を殺すことです。国が滅ぶとき、神もこうやって死ぬのです。逆にいうと民族を殺すには、その神を殺せばいい。
 死んでしまう神は頼りにならない神です。そんな神は当てにならない。もっと強い神が欲しくなる。そういう神がだんだんと誕生していきます。このような戦争絶え間ない地域では、神の姿はだんだんと強大化していきます。
 もともとメソポタミアは多神教です。民族ごとに守護神がいて、王はその神を祭る最高の神官でもありました。しかし民族同士が戦い合い、次第に大きな国家を形成すると、戦いに勝った民族の神が最高神になっていきます。そういう点では一神教的要素があります。しかしこの時には本格的一神教のように他の神を排除
することはありませんでした
 彼らはヒッタイトに滅ぼされます。彼らは白人です。彼らは北からやってきた民族です。これがケンカ強い。をもってるからです。木剣と鉄剣といったら、鉄もってるのが強いですよね。それから馬に戦車をひかせて戦います。ヒッタイトはこの二つを持っている。



【エジプト】
 その隣のアフリカにいきます。その頃のエジプトです。これも紀元前3000年だから、2000年たして今から5000年前に国家が誕生する。
 王が非常に強い権力を持っていて、その権力の象徴として作ったのが、ピラミッドです。
これにはいろんな噂があるけれども、本当のことはわからない。何のためにつくったのか。王の墓と言われてるけれど骨は出てきてない。王の谷とか、死体は別の所からでてきてるんです。墓ではないとすると一体なんなのか。よく分からない。

 これを簡単につくれるのかというと、日本最大の建設会社でもさじ投げるほどです。こんなでかい石をどうやって運ぶのか、どうやって持ち上げたのか。どうやって積み上げたのか。現代の建設会社でも尻込みする。こんなものをよくつくったものだ。誰がつくったのか、何のためにつくったのか。
 もしかしたらこれは庶民を養うための古代の公共事業ではなかったのか、という話もあります。


 しかし一般には王の権力の象徴といわれる。王が非常に強い力を持つ。王は太陽神の化身です。世界にはいろんな言い方があります。神の代理人、これはメソポタミアだった。エジプトは神の化身です。代理人と化身とを比べたらどっちが神に近いと思いますか。化身が神様に近いみたいです。

 これがファラオという王様です。神というのはエジプトにはいっぱいいて、古代エジプトは多神教です。これは日本人には当たり前のことです。日本にも神様はいっぱいいる。観音様もいれば、天神様もいて、八幡様も、お地蔵様もいる。神社の神様だっていっぱいいる。
 しかしこのあと、神様は世の中に一つしかあったらいけないという考え方が出てくる。日本にはそういう考え方はないけど、これが一神教です。
 ヨーロッパは今でも一神教です。これがキリスト教です。その前身がユダヤ教です。そのことは、あとで言っていきます。

 なぜエジプト人はミイラを作ったのか。古代エジプトのミイラです。あの世で復活するために体が必要だったからです。体がなければ復活できません。
 ミイラというのは、死後の世界を想定していないとできない。そのミイラを復活させるために、死後の世界を支配するオシリスという神様もまた別にいます。
 太陽神は王に権力を授ける神様となっていますが、その他にも、いろんな神様がいます。だから多神教なんです。
 このエジプトの復活を願う死生観は、キリスト教の「最後の審判」の考え方に影響を与えました。「最後の審判」で許されたものは復活して生き返るんです。つまり彼らは死後に復活して生き返りたい人々なんです。

 これをインド人と比べたらどうでしょうか。全く逆ですよね。インド人は、永遠に続く輪廻から脱出して、完全にになることを望んだ。そのためにいろいろ修行をするのです。つまらないヤツほど生き返るのです。完全に生きなければ、完全に死ねない。完全に生きて、完全に死のうとした。つまり絶対に生き返らないことを望んだのです。
 こういう死後に対する考え方の違いが、多くの文化の違いを生んでいきます。
 日本人はどうなんでしょうか。仏教の影響を受けて「無」の思想に近づいているようにも見えますが、死んだ人が「草場のかげて泣いている」と言うように、死んでもこの世にとどまりたがっているようにも見えます。これは神道流のような気もします。日本人の宗教観は簡単に見えて、かなり複雑です。
 これを日本人は無宗教だの一言で片付けてしまうと、とんでもない間違いを犯すことになります。

 文字もやっぱりエジプト文字ができます。さっきのメソポタミアの楔形文字とまた違う。象形文字といいます。横文字でいうと、ヒエログリフという文字です。

 文字ぐらい、書けばいいじゃないか、と簡単に思うかもしれませんが、そう言うときには、紙の存在が前提になっている。実はこの紙がないんです、
 メソポタミアでは紙がないから、粘土に書いた。エジプトでも紙がないから、パピルスに書いた。これがペーパーの語源です。パピルスという葦みたいなものの表面の皮をタテヨコ織ったものです。しかし今、我々が何気なく使っている紙に比べると、非常に素材は悪い。だからあまり残ってない。文字は何に書くかれるかというのがもう一つの課題です。
 紙の使用が早いのが中国です。中国の方が進んでいます。他の地域にはありません。パピルスがその紙の代わりだったということです。


【一神教】 紀元前3000年からエジプトの王権が始まって、紀元前14世紀ぐらいになると、アメンホテップ4世という王様がでてきます。この人の名前に注意です。アメンと言う言葉がある。これは神様の名前です。もともとこの王は、アメン神が大好きだと言っていた。しかしアメンを祭る神主さんたちがだんだんと強くなって、王と対立しだした。
 それでこの王は考えた。別の新しい神を作ろうと。そしてこの新しい神しか信仰したらいけない、ということにしよう。こういうことを歴史上最初に考えたのはこの王です。これが一神教の発想です。その神がアトン神です。
 アトン以外に神はない、この神だけ信じろ。それでアメンホテップという自分の名前がいやになった。だから名前を変えます。新しい名前がイクナアトンです。名前にアトンが入っています。アメンからアトンに自分の名前まで変更します。アトンだけ信じろ。それ以外は神様を認めない。これが一神教の発想です。
 しかしこの一神教の政治は成功したのかというと、次の王様、この王は墓から黄金のマスクでてきて、ものすごく有名になったツタンカアメンです。
 黄金のマスクのことを言いたいのではありません。ツタンカアメンという名前に注意して下さい。アメンがあります。元の神様に戻っているわけです。アトンが消えてアメンが復活しています。これで史上初の一神教の試みは失敗したことがわかります。

 しかし、ここで世界最初の一神教的発想が登場したということが大事です。これを見ていたのが、当時エジプトに奴隷として住んでいたユダヤ人です。



【インド=ヨーロッパ語族】 またイラクあたり、メソポタミアに行きます。メソポタミアに新たに侵入しはじめたのが、ヒッタイトです。彼らは白人です。ヨーロッパ人と同じです。この民族を語族でいうと、インド=ヨーロッパ語族といいます。

 インド語とヨーロッパ語というのは全然違うみたいですけど、言葉としては親戚です。インド=ヨーロッパ語の分布帯というのはヨーロッパからインドへと長い帯を引いて続いています。インドに侵入したアーリア人も、インド=ヨーロッパ語族です。インド=ヨーロッパ語族の分布の帯は、こうやって民族が動いた後です。
 彼らはもともとは、インド北西部の中央アジアつまりアジア大陸の真ん中あたりに住んでいたようですけど、何らかの事情で移動し始めて、西に行けばヨーロッパ、東に行けばインド、南に南下すればこのオリエントに移動する。
 いま話しているのはオリエント地域です。オリエントとは、ヨーロッパ人から見て東の方、日が登る場所という意味です。今の中東地域です。



【ヒッタイト】
 そこでこの地域で初めて王国を築いたのが、さっきでできたヒッタイトです。国の名前もヒッタイト王国です。彼らが建国したのは今のトルコです。トルコの場所は、黒海から突き出しているところ、出べそのように天狗の鼻のように出ている。そこに建国した国です。そしてギリシアのすぐ東です。

 別名はアナトリア地方です。これが今のトルコです。彼らヒッタイトはケンカがめっぽう強かった。それは、当時まだ普及していなかったを使って、それで武器をつくれたからです。
 一気に人の三倍ぐらい強くなった。そしてそういう刀を馬に乗りながら振り回す。相手は怖くて怖くて仕方がない。馬にチャリオットというリヤカーを引かして、そのリヤカーの上から刀を振り回す。危ない危ない。
 昔、ヤーヤー我こそは、と言って、古式ゆかしく日本人が戦っていたような戦争から比べれば、荒い、荒い。日本人はちゃんと礼儀正しく、名前を名乗って、親父の名前まで名乗って、それからオレでいいかという了解のもとで、それではやりましょうといって、命を賭けて戦った。
 それと比べたら仁義なき戦いです。戦争方法が大きく変化した。これが紀元前1700年頃のオリエント世界です。
 そのヒッタイトの他にも、ここら辺、地中海沿岸にはいろんな民族が、あっちこっちから押し寄せてきます。この時代には、メソポタミア北部ではミタンニ王国、メソポタミア南部ではカッシート王国という国が誕生します。彼らは民族系統不明です。
 カッシートはバビロン第三王朝としてバビロンを制圧します。このように一つの都市が何度も別の王朝によって支配されます。一つの古代都市遺跡が、一つの王朝だけのものではない、ということはよくあることです。
 そして、ヒッタイトミタンニカッシート、それにエジプトを加えてこの四つが、お互い覇を競い合います。

 

▼前13世紀頃のオリエント


 しかしこれを統一するのは四つの国のいずれでもなく、ミタンニに支配されていたアッシリアです。これはティグリス川上流の国です。これは後で言います。


【フェニキア人】 今のパレスチナ一帯、世界のヘソの今のイスラエルあたり、地域でいえばパレスティナ、国で言えばイスラエル、このあたりには、いろんな民族が押し寄せて来ます。彼らの一つをフェニキア人といいます。

 どうも海で活動している海賊みたいな人々だったらしい。この人たちは、海賊のくせに頭が良かった。そして文字を作った。これがアルファベットです。アルファベットって何ですか。英語の時間に使っているabcdのことです。
 abの代わりに、aはα(アルファ)と書く、Bはβ(ベータ)と書く。つまりαとβから始まる。だからabcdのことをアルファベットといいます。これがヨーロッパ文字の原形になる。
我々がabcdを勉強しなければならないのは、彼らがabcdという文字をつくったからです。



【ヘブライ人】
 それからヘブライ人、彼らは後にユダヤ人と呼ばれるようになりますが、この当時はヘブライ人といわれていた。20世紀でユダヤ人といえば、ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺で有名ですけど、今でも彼らは世界史のヘソです。

 彼らは今は大金持ちです。アメリカのニューヨークのウォール街では10人に2人はユダヤ人だといわれている。お金を持ってる。1兆円、2兆円の金を一日で動かしている。世界経済の中心にいる人たちです。
 でもこの時は非常に貧しくて、生活の糧を求めて一部はエジプトへ移住して、食うや食わずでどうにか生き延びていた。しかし彼らのエジプトでの生活は苦しくて、ほぼ奴隷化していた。
 そうすると、こんな生活はもうイヤだと思う。このあたりは、民族の競合が激しくて、強い民族がやってくると弱い民族は叩かれて、下へ下へと押し込まれていく地域です。
 日本のように島国で、ほとんど民族が入ってこない地域ではそういうことは起こりませんが、彼らは油断も隙もないようなところで奴隷となって生きている。そしてあらゆるところから異民族が押し寄せてくる。だから生きるのにやっとなんです。生きるためならどんなことでもしていこうとする。
 ユダヤ人は、百年ぐらいエジプトで暮らしたけれども、全く生活が良くならない。こんなエジプト抜け出そうぜ、そういうリーダーに引っ張られて集団でエジプトを逃亡する。
 こういう大脱走が、紀元前1250年頃起こった。なぜそれがわかるか。旧約聖書に書いてあるからです。オレたちの祖先はこんなことをして生き延びたんだと言うことを書いています。この事件を「出エジプト」といいます。これは事実だとされています。
 ユダヤ人・・・このときにはヘブライ人と言いますが・・・何万人というヘブライ人を率いてエジプトから脱出した。その指導者がモーセです。
 伝説として、目の前の海を渡ろうと、モーセが呪文を唱えて、海よひらけと言うと、海の水が真ん中だけ分かれて、道ができて渡って行った。
 これが何を意味しているかは分からないけど、そういうのが映画になったりして、有名なシーンになっている。そんなもんウソだろうというと、宗教上のことだからなかなか触れられないところがある。


【十戒】 目指すはエジプトからイスラエル地域です。国で言えばイスラエル、地域でいえばパレスティナです。そこを目指した。
 日本から見れば砂漠みたいなところですが、砂漠の住人から見ると、蜜のしたたる地域です。緑があるじゃないか、と感動ものです。砂漠の民から見れば、こんな所に住めたらいいなと思う。
 その途中でモーセは自分たちが信じる神様から、十の戒めつまり「十戒」を授けられた。その1番目に何と書いてあるか。「オレ以外の神を拝むな」です。これが一神教の発生です。
 この話がホントかどうかは知りません。そういうふうにキリスト教世界では信じられています。根拠はユダヤ教の聖典である旧約聖書にそう書いてあるからです。



【ヘブライ王国】
 ちゃんと神を信じれば救われる、という教えなんです。それで、彼らは紀元前1020年にやっと念願の国を作ることができた。これをヘブライ王国といいます。ユダヤ人初の国家です。この首都が・・・首都と言ったらいけないけど・・・中心都市がエルサレムです。

 しかしこの国にも宗教上の対立があって、紀元前922年頃に北と南に分裂する。北は名前を変えてイスラエル王国と名のります。今といっしょの名前ですね。逆にいえば今の国名イスラエルはここからきます。この国はもう一つ別の神を拝もうとした。
 南はユダ王国という。ユダヤ人という名前はここからくるんです。彼らはかたくなに1つの神のみを拝もうとした。

 しかし北のイスラエル王国は短命で紀元前722年に滅ぼされる。メソポタミアから攻めてきた国、アッシリアに滅ぼされます。
 それを見ていたユダ王国の人々は、別の神を拝もうとしたから滅ぼされたんだと思う。自分たちの神への信仰をいっそう強めます。


【バビロン捕囚】 南のユダ王国はこのあと100年ばかり生き残る。しかしやはり滅ぼされます。滅ぼしたのは新バビロニアです。紀元前586年のことです。

 国が滅ぼされるということは、女は犯される、子供も殺される、男はまっ先に殺される。殺すのが一番簡単ですから。そうでなかったら捕らえて捕虜にする。そして連れて帰って奴隷にして働かせる。古代ではよくあることです。
 だからこういう目にあった人は他にもいっぱいいるんです。しかしその多くは消滅しているから歴史に残らない。だからユダヤ人もそういう目にあうんだけれども、彼らは消滅しないどころか、今では世界の中心都市でお金持ちになっている。
 だから特にこれがクローズアップされるのです。彼らが新バビロニアに滅ぼされた後、新バビロニアの首都バビロンに連れて行かれて奴隷にさせられる。これをバビロン捕囚といいます。
 そこで約50年間、奴隷として使われた。この間彼らは何を考えたか。オレたちを奴隷にした神はダメな神だとは考えない。
 この教えは「信ずる者は救われる」です。この言葉、よく聞きませんか。しかし自分たちは救われてないと彼らは思った。
 では救われてないのはなぜか。信じる者は救われるんです。でも救われていない。救われないのは信じてないからなんです。こういう発想をするんです。
 すべては信じる側の責任なんです。それまでの宗教は神の責任を保持しています。民を救えない神は、捨てられるか、殺されていきます。しかし一神教は神としてのすべての責任を、信じる側の責任に転嫁することに成功した宗教です。
 もっと信じろ、救われないのは信仰が足りないんだ、という発想です。信じても信じてももっと信じろと言う。救われないのは信仰が足らないからだ、と彼らは考えたんです。これが定着すれば、強靱な一神教が出来上がります。
 どこまでも信仰していかないと気が済まない。信仰しても信仰しても不安になる。これが一神教です。これがのちのキリスト教の母体になっていきます。なぜそこからキリスト教が生まれるか、それはまたイエスの誕生のところで言います。

 こうやってバビロン捕囚の間も、彼らは神への信仰は失わなかった。他の神を拝んではダメだ、と言った神様を信仰し続けた。この神様、名前はヤハウェという。この神様がのちのキリスト教の神です。


【ユダヤ教】 その後ユダヤ人はどうなったか。彼らを連れ去った新バビロニアを滅ぼす国が出てくるんです。これがあとで出てくるアケメネス朝ペルシアです。

 ユダヤ人はこれが大好きです。なぜか。奴隷身分からも解放してくれたからです。そして故郷へ帰って良いぞ、帰国まで許してくれた。前538年のことです。それで彼らはイスラエルに帰った。ばんざいです。ペルシアさまさまです。
 そういう苦しい奴隷生活をしていた50年間で、じわじわと形を整えてくるのが、彼らユダヤ人の一神教信仰です。これをユダヤ教といいます。ユダヤ人というのはこのユダヤ教を信じている人です。
 バビロン捕囚から帰国した後、エルサレムに神殿を再興し、今までの教えをまとめて本格的なユダヤ教が成立します。その聖典が「旧約聖書」です。その中には彼らがバビロンで見た「バベルの塔」や「空中庭園」の話が形を変えて織り込まれています。


【一神教】 

 この世界に一つしかないはずの神様の本名がヤハウェです。変な読み方です。YHWH、こういう書き方です。母音がないから、これ本当は何と読むかよくわからない。ヤハウェだろうといわれます。ヤハウェでも、エホバでもいいけれども、これは強い一神教です。

 神様、仏様、観音様、幸せにしてくださいなどと拝んだらダメです。三つも神様を拝んだら罰が当たる。神様は一つの神様だけにしろ、観音様なら観音様だけにしろ、というのが一神教です。

 このヤハウェというのは戦争神です。イクサの神様です。だからちょっと怖い。戦争神なんてものがあるのかというと、日本でも戦争神はあるんです。
 武門の神様というのは八幡神です。八幡様という神社があちこちあるでしょう。あれは武門の神様です。戦いの神様つまり戦争神です。
 戦争に勝ちますように。俺たちを守ってください。それが戦争神です。戦え、オレが守ってやるから、死んだらどうするのか、天国に行かせてやる、そんなら戦おうかな、という感じですね。これが戦争神です。
 この旧約聖書を読んでいくと、と言ってもこれはなかなか読めない。一冊400ページで20巻ぐらいある。ちょこっと読み始めたけど、最初の3ページで眠たくなってしまいました。とにかく長い。これが旧約聖書です。のちに出てくる新約聖書は一冊ですが。
 旧約聖書を読んでいくと、度重なる戦争です。いろんな街を破壊していく。その誇らしげな記録です。戦って戦ってパレスチナを自分たちのものにしていった。
 彼らユダヤ人が生きた時代は、民族同士の危機的な戦争があります。戦争に負ければ、いつ自分たちが奴隷身分に落とされるかわからない。社会の前提に奴隷制がある。一神教が生まれる背景にあるのはこういう厳しい社会です。


【救世主】 彼らも生きるのに必死です。そういう苦しい生活の中で、彼らは何を求めるか。スーパースターの登場です。これが救世主です。ヘブライ語でいうとメシアです。ではギリシア人はこれを何と言ったか。キリストと言ったんです。のちのイエスさんがそれです。

 救世主などいるものかと思っても、これは今でも形を変えてけっこう人気です。20世紀のアメリカ映画か生んだ救世主がいる。スーパーマンです。スーパーマンは地球を滅ぼす悪と戦って救ってくれるでしょう。これは救世主の発想です。今でも人気がありますね。これが一神教の発想です。
 日本にはこういう発想はない。でも戦後になってアメリカの影響で、日本でもウルトラマンとかが出てきた。ウルトラマンが、日本を征服するような悪と戦って、悪を追い払ってくれる。あれはスーパーマンの発想です。
 戦後アメリカに占領されて、日本もちょっと似てきました。しかしもともとあるのはアメリカのスーパーマンです。キリスト教世界は今でも救世主が大好きです。アメリカもキリスト教です。


【選民思想】 ただ、ユダヤ教の救世主は全世界を救うんじゃない。ここが今のスーパーマンと違います。ユダヤ教のスーパーマン思想の裏側には選民思想があります。

 救世主が現れた結果、全世界が救われるんだったらまだしも、ユダヤ人だけが救われて、あとの民族は死んでしまうんです。それでいいのか、という話ですけどね。
 ユダヤ人は、昔から人にお金を貸して利息を取ります。金貸しは非常に卑しい仕事とされてきたんです。ユダヤ教も実は利息を禁止しています。しかしそれが他の宗教と違うのは、禁止してるのはこのユダヤ人の仲間内だけです。ユダヤ人以外には貸してよい、と逆に勧めている。
 ただユダヤ人の仲間内では利息を取ったらいけない。ユダヤ人同士は金の貸し借りをしても、利息を取ったりはしない。反対に他のヨーロッパ人からは利息を取ることが許されています。
 ほかの民族はどうなろうとユダヤ民族だけは救われる。救世主が現れてユダヤ人だけを救ってくれる。これが選民思想です。

 旧約聖書にはそういう物語があります。洪水が来てノアという人だけ救われた話です。ノアの方舟です。大雨に襲われ大洪水が起きたとき、船をつくった善良なノアだけが救われて、ノアを信じた鶏さんとか馬さんが救われて、あとの人間はみんな死んでしまった。めでたし、めでたしというお話です。

 脚色して何となくいい話になっているけど、根底に流れている思想は、けっこう怖い。ノアだけが救われ、あとの人はみんな死んでしまいます。だから我々はこのノアの子孫です。でもそれはユダヤ人のことです。私はユダヤ教徒ではないから、少なくともそうではない。
 こういう思想が、全何十巻と延々と書いてあるのが旧約聖書です。これがユダヤ教の教典です。ほとんど戦いと苦難の歴史の連続です。


【裁く神】 前に言ったように、その中の十戒の第一条に「オレ以外の神を拝むな」と書いてある。ほかの神を拝んだらいけない。

 これがあとにキリスト教につながっていくんですが、その発生地点はヨーロッパではありません。ローマでもない。
 一神教は裁く神です。戦いの神です。しかも部分的にしか救ってくれない神なんです。恵み豊かな神ではなく、砂漠の神です。オリエントや砂漠地帯から発生したんです。


【偶像崇拝の禁止】 それだけ神というのは恐ろしいものです。人間の比じゃない。だから神様を人間の形で彫ったらダメです。ここがギリシア人とちがいます。

 ギリシア人は神様はなんでも人間の姿に彫った。キリスト教は、今はマリア様の像とか、キリストさんが磔にされた十字架の像とかを今は拝んでいるけれども、あれはキリスト教の原型ではないです。
 神の像を彫るなんてとんでもない話です。神の像を彫ってはならない。これがもともとの一神教の教えです。神の像を拝むというのは偶像崇拝といって、このあとも非常に嫌われる行為です。「神の像を刻むな」とモーセの十戒に書いてあります。これが偶像崇拝の禁止です。
 日本は仏さんの像を拝むから、なんでだろうと思うかも知れないけども。仏教も最初は仏様の像はありませんでした。でも仏教は像を彫れとも、彫るなとも書いてありません。つまりどっちでも良いわけです。
 これで終わります。ではまた。



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