ノーベル賞作家の大江氏が、2006年4月から12年3月まで朝日新聞に連載した同名のコラム72編を集めた一冊。
それにしてもノーベル賞作家という人は、物事を著わすのにどうしてこうも回りくどい言い方をするのか、と少々辟易しながら「忍」の一字で読了しました。
この6年間、毎月1回同紙に掲載されていたので、時々は読んでいたのですが、大抵はチンプンカンプンでした。それが今回は72編もまとまって1冊を為しているわけですから、それは大変でした。
題名は、障害を持って生まれた長男光氏のために世界のすべてを定義しなおすとしたことに由来するとか。
一方、このコラムは、単にノーベル賞作家が世相についてあれこれ言うというのではなく、憲法問題では「九条の会」の呼びかけ人として、また、原発問題については、自ら「廃炉」をめざして集会を組織するなど、「行動する文化人」の著作として高く評価できます。
例えば、09年8月、菅首相が広島の平和祈念式典に参加して、「唯一の被爆国である我が国は、核兵器のない世界実現に向けて先頭に立って行動する道義的責任がある」との式辞を朗読しながら、直後の記者会見で「核抑止力は引き続き必要」と述べたことに異議を唱えています。
本件は小生も、同年8月9日の記事に書きましたが、こうした小生ら庶民の気分を正しく代表している点で、「定義集」の持つ意義は極めて大きいと思います。