田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

二本指のピアニスト

2008年02月09日 | ギャラリー

2月9日

予報を裏切り、今日のニセコは曇天です。
スキーに行こうと身構えていたのですが、肩透かしをくった感じで
PCに向かっています。

ご存知の方も多いと思いますが、先日、横浜在住の若いお母さんが
藤沢市の高層マンションから幼児二人を次々と投げ下ろした後、自分も
投身自殺をするという痛ましい事件がありました。

何がそこまでこのお母さんを追い詰めたのか、当地ではその後の報道が
ないのでわかりませんが、このような痛ましい事件を回避できる道がな
かったのか、思い悩んでしまいます。

ところで、この事件の対極にあるような掲題の本を読み、心から感動し
ました。

この本の筆者、ウ・カプスン(禹甲仙)さんは、看護士として働いていた
病院で、入院患者の傷痍軍人と知り合い、周囲の反対を押し切って結婚。
8年目に妊娠するも、前後して服用した風邪薬と酔い止めの薬か、ある
いは、夫が痛み止めに使用していたモルヒネの影響か、長女のイ・ヒア
さんは先天性の障害をもって生まれて来ました。

イ・ヒア(李喜芽)さんは、1985年生まれの22歳。韓国国立再活福祉大
学生ですが、目下は休学してピアノの公演活動に専念しています。

あざらし型奇形児として生まれ、両手の指はそれぞれ2本づつ、両足は
膝から下がない。5歳からピアノを習い始め、7歳で全国規模の学生音
楽コンクールで最優秀賞を獲得。シドニーパラリンピックや世界原子力
会議、韓国大統領主催のパーテイに招かれて演奏したほか、米国、カナ
ダ、イギリス、日本などで公演ツアーを行っています。

母親のウ・カプスンさんは言います。

 ・ヒアのように、そしてヒアが大変尊敬する乙武洋匡さんのように四肢
 が不満足な子供たちも、その瞳はきらきらと輝いていて、私たちを暗
 闇から救ってくれます。ヒアの明るさに、私がどれだけ助けられたか
 わかりません。”子供は大人の父である”といいますが、ヒアといる
 と、この言葉が真実であるとしみじみ感じます。

 ヒアがショパンの「幻想即興曲」に挑戦しようと決めてから完成させ
 るまでには、本当に長い時間がかかりました。そんな難しい曲を弾く
 能力はないと、先生たちからは何度も言われました。

 でも、ヒアは指の数や知能の代わりに、私よりもはるかにすばらしい
 忍耐力を持っていました。その忍耐力でピアノを1日10時間以上、
 5年間ずっと練習し続けて「幻想即興曲」を弾けるようになったので
 す。

 人は最初から能力を持って生まれてくるわけではありません。
 ただ、その人だけの特別の役割を与えられて生まれてきます。ヒアは
 神様に感謝しながら、いつもこのように言っています。

 ”指が2本しかないことに悲しまず、あることに感謝している。みんな
 もあるものを最大限に活かして、喜びにあふれた幸せな生活を送っ
 て欲しい”と」

この本は、人間の持つ不屈の精神、忍耐力、愛、善意、神などという、
現代の日本人が忘れかけている大切な事柄を思い出させてくれるに
十分過ぎる内容を持っています。一読をお勧めします。