プロ野球スト中止を伝える論評がマスコミ各社から配信されているが、その中で今後も含めて最も的確に伝えているのがこの記事であったように思う。
ひとまずストはなくなったものの、現実にオリックス・近鉄の合併は決定した。このことだけは事実。そして改革への扉が開いた。いよいよ新規参入問題に移るのだろうが、まだまだきな臭い動きが見え隠れしている。これからは、選手会ではなくプロ野球ファンが注視する必要があるのではないか。いま、始まったばかり、難題は山積している。
「表層深層」 プロ野球スト中止
▽争点は早々と決着
プロ野球の労使交渉が23日、妥結。第2波のストライキは中止となった。オリックスと近鉄の合併合意発表から3カ月。一時は10球団による1リーグ制が現実味を帯びた球界再編は、世論も味方につけた労働組合・日本プロ野球選手会の抵抗にあって、大きく流れを変えた。日本中が注視した「野球選手の闘争」は、来季からの新規参入を認め、セ、パ各6球団による2リーグ維持に道をつけて収束した。
▽選手分配法に時間
22日の交渉で「妥結」の方向が打ち出された後の最終ラウンド。午前11時開始が1時間以上遅れて、周囲がまずやきもき。早期決着が予想されたのに交渉は長引いた。
「結論先送り?」「また決裂か?」などと、名古屋市内の交渉会場では一時、緊張感も走った。だが選手会の立浪和義副会長によると「会議の開始遅れは、弁護士が文書作成に時間がかかったため」と説明。別の関係者によると、交渉が長引いたのは「合意書6項目目にある、新規参入球団への選手分配方法で大幅に手間取ったからだ」という。
前週のスト決行の要因となった最大の争点「来季からの新規参入受け入れ」「セ、パ12球団維持」は、22日の協議で大筋が固まり、この日の交渉再開直後に早々と決着していたという。争点は新規参入時期から、その受け入れ方法に移っていた。
▽巨人ひょう変
流れを変えたのは、間違いなく前週のスト決行だった。スト期間中、懸命にファンサービスに努め、あらためて世論の支持を拡大した選手会に、経営者側も危機感を深めたようだ。
経営者側の決定打となったのは、巨人の態度軟化だった。前週は「2005年から(新規球団を)増やすことを約束すれば、審査がフリーハンドでできなくなる」(清武英利代表)と強硬に新規参入に抵抗した巨人が、今回は「公正な審査をした上で(球団の)数が増えることは全く問題がない」(同代表)と一転させた。
球団合併、さらに1リーグ構想で巨人と同調していたオリックスも追随。「オリックスは新規参入を認めれば、合併の意味がなくなるから、前週の交渉では最後まで強硬だったのに…」(経営者側関係者)と球界内部でも驚くひょう変ぶりだった。
▽1リーグも収束?
1リーグ派の中心だった巨人、オリックスの方針転換の裏で何があったのかは、まだ誰も語っていない。しかし球界内部では「楽天の目まぐるしい動きと何らかの関連があったのでは」との憶測がささやかれている。
楽天の三木谷浩史社長は、本拠地希望地を急きょ、関西から仙台市に変更することを22日の労使交渉再開に合わせるように発表。先に加盟申請したライブドアと競合する形で新規参入競争を加速させた。
三木谷社長は22日の会見で「球団の関係者から(楽天の加盟申請が)認められるんじゃないかとの感触を得ている」と述べた。楽天側が、事前にプロ野球組織側の誰かとコンタクトしていたことを示すコメントで、この水面下のルートが巨人やオリックスの態度変化ともつながっているとの推論が成り立つ。
選手会が最も警戒していたのは巨人、オリックスが固執していたとされる「球界縮小案」の再燃だった。1リーグの亡霊が再び登場する懸念は消えていないが、球界再編の第1ラウンドはひとまず収束。来季に向けては「12球団維持かそれ以上で、ファンに喜んでもらえるシステムが確立された」(選手会・古田敦也会長)。(了)
[ 共同通信社 2004年9月23日 21:03 ]