徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

夏季展 明代陶磁と能装束 @畠山記念館 

2006-09-05 | 美術
夏季展 明代陶磁と能装束
2006年8月15日~9月18日
畠山記念館  

重美 篠虫図 伝 趙昌筆;扇面月兎画賛 本阿弥光悦筆;重文 金襴手六角瓢形花入;万暦赤絵輪花共蓋水指 ;重美 古赤絵刀馬人文鉢など



  • 扇面月兎画賛 「袖の上に誰故月はやとるそと 餘所になしても人のとへかし(新古今巻十二、恋二 藤原秀能」本阿弥光悦筆; 西洋でもトンド形式にどのように構図を描くかは、巧拙がでます。しかし同様に扇面にどう図柄を描くか、これは日本や中国だけの様式。光悦は、小さな円で月を描くことをせず、扇面の半分を大きな円(の一部)で覆うように描いてみせます。その月の円弧で扇面を斜めに分けているのです。光悦は、何と大きく月を扇面の中に描いたのでしょうか。何と上手に扇面を緑と金に上手に分割したのでしょうか。大きな金色の月と緑色の地にはねる兎。風流です。九鬼家伝来。伝世品が少ないとされる光悦絵画のひとつ。

  • 秋萩図 尾形乾山筆「たち残す錦いくむら秋萩の花におくある宮きのゝ原」;乾山の書と萩の図。状態がすばらしい。

  • 蕎麦茶碗 銘 螢;淡いオリーブ色の釉薬に、縁から見込みにかけて、明るい褐色の釉薬を掛けています。
  • 村田一斎作共筒茶杓
  • 備前茶入 銘 午枕 江雪宗立添状
  • 志野花入 鴻池家・三井家伝来;志野の花入は少ないそうだ。現存は本品と逸翁美術館の「柑子口花入」の2点を知るのみ

  • 黒樂茶碗 馬たらい 樂一入作 樂了入箱書;平樂茶碗

  • 重要文化財 金襴手六角瓢形花入 加藤半蔵庵旧蔵 明時代;舶来の金襴手は、造形から素晴らしいです。HPの写真を見てついつい畠山美術館に足を運びました。

  • 重要文化財 染付龍濤文天球瓶;景徳鎮 官窯;明時代;

  • 重要美術品 古赤絵刀馬人文鉢 鴻池家旧蔵;この古赤絵。見込みには仙人、周囲には4匹の馬が描かれます。赤とすこし緑を入れて表現は見事。外側の文様は、優品の一言。刀を射しながら馬に乗る武士が描かれる。生き生きと描かれ今にも飛び出しそうだ。刀馬人とは三国志に因む人物の意匠のこと。

  • 唐物南京玉入藤組手付茶入 明時代;
  • 万暦赤絵輪花共蓋水指 藤田家伝来 明時代;
  • 遠州好棚 桂宮家伝来 江戸時代;
    この遠州好棚の中段に水指、上段に茶入が飾られていた。
    水指が優品、捻り六角形の筒型の水指。変形の花形の六角形の蓋が付く。蓋には6面に捻じれたレリーフで仕切られ、花がそれぞれに描かれる。水指の横には人物が描かれる。
    茶入れは、夏らしい藤組み手、カラフルな玉が組み手を飾る。

  • 色絵祥瑞捻文中皿 明時代;8面に皿面を捻り文で分割して描く。中央には円に入った兎、さらに4つ円にはいった花を周りに配して描く。

    赤絵金襴手は多数。
  • 赤絵金襴手寄向
  • 赤絵金襴手宝相華唐草文向付
  • 赤絵金襴手宝相華唐草文中鉢 白鶴旧蔵
  • 赤絵金襴手人物文爵形酒呑
  • 赤絵金襴手丸文小壺

    古赤絵、呉須赤絵、万暦赤絵なども多数。

  • 五彩魚藻文壺


    創設者畠山即翁は、能楽、特に加賀宝生に造詣があったとのこと。
    能面3面、能装束8点が展示されていた。

  • 能面 翁 伝徳若忠政作
  • 能面 山姥 本阿弥光悦作;光悦の作とされる能面は他に例をみないことから、彩色のみ光悦の手によるものではないかとの推測もされる。大正10年に梅若万三郎が所持者であった益田鈍翁よりこの面を借りて舞台を務め好評を博したとのこと。大聖寺藩前田家伝来。
  • 能面 小面

  • 紅入石畳鳳凰笹竜胆模様唐織;唐織は装束の中でも最も豪華で代表的なもの。
  • 紅地金雲雪持椿模様唐織;宝生流の「道成寺」専用として用いられた。畳紙には文化11年(1813)と記され、その制作年代が知られる、前田家伝来。
    など

    (3日)

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    大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展(後期)

    2006-09-05 | 美術
    大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展
    2006年7月25日から9月3日
    8月15日から9月3日(後期)
    ニューオータニ美術館

    千葉市美術館の記事は、こちら
    前期の記事は、こちら

    前期に引き続いて、後期も川瀬巴水展に行ってきました。2度目ともなると(千葉市美術館もいれると3度目ですが)、すこし順を時間順に鑑賞できるようになってきます。やはり震災前が個性があっていいですね。北斎のような構図を楽しんだ作品や、夕暮れや夜更けの世界を描いた作品もいいですが、「日本風景選集」や「旅みやげ第三集」も、カラフルで、技術が完成している、遊び心があっていいですね。でも意外にも、日本風景選集も旅みやげ第三集については、今回は展示されていない作品が多かった。是非、震災前の作品すべてを拝見したいものです。

    初期の版画
    初めの3点の版画のうち、今回展示されていたのは、《塩原おかね路》(1918)

    旅みやげ第一集 全16図(今展覧会では12図を展示)(1919-20)
    《陸奥蔦沼》翠と藍の濃さに吸い込まれるよう
    《房州岩井の浜》前景が浜、遠景に半島、中景は海。2つの海岸線が斜めになっている構図。泡立つ波際の表現、そして海岸を歩く牛が旅情を誘う。
    《金沢ながれのくるわ》月の光が細かい波間に浮かぶ。

    東京十二題(1919-1921)
    視点は北斎で、大正期の東京の風景を描くシリーズ。夕暮れの風景も多い。
    なお、東京国立近代美術館の「平成18年度第2回所蔵作品展」でも《深川上の橋》と《木場の夕暮》の2点が展示されていた。(9月3日)

    東京十二ヶ月(1920-1921);トンド形式

    旅みやげ第二集 全28図(今展覧会では13図を展示)(1919-20)
    《奈良二月堂》;晴れの二月堂と《雨の清水寺》と並べて見たかった。
    《新潟五菜堀》;真っ暗な月明かりが堀に
    《月明りの加茂湖(佐渡)》;薄明かりを表す舟の影。ここまでも闇のような薄明かりを描こうとする画家は居たでしょうか?
    《越後のうら浜》北斎神奈川沖浪裏 巴水越後版

    日本風景選集 全36図を予定5図残して中断(今展覧会では12図を展示)(1922-23)
    カラフルなシリーズ。光と影も明瞭に描かれる。
    《鹿児島桜島》桜色にそまる桜島

    旅みやげ第三集 全26図を予定5図残して中断(今展覧会では6図を展示)(1924-28)
    こちらもカラフルなシリーズ。
    《出雲松江》は3種類が図録に採録されている。千葉市美術館でも《出雲松江(曇り日)》は気にいった作品だった。今回は前期も後期にも展示されず残念。

    ここから震災後の作品。
    東京二十景(1925-1930)
    《馬込の月》;こちらは今回の展覧会のポスターにもなっている作品。青い闇夜と黒い木の影。技量と遊び心が掛け合わさった作品。他の作品は一寸平凡な風景写真的。

    東海道風景選集全26図(1931-1947)
    《東海道原の富士》など今回は富士を描く作品が目に付きました。やはり戦時中ですね。富士の表現はリアルです。

    (18日)
    コメント (3)
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