徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

月に雁

2006-09-25 | 美術
月に雁

東京国立博物館 常設展 浮世絵
2006/9/12~ 2006/10/9
企画展示 特集陳列 懐月堂派の肉筆浮世絵
2006/9/12~ 2006/10/22

東博は、今月も浮世絵は、発色の鮮やかな優品揃い。春信「雨夜の宮詣(見立蟻通明神)」広重「月下木賊に兎」「月に雁 」など。10/9まで。特集陳列 懐月堂派の肉筆浮世絵も。こちらは10/22まで。


東京国立博物館の浮世絵。今回のMY BESTは、「月に雁」です。
見返り美人図と月に雁。切手趣味週間シリーズの記念切手の図案であったこの2点。昔の切手のカタログでは、冒頭に掲載されていてました。高値の記念切手で、昔の切手ブームを立役者です。そんなわけで小さい頃からよく知っていたわけですが、この2つの記念切手は、戦後直後に発行されたため、実は褐色と藍色の単色刷り。そんなわけで私にとっては、この2点は単色のイメージ。そのうちの見返り美人図には4月のお花見の頃にこの東京国立博物館ではじめてみた(記録はこちら)わけですが、何と9月になって、今度は「月に雁」です。とても興奮しました。偶然にも2点の本物に合えたわけです。

それは、別にしても、今月の浮世絵も、名品揃い。

鈴木春信が3点。
3枚とも、とても発色が素晴らしい。
  • 重美 雨夜の宮詣(見立蟻通明神) 中判 錦絵
    錦絵の創始者とされる鈴木春信(1725-70)は,可憐な美人画風と高度な見立絵の手法で,明和期の浮世絵界をリードした。本図は,当世風俗の美人を謡曲の蟻通明神に見立てたもので,恋の成就を祈る少女のけなげな姿に見事に置き換えられている。 画面は赤い神社の柵と鳥居の前を娘一人が黄と緑色の傘を差しかけた娘一人が通りかかる。風雨の様子に裾と提灯が翻る。

  • 五常・智 1枚 鈴木春信筆 錦絵
    家の中で手習いする娘と、それをみる母と姉。桃色の縁側の先には、庭とエンジ色の垣根の色合いが鮮やか。
  • 鏡恨 1枚 鈴木春信筆 中判 錦絵
    鏡を使う娘の図。萌黄色の畳の色が見事。

    喜多川歌麿
    歌麿の優品が3点。
  • 大木の下の雨宿り 3枚 喜多川歌麿筆 大判 錦絵 
  • 名所腰掛八景・浪の花 1枚 喜多川歌麿筆 大判 錦絵
  • 名所腰掛八景・髪結い 1枚 喜多川歌麿筆 大判 錦絵


    歌川広重
  • 葡萄に鸚鵡 1枚 歌川広重筆 江戸時代 中短冊判 錦絵
  • 重美 月下木賊に兎(げっかとくさにうさぎ) 1枚 歌川広重筆 中短冊判 錦絵;十五夜に薄と芋、十三夜に木賊と栗や豆を供え、秋の名月を祈りました。ここでは月にすむ兎が満月を見上げています。月夜に木賊と兎を描く主題も好まれました。
  • 重美 月に雁 1枚 歌川広重筆 中短冊判 錦絵
    広重といえば、風景画という頭があって、ちょっと機知にとんだ花鳥画があったとは。もちろん、中短冊判に斬新な構図です。月下木賊に兎は、兎が可愛らしく描かれています。月に雁では藍色の使い方が目を見張ります。発色が素晴らしかった。今、切手趣味週間を発行するならば、月下木賊に兎かなと時代の移り変わりを感じました。(愛知医科大のHPへのSRCリンクです。今回の展示ははもっと素晴らしい発色です。)
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  • 近江八景 8枚 唐崎夜雨、粟津晴嵐、矢橋帰帆、瀬田夕照、石山秋月、堅田落雁、比良暮雪、三井晩鐘 横大判 錦絵
    こちらの8枚組みも、発色が素晴らしい。
    大津歴史博物館に寄れば、「広重は、生涯で20種類あまりの近江八景シリーズを手がけたが、中でも傑作とされるのが、〈保永堂・栄久堂板〉である。彼の絶頂期の作「東海道五拾三次」の直後に制作され、海外で「雨と雪と霧の芸術家」と称賛された広重の真骨頂が、遺憾なく発揮されている。」とのこと。東博のは、どの版か不明。下記は大津歴史博物館SRCリンク

    歌川広重 近江八景 石山秋月図 〈保永堂・栄久堂板〉

    歌川広重 近江八景 三井晩鐘図 <保永堂・永久堂版>

    鳥文斎栄之
    3枚組みで展示されていました。艶やかな衣裳といい優品です。
  • 松葉屋内瀬川,たけの,さゝの 1枚 鳥文斎栄之筆 大判 錦絵
  • 丁字屋内千山,やそじ,いそじ 1枚 鳥文斎栄之筆 大判 錦絵
  • 扇屋内花扇,よしの,たつた 1枚 鳥文斎栄之筆 大判 錦絵

    企画展示 特集陳列 懐月堂派の肉筆浮世絵
    2006/9/12~ 2006/10/22
     笹雪模様の瀟洒(しょうしゃ)な衣装をまとい、ゆっくりと身を屈め耳打ちする遊女。この堂々たる印象的な姿には、他の肉筆浮世絵にはない存在感があります。宝永年間(1704~1711)頃、懐月堂安度(かいげつどうあんど)は浅草諏訪町に工房を構え、5人の優れた門人を従えて数多くの肉筆浮世絵を制作しました。研ぎ澄まされた大胆な筆致と明快な彩色によって描き出された立美人図は、同時代のみならず後々の絵師にも大きな影響を与えました。
     このたび、江戸で一世を風靡した懐月堂派の作品を特集陳列いたします。まるで浅草にあった安度の工房に迷い込んだような感覚に襲われることでしょう。江戸の人々を魅了した懐月堂美人の揃い踏みを、ぜひご堪能ください。
     懐月堂安度の直接の門人は、長陽堂安知、懐月堂度辰、懷月堂度繁、懷月堂度種、懐月堂度秀。懐月堂派の影響を受けた画師としては、松野親信、東川堂里風、梅翁軒永春などがいる。

  • 遊女と禿図 1幅 懐月堂安度筆
    懐月堂安度(生没年不詳)は工房を主宰して肉筆美人画を量産した。肥痩のある様式化された衣紋線と,豊かな体躯を持つ美人画を特色とする。本図もその懐月堂様式を見せるものだが,禿にそっと耳打ちする遊女の身体が作る大きな動きが印象的である。とのこと。

  • 重美 立美人 1枚 懐月堂度辰筆 江戸時代・18世紀 A-10569-412 大々判 墨摺絵
    フェノロサが絶賛したようですが、あまりに同じスタイルの肉筆浮世絵が並ぶと、圧巻というか、一寸飽きてしまいました。
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